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愛おしいものたちについて 9

連載に終わりが見えてくると不思議なもので「もっと書きたいことがあったんじゃないか」って気持ちになる。でもそれはたぶん習慣化したことへの未練で、漠然とした「かもしれない」という可能性でしかない。

今日は好きなテレビドラマの話をする。若い読者の皆さんにも分かるように、2000年以降に私がはまってきた作品について書きたい。平成仮面ライダーに関しては『愛おしいものたちについて 2』で書いたので省略。連ドラシリーズ、カップリング萌えが勝つものは外させて頂いた。


▼2000年代

・木更津キャッツアイ(TBS/2002年)
もうこんなに熱狂的にドラマを愛することはないだろうってくらいはまった作品。DVD BOXとDVDプレイヤーをまとめ買いして、ロケ地となった千葉県木更津市にも泊りがけで行った。宿泊先はもちろんホテル銀河(ドラマ撮影期間中、キャスト、スタッフの定宿だったビジネスホテル)
私が行った時はちょうど日本シリーズ(劇場版一作目)公開記念で、主人公のぶっさんの実家であるバーバータブチのセットがそのまま再現されていたので、作品の世界に思う存分浸ることが出来た。いまやカップルの聖地となっている赤い橋こと中の島大橋にも行ったし、一人旅でもすごく楽しかった思い出の土地だ。
涙あり笑いありの痛快はちゃめちゃ青春劇なんだけど、ぶっさんが余命宣告を受けてからどう生きていくかっていう、描き方によっては陳腐になりかねないテーマをクドカンは見事に描き切っている。

・マンハッタンラブストーリー(TBS/2003年)
小泉今日子さんが初めて参加されたクドカン作品なのかな。クドカンが描くヒロインはすっごいキュートで、このドラマでもキョンキョンが生き生き輝いていた。松岡昌宏くんが演じる普段寡黙な純喫茶の店長が、毎回のラストで付け髭を取り去って情熱的にコーヒーに例えて語るのも面白い。
塚本高史くん演じる忍が実は……だったり、最終回の大どんでん返しが無茶だったり、一体何を見せられたのかって感じもしたんだけど、クドカン作品が好きだったら見ておいたほうがいいドラマだと思う。

・マイ☆ボス マイ☆ヒーロー(日本テレビ/2006年)
原作は韓国映画なんだけど、私は観たことがない。Wikipediaによると原作にはバイオレンス要素があって、リメイクに際してはコメディ色が強くなったみたい。土9ドラマだったので視聴者層を考慮するとしょうがない。
ろくに学校に行かなかったやくざの若頭が父である組長の命により、年齢と立場を偽って高校に編入して青春の素晴らしさや悩みを知るっていうストーリーなんだけど、最終回で号泣した。大人になったからこそ輝いて見える青春ってあると思う。あと、生徒役で出演していた新垣結衣さんが初々しくて、すごく良かった記憶がある。

・ハゲタカ(NHK/2007年)
当時さほど名の知られていなかった大森南朋さんの出世作と呼んでもいいかもしれない。日本企業を次々と買収していく外資ファンドの日本代表、通称『ハゲタカ』と恐れられる鷲津を中心にストーリーは展開する。硬派な作品は私はあんまり好みじゃないんだけど、これはすごくよく出来ていて面白かった。劇場版も見事。
鷲津によって実家が崩壊して人生を狂わされ、のちに起業家としてライバルとなる、松田龍平さん演じる西野治が良かった。


▼2010年代

・Q10(日本テレビ/2010年)
土9の学園ドラマは多かったけど、中でも異色な作品だった。冷静で大人びたところのある男子高校生が、未来からやって来た『Q10』と呼ばれる美少女型ロボットとの交流を経て成長するSF青春群像劇。佐藤健くんと前田敦子さんの共演という割に華やかさはないけど、ストーリー展開が良かった。
若手俳優の特有のきらめきみたいなものってあって、そういう魅力がぎゅっと詰め込まれたドラマだったと思う。

・妖怪人間ベム(日本テレビ/2011年)
べしょべしょに泣いた。「迫害される善良な人外」ってだけでもう号泣要素しかない。「ベム役が亀梨くんってなんかイメージが違いすぎるな」って思ったのも実際にドラマを見て吹っ飛んだ。杏さんのベラも見事な演じっぷりだった。鈴木福くんのベロも可愛くて良い。
放浪を続けるアニメとは違ってベムたちがひとつの町に定住している期間が描かれていて、一話完結なんだけど、全編通したストーリーもあってすごく完成度が高いドラマだった。ただ、劇場版はちょっと蛇足だったかも。

・あまちゃん(NHK/2013年)
「またクドカンか!」って言われそうだけどクドカン作品です。もう朝ドラを見る機会はないんだろうな。Twitterでもたくさんの感想やイラストが投稿されたり、ロケ地となった久慈市には観光客が大挙したり、社会現象を巻き起こした作品。実は東日本大震災を真っ向から描いた作品でもある。
半年間、月曜から土曜まで毎回15分という、後追い視聴するにはあまりにもハードな長さなのでおすすめはしづらいけど、見始めれば熱狂的に支持された理由が分かると思う。面白い。

・まほろ駅前番外地(テレビ東京/2013年)
映画『まほろ駅前多田便利軒』の続編にあたる作品なんだけど、監督・脚本は映画とは異なっている。一話完結で同名の原作にはないオリジナルエピソードが中心。行天の指の傷跡がないのでパラレルワールドとも言えるかも。三十代バツイチ男二人が便利屋をやる中で、様々な依頼、客の事情に触れる人間ドラマだ。
原作者の三浦しをんさんはBL愛好家で、ドラマの監督・脚本の大根仁さんはこの作品を「BL」と明言しているのがBL愛好家に優しい。

・ST赤と白の捜査ファイル(日本テレビ/2014年)
スペシャルドラマ『ST警視庁科学特捜班』の続編にあたる。監督の佐藤東弥さんが英国ドラマ『SHERLOCK』のような作品にしたいとキャストにDVDを配った話があったけど、成功かどうかは置いておいてそこかしこに影響が色濃く表れていた。原作とは各キャラクターがかなり違う。
根本にあるのは百合根と赤城の成長と前向きな別れで、私が嫌いな「続きは劇場版で!」だったんだけど、まぁ観に行って損はなかった。単発、連ドラ、劇場版の順に見ることをおすすめしたい。

・そして、誰もいなくなった(日本テレビ/2016年)
これも佐藤東弥監督作品。本編で伏線を回収し切れずに佐藤監督がTwitterで解説したというとんでもないドラマなんだけど、最終回の前半まではめちゃくちゃ面白かった。順風満帆な人生を歩んできた主人公、藤原竜也さん演じる新一に降りかかる不幸の数々が謎ばかりで、クライマックスと呼べる最終回の前半までは作品を楽しんでいたのだ。
ラストはちょっとおすすめ出来ない感じだけど、それを踏まえて視聴するのはいいかも。途中までは面白いので。

・リバース(TBS/2017年)
湊かなえ三部作の最終作。『イヤミスの女王』の称号に相応しい展開で、小池徹平くん演じる広沢の真の死因が判明するシーンでは鳥肌が立った。とは言ってもドラマ視聴と同時進行で原作を先に読み終わっていたので、かなりきついことになるのは前もって分かっていた。
藤原竜也さん演じる深瀬が、ある出来事をきっかけに親友である広沢の死の真相を探っていくというあらすじなんだけど、登場人物みんなちょっとイライラする。それだけ演技が上手いってことなんだろうな。

・dele(テレビ朝日/2018年)
デジタル遺品をテーマにした一話完結のバディ作品。とにかく映像が凝っていて美しい。アクションもかっこいい。ストーリーも見事な出来。ただ、脚本家が一定ではないため、キャラぶれがないとは言えない。
山田孝之くん演じる圭司が難病で車椅子生活なんだけど、ひ弱な感じが全くしないのがいい。圭司がデジタル、頭脳派なら菅田将暉くん演じる祐太郎はアナログ、行動派。対照的なふたりが時にぶつかり合いながらもやがて巨悪と対峙することになる。小説とはエピソードが被っていないので、ドラマを見てから小説を読むのもいいかもしれない。


かなり厳選したつもりなんだけど、タイトルを書き出してコメントしているうちに長くなってしまった。泣く泣く省いた作品には『弟の夫』『昭和元禄落語心中』『監獄のお姫さま』などがある。

精神疾患を持つ私にとって、テレビドラマは最も手軽に触れることの出来る娯楽だ。映画を鑑賞するほどの元気はないけど、ドラマは毎週一時間弱で比較的見やすい。いまは配信サービスも充実しているので、もし気になる作品があったらぜひ視聴してみて欲しい。

ここまで読んで頂いてありがとうございます。2020年の目標は「サイゼリヤでエスカルゴを食らう」なので、サポートを頂けるとエスカルゴに一歩近付くことが出来ます。