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読後感

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#哲学

【読後感】小野純一『井筒俊彦:世界と対話する哲学』慶應義塾大学出版会、Kindle版、2023年

【読後感】小野純一『井筒俊彦:世界と対話する哲学』慶應義塾大学出版会、Kindle版、2023年

 小野純一の井筒俊彦論。小野は井筒の経歴だけでなく、井筒哲学を直接解釈して論じている。真っ向から井筒と向き合っている。本書では井筒の『言語と呪術』を皮切りに論じる。「あとがき」にもあるように、著者は井筒を言語哲学者としている。井筒のイスラム思想、老荘思想、仏教、井筒の日本語主著『意識と本質』といった事柄を彼の哲学的言語観を通して著者は語る。そして、著者は井筒の言語を通した自由な思考を考察する。

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【読後感】カント『純粋理性批判』中山元=訳・解説(光文社古典新訳文庫)

【読後感】カント『純粋理性批判』中山元=訳・解説(光文社古典新訳文庫)

(2013.3.15 読了)

 哲学に興味のある人にとって、避けて通れない本がカントの『純粋理性批判』です。カントの代表作です。
 この書名にもある「批判」について触れたいと思います。一般的に批判というと、人の欠点をあげつらい攻撃するイメージがあると思います。ですが、カントの「批判」は違います。「明らかにする」という意味です。人間の理性と感性を明らかにすることです。この人間の存在の基本的な条件の

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【読後感】廣松渉『世界の共同主観的存在構造』(岩波文庫)

【読後感】廣松渉『世界の共同主観的存在構造』(岩波文庫)

 本書は廣松渉の主著の一つ。人間を「共同主観的存在」と見る立場から、認識論の乗り越えと再生を目指した廣松哲学。1972年に書かれた。彼は戦後日本を代表する哲学者の一人。
 本書は大きく前半と後半に分かれる。その前半は、「主観ー客観」図式の閉塞感から始まり、認識論の現象的世界、言語的世界、歴史的世界へと辿ってゆく。
 後半は、共同主観性に触れ、判断の認識論的立場、デュルケーム倫理学説の批判的継承、と

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