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家の中の避暑地

実家の階段はかね折れ階段と呼ばれているもので、途中に小さな踊り場がある。壁には大きな窓が備え付けられていて、風がよく入った。
私は密かに家の中の避暑地だと思っていて、夏には階段の踊り場で過ごすことがあった。特に今ほど猛暑でない子ども時代、部屋はエアコンをつけていなかったのでそこが一番涼しかった。

まだ小さい頃は、弟たちと階段を何段かずつに分けてお店屋さんごっこをしたこともあるし、中学生の頃は踊り場で英単語を10回ずつ書くという夏休みの宿題もした。
大人になってからも、なんとなく踊り場に座り込み窓から空を仰いだ。目に映る空はとびきり鮮やかな青だ。腰は少し痛いけど、それがほっと落ち着ける時間だった。
結婚した今になっても同じで、実家に帰り一人になれる隙間があれば、階段に腰かける。空を見上げる。
ふっと心が緩むのとともに、今では懐かしさまでこみ上げてくる。
もはや、私の原風景のひとつかもしれない。

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