マガジンのカバー画像

新型コロナ対策と新型インフルエンザ等対策特別措置法

29
新型インフルエンザ等対策特別措置法が改正され、新型コロナウイルス感染症もこの法律の対象疾患に位置づけられました。また、本日政府対策本部が設置されたことで、この法律に基づく対策が実…
運営しているクリエイター

#新型コロナ

まんぼうとは何か

まん延防止等重点措置、通称「まん防」という言葉がちらほら聞かれます。このたび改正された新型インフルエンザ等対策特別措置法(改正特措法)で導入された新しい措置です。今回は(久々で、他にも色々解説すべきことがありますが)、その概要を説明したいと思います。 まん防でできること今般、新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)が改正された際、新型インフルエンザなどが発生してまだ広まっていない段階と、緊急事態宣言に至る状況の中間的な段階に行う措置として「まん延防止等重点措置(通称「ま

感染症法による入院措置の対象が限定的になります

「新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令の一部を改正する政令」の改正が公布されました。10日後の10月24日から施行されます。これにより、新型コロナウイルス感染症患者に対しての感染症法による入院措置の対象が、無症状や軽症の場合は主に高齢者や基礎疾患のある方、そして中等度、重症の方に限定されることになります。とは言っても、医療上の観点、まん延防止上の観点から一定の裁量が残されており、これらの要素が当てはまらない方に全く措置が執れないというものではなく、また、入

【号外】医事法学会シンポジウムに参加しました。

本日医事法学会特別WEBシンポジウムに参加させていただき、「日本のパンデミック対策と新型コロナウイルス感染症」のタイトルでお話しさせていただきました。 新型コロナ発生以前に日本のパンデミック対策はどのような形で土台が作られていて、それが新型コロナでどのように生かされ、また、どのように活かせなかったのか、その理由を考察しています。「過去の経験の復習型」ではなく、前向きにありうるシナリオのランドスケープ分析から、ギャップを埋めていくプリペアドネスが必要です。そして常に「拡張性」

指定感染症とは何か

以前にも以下の記事で記載しておりますが、あらためて追記・改変して再掲します。よく「新型コロナは二類感染症相当の位置付け」とされますが、現状では、「新型インフルエンザ等感染症」とほぼ同じレベルの措置が規定されていること、そして、入院措置の運用状況についてこれまでの流れを整理してみました。 指定感染症とは新型コロナウイルス感染症は、感染症法で「指定感染症」に指定されています。指定感染症とは、四類以下の感染症法上の感染症、または感染症に位置付けられていない感染症について、一類〜三

緊急事態宣言で何が変わるのか

新型コロナウイルス感染症患者が増加しています。これまで新型インフルエンザ等対策特別措置法について色々書いてきましたが、改めて「緊急事態宣言」後に何が変わるか、を改めて整理したいと思います。 緊急事態宣言が行われる状況政府の行動計画には、緊急事態宣言が行われる状況として「緊急事態措置を講じなければ医療提供の限界を超えてしまい、国民の生命・健康を保護できず、社会混乱を招くおそれが生じる事態であることを示すものである」と記しています。感染拡大を少しでも防ぎ、あるいは遅らせて、適切

新型コロナ対策とクラスター対策

新型コロナウイルス感染症の患者数は全国的に増加傾向にあります。専門家会議からも、「今のところ諸外国のような、オーバーシュート(爆発的患者急増)は見られていない」という状況分析がありましたが、今後も予断を許さない状況が続いています。近況について詳しくは、専門家会議による「状況分析・提言」をご覧ください。 現在の新型コロナウイルスのまん延防止対策として行われているのは「クラスター対策」です。このクラスター対策の考え方を簡単に解説したいと思います。 1. クラスター(集団感染)

新型コロナウイルス感染症に関する政令改正の概要

指定感染症とは新型コロナウイルス感染症は、感染症法で「指定感染症」に指定されています。指定感染症とは、四類以下の感染症法上の感染症、または感染症に位置付けられていない感染症について、時限的に一類〜三類感染症、新型インフルエンザ等感染症、新感染症に対して行う措置を準用することができるようにするための感染症法上のカテゴリーです。 「指定感染症」とは、既に知られている感染性の疾病(一類感染症、二類感染症、三類感染症及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)であって、第三章から第七章

新型インフルエンザ等対策特別措置法とは

主に保健関係者向けに記載しますので、やや難解な書き振りになることはご容赦ください。 感染症の汎流行(パンデミック)による国家的な危機に立ち向かうための法律、それが「新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下、特措法)」です。これまでは、「新型インフルエンザ」とよく言われる、通常秋から冬にかけて流行する「季節性」インフルエンザとは違って、人類が全く経験したことがなく免疫がない新しいインフルエンザウイルスによる感染症、そして、人から人に感染するようなのだけれでも原因となる病原体が

新型インフルエンザ等対策(新型コロナ対策)の基本3点セット

新型インフルエンザ等対策(←新型コロナ対策を含みます。以下同様)を理解する上で重要なのは、特措法・政府行動計画・ガイドラインの3点セットです。既存法を超える特別措置を規定したのが「特措法」、そして特措法に基づき「政府行動計画」が作られています(さらにこれに基づき、都道府県や市町村でも行動計画が作られています)。さらにこの政府行動計画を踏まえて各種対策の具体的内容が記載されているのが「ガイドライン」です。 表 新型インフルエンザ等対策ガイドライン Ⅰ  サーベイランスに関する

新型コロナ対策:特措法における措置とは (緊急事態宣言前)

新型インフルエンザ等対策特別措置法は大きく5章で構成されています。内容をかいつまんでご紹介していきます。 第1章 総則言葉の定義や、国民や事業者の責務が記載されています。 第1章 総則 目的(第1条) 定義(第2条) 国・地方公共団体等の責務(第3条) 事業者及び国民の責務(第4条) 基本的人権の尊重(第5条) 言葉の定義で一つ覚えておきたいのは、「新型インフルエンザ等対策」という用語です。要は、新型コロナについては、「まん延のおそれあり」として内閣総理大臣に報告され、

新型コロナ対策:緊急事態宣言と緊急事態措置①まん延の防止に関する措置

第3章が、特措法の本丸とも言える部分です。対象疾患の患者が国内で発生した時に、全国的かつ急速にまん延により国民生活及び国民経済に重大な影響を及ぼすおそれがあると認められる事態を「新型インフルエンザ等緊急事態」として、政府対策本部長(総理)が「緊急事態宣言」を公示する、というものです。まずは、緊急事態宣言が行われる条件、そして緊急事態措置のうち「まん延の防止に関する措置」を解説します。 緊急事態宣言が行われる状況政府の行動計画には、緊急事態宣言が行われる状況として「緊急事態措

新型コロナ対策:緊急事態宣言と緊急事態措置②医療等の提供体制の確保に関する措置

緊急事態措置の3本柱の一つが「医療等の提供体制の確保に関する措置」です。 医療等の確保(第47条)医療等の確保は、病院その他の医療機関、医薬品等製造販売業者ら、指定(地方)公共機関に対し、医療の提供や医薬品・医療機器の製造や販売を確保するための必要な措置(以下の例)を講じなければなりません。 「医療」・・・医療機関の開業時間延長、医療施設の安全性の確保、救急患者等の搬送体制の確保など 「医薬品の製造・販売」・・・抗インフル薬、ワクチンの製造販売のための体制整備等 「医療機

新型コロナ対策:緊急事態宣言と緊急事態措置③国民生活及び国民経済の安定に関する措置

国民生活及び国民経済の安定に関する措置 緊急事態措置の3本柱の最後が、国民生活及び国民経済の安定に関する措置です。感染症対策には物資が必要です。そのほか、社会生活の維持のためには、電気、ガス、水、運送、通信などなど、インフラの供給が必要です。これらを維持するための要請規定や、努力義務、必要な措置を講じること、などが記載されています。 本章の詳細は割愛します。 第5章 財政上の措置等第5章については、保健医療と関わる部分をかいつまんで紹介します。 損失補償等(第62条)