閉塞性動脈硬化症のリハビリテーション
みなさんは、閉塞性動脈硬化症(以下, ASO)というご病気をご存じでしょうか。
以前も記事にしたご病気ですが、寒い時期になると症状が強くなる方が多いので、また少し記事としてまとめていきたいと思います。
前回の記事のリンクも貼っておくので、まだ読んでいない方は是非ご覧ください。
さて、今回はASOのリハビリテーションにおける、工夫について、普段から運動指導をする側の人に向けて、少しご紹介したいと思います!
まず、ASOのリハビリ目的に関してです。
リハビリの目的は主に以下のような項目が良く上がります
どれも、重要な項目ですが、やはりすべての目標は最終的には一番上の再発・重症化予防に帰結すると思います。
この再発・重症化予防に関して、少しデータを見てみると、ASO患者さんの内、歩くと足に痛みを感じる人は、その後25%の割合で症状が悪化していくと報告されています。
そして、重症化した人の内、5-10%の人は”重症下肢虚血”という、血流障害の最終段階に進んでしまうと報告されています。¹
そして、再発率に関しても同様で、手術などで血流が良くなっても、また悪くなってしまう方が多いことも報告されています。
4人に1人の症状が悪化する。
これが多いと感じるか、少ないと感じるかは人それぞれ捉え方は異なるとは思いますが、私はかなり深刻な問題だと感じています。
では、どうしてASOの悪化・再発率は高いのでしょうか
それは、病態的な特性にあると思います
ASO発症の原因には、生活習慣病(高血圧、高脂血症、糖尿病)や喫煙などが強く関連すると言われています。
もちろん、発症した方すべてが、生活習慣が不良であったわけではなく、体質やその他の要因により発症しやすくなることもあるため、注意が必要です
ただ、大多数は生活習慣病に起因することが多いため、生活習慣が原因であるようならば、リハビリテーションを行う際は、これら生活習慣の是正のサポートも行います。
ただ、生活習慣を是正していく上で、大切になってくる”運動(主に歩行)”をASO患者さんはなかなか継続することができないことが、問題としてよく挙がります。
これは、単に怠惰性が原因なのではなく、ASO特有の足の痛みのせいで、歩きたいけど足が痛くて歩けないといったジレンマが生じているケースが多く存在します。
ですので、リハビリテーションを提供する際は、その方が、どのくらいの運動負荷であれば運動が行えるのか、歩行距離・歩行スピード・環境などを加味したうえで運動処方を行います。
そして、十分な結果を出すための歩行が難しいのであれば、その代替手段を提示するようにして、すべての人に同様の運動を課すのではなく、患者さんオリジナルの運動メニューを作成するようにしております。
そして、必ずこの運動メニューを決める際に行っているのが、運動メニューの決定を患者さんと一緒に行うことです。
やはり、ヒトは自分で決めたことに対してはある程度の、責任を感じるものです。一緒に決めた目標を紙面でお渡しすれば、その紙を見るたびに「運動しなきゃな」と少しは感じるんじゃないかと自分は思います。
これは、運動メニューの考案に限るものではありません
食習習慣や生活習慣においても、同じことが言えますので、患者さんの行動変容を促したい際には、是非意識していただくとよいと思います。
当たり前のことですが、日々の仕事に追われると、ついつい機械的にものごとを決めていってしまうこともある思います。自分への、戒めの意も込めて、今回はASOのリハビリテーションの工夫についてまとめさせていただきました。
最後まで読んでいいただきありがとうございました!
また次回も、よろしくお願い致します。
1)TASC II Working Group,日本脈管学会:下肢閉塞性動脈硬化症の診断・治療指針II.日本脈管学会(編),メディカルトリビューン,東京,2007