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理学療法士も知っておくべき骨転移に対する放射線治療の副作用について

はじめに

今回の記事は『理学療法士も注意したい骨転移に対する放射線治療の副作用』です。骨転移に対する放射線治療による副作用は様々ですが、理学療法士も注意をしたい副作用とはそれは「フレア現象」と「骨折」です。

普段の臨床で忙しい皆さんのためにこのスライド1枚に今回の記事の全てを凝縮しております。

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結論から先に言いますと骨転移に対する放射線治療の照射によって一過性に疼痛が増悪したり、骨折が生じたりすることがあります。そのため理学療法士も骨転移に対する放射線治療を行っている患者さん、または照射後の患者さんを担当する時は疼痛の増悪に注意をしながら離床、運動療法を実施する必要があります。

詳しく知りたい方は続きの記事も読んでみてください。

今回の記事は私が運営するYouTubeチャンネル「リハビリ・ラボ」でも紹介をしていますので、そちらからもどうぞ。音声のみで聞き流しでも勉強できます。

フレア現象とは?

フレア現象とは有痛性の骨転移に対して放射線治療開始後、数日で生じる一過性の疼痛増悪のことです。

フレア現象では10日程度の短期間に放射線照射開始前のベースラインまで疼痛は回復し、フレア現象の発生と放射線治療後の疼痛緩和には相関はないとされています。

このフレア現象の発生機序は放射線が照射された骨周囲に浮腫が生じるためと推測されています。

骨転移に対する放射線治療開始後の患者さんで「ちょっと痛みが強くなったかも」と話されるような方がいれば、このフレア現象かもしれないなと注意をしましょう。

放射線治療後の骨折

放射線治療後に骨折が起こることもまれではないということが明らかになっています。骨折はセラピストも関係が深いものなので、しっかりと知っておきましょう。

骨折の発生部位とは?

放射線治療後の骨折の発生部位は以下のようになっています。

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放射線治療後の骨折が報告されているものとして、骨盤内に照射を行う婦人科がん、前立腺がん、肛門管がん、直腸がんで多数報告されています。そのハザード比は1.65~3.16です。

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原発巣と骨折の発生についてはこれまでにも多くの報告が出ています。そのため臨床現場でもしっかりと担当する患者さんがどのようながんであるのか確認を行いましょう。

なぜ放射線治療によって骨折するのか?

この放射線治療後の骨折については年齢や体重、合併症、化学療法の使用など多くの要因が絡むため放射線治療単独による影響とは言い難いのが現状とされていますが、やはり放射線の影響が無い訳ではありません。

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放射線治療と骨折の関係性は放射線治療の直接作用による成熟骨組織の骨芽細胞が障害を受けるためです。それによってコラーゲン産生の低下、アルカリホスファターゼ活性低下などが引き起こされることが骨折につながるとされています。

このような変化が起こるのは30グレイが境界であると言われています。また細胞死は通常の分割照射において50グレイで発生します。

さらには晩期障害における放射線誘発性の血管障害もあるため、複合的な要因により成熟骨の構造的脆弱性が発生するため、これも骨折に繋がるとされています。

放射線治療の限界

フレア現象や骨折などのように副作用も発生する放射線治療ですが、この治療にも限界があります。

有痛性骨転移に対する放射線治療の疼痛の緩和効果は長続きはしません。中央値が5~6ヶ月で再燃する(Steenland E,et al.1999)とされています。

そのため実臨床では再照射もよく行われているのです。この再照射が問題となることがあります。

再照射の安全性についてはまだ評価が不十分であり、特に脊椎への再照射は放射線脊髄炎の発生が懸念されています。

私も多くの患者さんを担当してきましたが再照射の患者さんを担当したことがないですが、こうした問題もあるのですね。

最近ではがんの治療方法の進歩により骨転移患者さんの予後が延長するにしたがって、この再照射の重要性は高くなっています。

最後に

放射線治療にもフレア現象や骨折など副作用があることを理学療法士も知っておかなければなりません。担当する患者さんの疼痛が何によるものなのか、緊急性を要するものなのかは常に考えておくべきことです。

その上で骨転移を有する患者さんの離床や運動療法について考えていきましょう。

今回の記事と関連したYouTube動画

YouTubeチャンネル「リハビリ・ラボ」


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『骨転移による痛みは侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛のどっち?』

『骨転移の有無と生命予後 生存期間に影響?』

理学療法士の学びのためのブログ



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