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無色透名祭Ⅱの記録【楽曲解説、制作裏話】

無色透名祭Ⅱに参加の投稿者の皆さま、リスナーの皆さま、お疲れ様でした!僕も投稿者として参加したので、自曲の解説などまとめてみたいと思います。


無色透名祭Ⅱの作曲開始

 2023年3月、公式から無色透名祭Ⅱの開催が発表された瞬間、絶対参加すると決めていたものの、今年は10月にリリースする新譜制作に追われてたというのもあって、実際作曲に着手できたのは9月24日でした。

 この時点で投稿締め切りまで約3週間。普段1曲つくるのに1ヶ月くらいかけてる自分からすると、ヤバい間に合わないかも…という状況でした。しかも普段とは違うスタイルの曲を作ろうとして更に余裕がないことに。実はこのちょっと前まで、お祭が11月開催だから10月いっぱいくらいまでは投稿できると思ってたんですよね。アホでした。

 もし間に合わなかったら仕方ない。妥協してまで間に合わせるつもりはなかったので、そのときは素直に諦めるつもりでしたが、それから1週間後、奇跡的に自己最速で曲が完成しました。うおぉー間に合った!!いつもより早く出来た要因として、作曲方法を変えたのが大きかったですね。これについては後述します。

投稿曲『振り返るには遠すぎる』解説

 今回投稿した投稿曲はこちら。既に聴いていただいた方や感想やコメントをくれた方、本当にありがとうございます!ここからはこの曲について解説していきます。

1.シティポップとラップの融合

 今回一番やりたかったのはもうこれにつきます。あまりイメージないかもしれませんが、僕はリスナーとしてヒップホップは良く聴きます。以前のアルバムに収録した楽曲『ライフサイズアンセム』では、初音ミクでロックテイストのトラックにラップを乗せるスタイルに挑戦しましたが、今年になって花隈千冬をお迎えしたとき、このボーカルでまたラップをやりたいなと思っていました。そして今回、シティポップでラップをするアイデアが浮かんで、最終的に完成したアレンジは、シティポップというか、AORやフュージョンとも言えそうなものになりましたが、この辺は定義が曖昧なのでどんな呼び方でもいいと思います。(あとファンクの要素も入ってます)

 ラップパートについては、ゴリゴリのラップというより、ラップと歌メロを自由に使い分けるようなスタイルを目指しました。ラップにもキーやメロディはあるし、それらとリズムの組み合わせがフローを生み出すと思っていますが、今回はよりラップと歌メロの境目を薄めたようなスタイルにしています。一応ですが、これを作った時点では花隈千冬にラップ機能は実装されていないので、全て自力で調声しました。(Synthesizer Vのラップ機能すごいけどどうなんだろ。AIで作曲しているのと同じような気も。。)

 個人的にラップはフローとかメロを強く感じるスタイルが好みで、例えばサイプレス・ヒルのB-リアルなんかはこのタイプだと思います。(うーん、懐かしい。というか今でも普通に聴いてます。)

かなりキャッチーな路線だとニッキー・ミナージュのこれとか。

それから、LemmさんがXに投稿していたこれにもインスピレーションを受けました。(これめちゃくちゃいいです)

 創作ってこんなふうに色んなところから吸収したインスピレーションを自分の中で消化して再構築して新たな表現を加えてアウトプットする作業みたいなところがありますけど、いつしまい込んだのか自分でも忘れていたような引き出しが急に開いて思わぬ形で出てくることがあるのが面白いですね。今回の曲と上に挙げたようなものは、そんなに強く関連していないように思えるかもしれませんが、こういったものが複雑に混ざり合ってアウトプットされているのだと思います。もちろん今回影響受けている要素は他にも沢山あります。

2.最小限のアレンジを活かす音作り

 ボカロ界隈はわりと昔から音数や音色多めに重ねたアレンジが多い印象で、最近はコード進行、リズム、転調、展開などもどんどん複雑なものが増えてるように感じます。が、個人的にはシンプルでも楽器そのものの演奏とか音色を楽しめるタイプなので、今回の曲はそんなアレンジを目指しました。それと花隈千冬でラップをしたい!というのがこの曲を作ったいちばんの動機だったので、ボーカルを活かすことを優先したアレンジになっています。

 ボーカル以外の構成は、ドラム、パーカッション、ベース、ギター、エレピ、クラビネット(サビだけ)、サックス/トランペット(最後だけ)。ほんとにシンプルです。特にDTMの場合、アレンジの可能性は無限なので、どんどん音を重ねたくなって逆に減らすのが怖いなんて声もよく聞きますよね。よく分かります。シンプルであるほど演奏、音色選び、アレンジ、録り、Mixなどの実力がより露になるので難しさを感じるのかもしれないです。

 今回はこういったところに気を配りつつ、狙い通りボーカルを中心としたシンプルでナチュラルなサウンドに出来たかなと思います。Mixでのポイントは、コンプでのまとまりとグルー感、トランジェントのコントロール、倍音の付加、EQでの帯域の整理ですかね。この曲に限ったことではなくいつも通りです。ただ年々Mixでやることが明確でシンプルになってきました。効果が微妙でよくわからないものとか、裏技的なことは一切していないです。Mixの修行は一生続きそうですね。

3.短編小説の読了感に似たストーリー

 最後に歌詞について。上で述べたようにシンプルなアレンジにした理由として、ボーカルを活かしたかったことと関連しますが、詞の内容にも注目してほしかったというのもあります。前回の無色透名祭参加曲の『東京地下鉄ラバー』と今回の歌詞は、「ある1日の中で起きる数時間の出来事を時系列で語る」という点で共通しています。また、過去の話を交えることで、登場人物同志の昔からの関係性や、現在のそれぞれの立場など想像してもらえるような内容にしています。ビジュアルのない無色透名祭だからこそ、シーンが想像しやすいことと、ストーリー性を重視した歌詞にしています。

 このストーリーをラップで語るという手法を取ることを事前に決めていたので、「全体の言葉の数(文章量)」と、「ラップと歌メロの音数」とを調整して制作する必要がありました。つまり作詞と作曲の整合性を同時にとる必要があったんです。ただここで問題が。普段は作曲とアレンジを先に行い、あとから歌詞を乗せるという方法で制作していましたが、今回これだと調整が難しい。特にラップパートが入ることで、文章量に対して音数が足りないとか、その逆になるという懸念がとてつもなく大きい。そこでいつもとは全く違う制作工程を試すことにしました。

 結果、作曲とアレンジと作詞を少しずつほぼ同時に進めるという方法を取ったのが奏功し、劇的に制作時間を短縮することに成功したのです。これ、自分の中ではかなり画期的で、今後も使えるかもしれないなと。これに気付いただけでもこの曲を作った意味はめちゃくちゃ大きかった。ありがとう、無色透名祭。

 ちなみに、この作詞のタイミングについて皆さんどうしてるのか気になったのでXでポストしたところ、なんとリプがあった方は全員作詞と作曲同時、もしくは作詞が先ということが判明しました。えっ!?

 これはかなり興味深い結果でしたね。というか自分的には結構衝撃だったんですけど、世の中的には全然衝撃でもなんでもなくてむしろそっちが主流なのかもしれない。。

 こういった制作工程を経て無事に曲が完成し、当初思い描いたストーリーも全部表現することができました。『振り返るには遠すぎる』というタイトルの短編小説を読んだみたいな感覚になってもらえたらと思って作りました。そういえば最近小説読んでないな。

 曲の後半には、無色透名祭にひっかけて「ちゃんと見つけてくれよ」という言葉で視聴者に語りかけてみましたが、見つけてくれましたか?フォロワーさんからは見つけた報告はなかったですが、動画の方には見つけたというコメントありましたね。さすがにラップはいつもと違いすぎて見つかりにくかったと思います。それでもお祭後ネタバレした後に、僕らしい音だと言ってもらえたりしたのは、普段から僕の音を理解して感じてもらっているようで嬉しかったです。お祭後も引き続きこの曲を楽しんでもらえたら嬉しいです!それから今、有色ver用のイラストを描いているところなので、完成したら動画を作って投稿する予定です。そちらもどうぞお楽しみに!

お気に入り曲マイリスト

 最後に、無色透名祭でお気に入りだった曲のリストを置いておきます。ネタバレ公開する前に出会った曲のリストなので忖度一切なしです。

https://www.nicovideo.jp/mylist/75928368

 今回は200曲ほど聴きました。ほぼランダム再生のみで聴いたので、再生数的にはそこまで伸びていないものが中心のリストですが、結論は「無色で伸びたかどうかは関係なく良いものはいい。」です。

最後まで読んでいただきありがとうございます!ではまた。

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