人に仕事を振るということ

次週私は海外に出張に行く。

土曜日の夕方に最初の飛行機に乗って
2回飛行機を乗り継いで目的に行くので
実質Door to Doorで言うと30時間ほどの移動である。

正直移動だけでフラフラになりそうだが
丸一週間日本を離れることになるので
その準備のために今週は別の意味でフラフラになっている。

どの仕事でもそうであるが、
決められた納期を死守しながら前に進めるために
大まかにスケジュールを立てて
日々それらを前に転ばせている。

しかし、ここ最近私が抱えるタスクが
どうにも多くなってきたらしく、
思うようにそれらを前に転ばせることが
難しくなってきてしまった。

もちろん、それぞれのスケジュールは
ある程度余裕を見て設定しているので
多少の遅れが出ても問題ないのだが、
ここにきて1週間海外出張である。

国内出張なら時差もなくリモートで
ある程度対応できるのであろうが、
Door to Doorで30時間の場所で
現地での仕事をしながら対応できることは
限りがある。

先週ぐらいから何とか不在中の進捗を
カバーできるように動いてみたが、
それも思ったようにはいかない。

そこで、今週に入ってから私は作戦を
大きく変更することにした。

それは人に振っちゃえ作戦である。

これは私の大きな課題の一つであるが、
私はついつい何でも自分でやろうとしてしまう癖がある。

アラフォーなのだが、職場の中ではまだ
若手に分類されるので、
どうしても自分でやらざるを得ないことが多いのは
ある程度仕方ないのだが、
それにしても何事も自分でやろうとしてしまい、
後になって苦しくなることが多いのだ。

部下が何人かいたころにはそれらの仕事を
彼らに振っていたのだが、
一人の部下は育児休暇中、
もう一人は別部署に移動となり、
実質私にとって気軽に仕事を振れる相手が
いなくなってしまった。

もちろん、それでも私には部下がいる。

ただし、その方は別部署で定年を迎えられて
嘱託で来られている方なのである。
(ちなみに元管理の本部長)

商品開発のバックグランドとなる情報も
ご存じないので、
何かをしてもらおうとすると説明するために
多大な労力がかかるし、
現状では簡単な事務作業をしてもらうのみである。

こんな状況に置かれてはいるが、
このまま仕事を滞らせてしまうのは
お客様に迷惑が掛かってしまう。

それだけは絶対に避けなければならないので
今回私は意を決して色んな部署の人に
振れそうな仕事を振ってみることにした。

「なんで俺がそんなことせなあかんねん」
と口に出しては言われなくても、
表情からその感情がにじみ出てきたら嫌だなと思いながら
今週、直接説明に赴き、仕事を引き受けてくれないか
色んな人に相談しに行くことにした。

すると不思議なことに嫌な顔をする人は
一人もいなかったのである。

皆私が置かれている状況を理解してくれており、
快く仕事を引き受けてくれたのだ。

もちろん、引き受けてくれた人たちも
決してヒマなわけではない。

自分の仕事を抱えながらなので、
そこにプラスアルファするようなことを
お願いするのは心苦しさはあるのだが、
実際お願いしてみると皆心なしか嬉しそうに
見えたのである。

これは一体なぜだろうか。

自分が逆に人にお願いされたシチュエーションなら
どう感じるかを想像してみる。

すると確かに心の中に嬉しさの感情が
湧き上がってくる気がする。

自分を頼ってきてくれたこと、
そしてそれだけ自分を信頼してくれていることが
お願いされることによって伝わるからであろう。

何だか人に仕事をお願いして自分の身も軽くなり
そして、相手にも少しの嬉しい気持ちを与えることができるなら
これぞまさにWin-Winではないだろうか。

もちろん何でもかんでも人に振って
自分が楽をすることは周りも許さないのだろうが、
自分が難しいと思うシチュエーションならば、
人にお願いすることは決して悪いことではなく、
むしろWin-Winな事なのである。

新卒で会社員となって17年余りになるが
ようやく”人に頼る”ということができるように
なってきたのかもしれない。

最近よく感じるが、自分が一人でできることなど
所詮たかが知れているのである。

私がすべきは色んな仕事の中で自分がすべきものを
取捨選択し、自分がすべきでないものを
上手く他の人に頼ることなのであろう。

実質頼ることができる部下がいなくなって
初めてこのことを実感できた。

やはり苦しいシチュエーションは
色んなことを教えてくれるものである。

ちなみに嘱託で配属されたその方は
どういうわけかいつもスーツを着ている。

前はそれがスタンダードだったのだろうが
そろそろ作業服にしてはいかがですかと
言い出しにくい私はまだまだチキンハートである。