見出し画像

相手目線に立つ難しさ

昨晩は今週来日しているイギリス人4人の
食事のアテンドをした。

せっかく日本に来ているのだから
ちゃんとした日本食を食べさせてやりたい反面、
4人中2人が魚介類はダメだと言う。

もちろん魚介類を避けても日本食は
作ることができなくはないが、
間違いなく選択肢は狭くなる。

魚介類を避けつつ、日本食らしいものは
一体何かと考えたときに、
私の頭の中に一つの答えが出てきた。

焼き鳥なら色んな部位を楽しめて
The 日本食という感じではないか。

早速彼らが泊まるホテルの近くに
いい焼き鳥屋がないかをリサーチしたが、
いかんせん私が住む街からは距離があり
土地勘がないせいで、全くどこがいいかわからない。

そこで、私は会社の営業マンに
相談してみることにした。

営業マンならば会社に来たお客さんを
街で接待することもあるので、
いいお店を知っていると思ったからである。

ほどなくすると営業マンからオススメの
焼き鳥屋のリンクが数件送られてきたので
早速調べてみると、
彼が一番オススメしていたお店が予約可能であった。

せっかくアドバイスをもらった店なので
特に迷う理由もない。
私はその店を予約し、昨日彼らを連れて店に向かった。

焼き鳥屋なのでこじんまりした店だろうとは
思っていたが、
実際についてみると思っていたよりも
さらにこじんまりした感じである。

しかも6人で予約していたが、
どう考えても大柄な外国人6人には
とても狭い座席であった。

これもJapanese styleだ。などと言いながら
私は彼らが食べられそうなメニューを
選び始めたのだが、
メニューを見て驚いたことに
この店には揚げ物がなかったのである。

フライドポテトとフライドチキン(から揚げ)は
世界各国どこに行っても誰もが好きなメニューなので
外国人をアテンドする時には必ず頼んでいた。

だが、昨日の店はそれも選べない。

今から店を変えるわけにもいかないので
焼き鳥盛り合わせと、サラダや前菜を頼むことに。

ポテトサラダやシーザーサラダは
彼らにも概ね好評。

だが、なかなか肝心の焼き鳥が出てこないので
私は内心ハラハラしながら彼らと会話をして
場をつないだ。

すると、最初にハツ(心臓)が出てきた。

串から身を外して、彼らに食べるように促すと
1人を除いて皆が「食べない」という。

なるほど。鶏の心臓は彼らにとってみれば
近寄りがたい食材なのか。

しかたがないので食べられる人だけで
それを食べてしまい、次を待つと
次に砂ズリが出てきた。

ハツを食べないぐらいなので
もしかするとダメかもと思っていると
案の定、彼らは箸をつけようとしない。

「これは一体何だ?」と聞かれても
なかなか英語で説明が難しく、
スマホで調べて彼らに伝えると
「長年鶏を食べてきたけどそんな部位は初めて聞いた」と
笑いながら言っていた。

なるほど、砂ズリも彼らにとってみれば
かなり珍しい食材なのか。

次に出てきたのはつくね。

チキンのハンバーグだと言うと、
ようやく彼らも箸をつけたのだが
その後に出てきたポンジリ、皮は
一人意外全く箸をつけなかった。

これは完全に選ぶ店を間違えてしまった。

私は内心とても落ち込んだ。

確かに私達日本人にとっては
この店の焼き鳥は美味しかった。

だが、外国人を連れて行くという観点では
全く向いていなかったのだ。

営業マンが連れて行くのは当然ながら
日本人のお客さんなので
彼らにとってみれば美味しいお店であることに
間違いはないのだが、
私は「自分たちが美味しいもの=外国人も美味しいもの」と
完全に勘違いしていたのである。

私は海外に行って現地の人がオススメしたなら
必ずそれを食べるようにしている。

そうすることで現地の食文化がわかるし、
実際現地の人がオススメするものは
美味しいと思うものが多いからである。

だが、これはあくまで私の価値観。

今回連れて行った4人のイギリス人にとってみれば
焼き鳥屋で出てくる料理の数々は
極端な言い方をすればゲテモノに映ってしまった。

日本食の良さを紹介するつもりが、
逆にそれが仇になってしまったわけである。

これも彼らにとって日本の食文化を知れたいい機会だと
自分に言い聞かせながら昨日は食事を終え
彼らと別れた。

今回は相手目線に立つことの難しさを
改めて感じさせられる経験であった。

恐らく近いうちにまた外国人が
来日する機会はあるだろうが、
その際には焼き鳥屋は選ぶまいと
心に決めた私であった。

ちなみに私は学生時代焼き鳥屋で働いていたが
アルバイトが終わってから当時の彼女に会うと、
髪の毛からとても焼き鳥の匂いがすると
いつも言われていた。

不思議なもので自分では気づかないのだが
数時間ずっと焼き鳥を焼き続けていると
匂いが染みついてしまうのも当然であろう。

昨日食事会が終わって家でシャワーを浴びたとき
頭から漂ってくる焼き鳥臭を嗅いで
なんとなく懐かしい気持ちになった。

この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?