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いつまで待っても花が咲かない観葉植物

我が家にはたくさんの観葉植物がある。

私が植物が好きだからというのもあるが、
色んな縁があって我が家に来たものを
大切にしていると、
気づいた時にはたくさんの植物に
囲まれていた。

その中の一つにストレリチアがある。
この植物は南アフリカ原産で
見た目は南国っぽい雰囲気なのだが、
寒さにも強いのが特徴である。

この植物は年に一度花を咲かせて
その花が極楽鳥の頭の形に似ていることから
極楽鳥花などと呼ばれたりもするそうである。
(この記事のアイコン写真はストレリチアの花である)

我が家にこの植物が来たのは
まさに今住んでいる家を購入したときであった。

不動産会社の方が新居のプレゼントとして
まだ何も置かれていないリビングに
置いてくださっていたものである。

この家に住み始めて今で5年半になるが、
この期間をずっとストレリチアと共に
過ごしてきた。

ところがである。

何年待てど暮らせど
このストレリチアは花を付けないのだ。

我が家にやってきて2年ほどは
そもそもストレリチアに花が咲くことを
知らなかったのだが、
植木鉢が窮屈になってきて植え替えをしようと
ネットでストレリチアについて調べたときに
花をつけることを知ったのだ。

そこからストレリチアに花を付けようと
日当たりのいい窓際に置いたり
こまめに肥料を与えたりしているのだが
5年半一度も花を咲かせてはくれない。

我が家から10分ほど歩いた場所に
ガラス張りのオフィスのあるビルがあるが、
その中に置かれたストレリチアは
この夏にちゃんと花をつけていた。

これは一体なぜなのだろうか。

ネット上にはいろいろな情報が載っており
花が咲くまでに3~5年ほどかかる説や
日光が足りていない説など様々あったのだが、
ここでふとあることを考えてみたのだ。

「そもそも植物はなぜ花をつけるのか」

これは誰しもが一度は考えたことのある問いであろう。

色んな答えがあるが、一番主な答えは
子孫を残すために受粉をするためである。

子供の頃に理科で習ったように
花を咲かせることで風の力や昆虫の力を借りて
花粉を飛ばして受粉を行い、
種子を作って次の代につなぐことが
植物が花を咲かせる主な目的である。

一年で枯れてしまう植物であれば
この受粉をして種を残すことは、
自分が生きることができない季節を
種として過ごすための大切な儀式になる。

なので雑草と呼ばれる類の草花は
必ずと言っていいほど花をつけるのだ。

ところが、ストレリチアは多年草である。
数年間にわたってそこに生え続けて、
時には”分けつ”といって一つの株から
別の茎をだして広がっていく。

なので基本的に種子を作る必要がないのだ。

ではどのような場合に
種子を作る必要があるかというと、
種子を作って生息範囲を広げないと
生存が危うくなったときである。

強い日差しは植物にとって光合成の源になるが
私たちの肌が日焼けしてしまうように
植物にとっても日差しはダメージなのだ。

さらに自然界ではいつその環境が
水害などで氾濫するかはわからないので
可能な限り生息範囲を広げておくことは
生存を確実にするために必要なことなのである。

そう考えてみると、
我が家のストレリチアにとっては
今の環境は安心して生きられる環境だと
判断されているということではないだろうか。

私たちは勝手に花が咲くことが素晴らしいことだと
思ってしまっているが、
植物からすれば花を咲かせることは
安心できていないという証拠なのだ。
(そもそも植物に安心などという概念はないが)

私は趣味でクワガタを飼育しているが、
幼虫のエサとして菌糸ビンというものを
使用している。

この菌糸ビンとは粉砕したオガクズと
小麦粉などの有機物を混合して、
その中にキノコの菌を繁殖させたものである。

私たちはキノコというとシイタケやシメジのように
食べる部分を想像しがちであるが、
実はキノコの本体は土の中にで張っている
この菌糸なのだ。

では私たちが食べているキノコは何かというと
キノコが生息環境を変えるために
胞子を飛ばすために作った造形物なのである。

多くのキノコにはカサがあって、
その裏には必ずヒダがあると思うが、
これはまさに胞子を出すための部分なので
表面積が非常に大きく設計されているのだ。

キノコの栽培をする際には
一旦菌糸をオガクズの中にしっかりと張らせてから
環境を変化させることでキノコに
この環境ではマズいと思わせることで
故意に食べられる部分を作っているのである。

朽ち木に生えるシイタケがなぜ初心者にも
簡単にできるかと言うと、
朽ち木は非常に不安定なものだからである。

当然栄養を使い切ってしまえば
その中ではそれ以上生息できないし、
木も他の昆虫などの力で形をとどめなく
なっていくであろう。

すこし話が逸れたが、
我が家のストレリチアに花が咲かないことは
そう考えてみると実は飼い主(植物ではあるが)冥利に
つきるというものである。

あなたの家になぜか花が咲かない植物は
ないだろうか。

もしあるなら、花が咲かないことに悩むのではなく
花が咲かないことを誇ってやってもいいのである。


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