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タイカレーと学び

人に言うと結構驚かれるが
私は結構料理をする。

妻と私は帰宅する時間が近い時が多く、
私の方が先についたときには
私が家族の夕食を作っているほどである。

だが、このことを職場の人にいうと
特に男性の同僚や上司からは
「よくそんなレパートリーがあるもんやな」と
言われることが多い。

彼らの中では男性の料理とは
ごく限られたメニュー(カレーなど)を
ごくまれに週末に振舞うものなのかもしれないが
私にとってはそうではない。

料理に性別など関係ないと思っているが
世の主婦の方が持っている感覚と
全く変わらない感覚で料理に向き合っている。

なので、平日は冷蔵庫にあるもので
適当なメニューを考えて、
できるだけ時間をかけずに作ることが多い。

だが、それだけだとどうしても
マンネリ化してしまうので、
週末にはできるだけ家族のリクエストを聞いて
新しいものを作る機会を作るようにしている。

先日の週末、家族に
「今日のお昼何が食べたい?」と聞くと
子供たちは何でもいいという。

すると妻が「アジア風のカレーが食べたい」と
言い出したではないか。

アジア風と一言で言っても色んなスタイルがある。

一体どのようなものを想像しているのかが
わからなかったので妻にヒアリングしてみると、
まだ結婚する前の付き合っている時代に
一緒に神戸で食べたタイ料理屋のカレーを
頭に思い描いていることがわかった。

タイでカレーを食べたことのある方なら
ご理解いただけると思うが、
タイのカレーはカレー粉だけで作られているのではない。

色々な香草が入って香り豊かで、
そしてとても辛いカレーなのである。

正直、これを100%再現してしまうと
妻は喜ぶかもしれないが、子供たちは
どう考えても食べられないだろう。

しかも、そもそも100%再現できるかどうか
全く自信もない。

早速どのようなものを作ろうか
考え始めたのだが、
私には一つのこだわりがある。

それはGoogleでレシピを検索しないことである。

今の時代、レシピを見れば色んな答えが
書かれているのは間違いないが、
それでは自らのアウトプット力の訓練としては
少し物足りないと思うからである。

文章力を上げるために真似したい人の
文章を一言一句書き写す「写経」という
訓練方法があるが、
レシピを見てそれをそのまま再現することは
まさにこの写経と同じだと思うのだ。

もちろんそれも繰り返していけば
自分のレシピとして再現できるように
なるのだろうが、
そのレシピに至った理由が自分でわからないので
アレンジのしようがない。

なので、私は一度自分の頭で考えてみて
一度作ってみてから
どうしても近づけない時に初めて
ネットで調べるようにしている。

今回のタイカレーはまさにそのアプローチで
作り方を考え始めた。

過去に食べた味のイメージから
何を入れなくてはいけないかを考え、
リストに上げていく。

ところが、どう考えてもタイカレーの
あの味に頭の中で近づかないのである。

いわゆる私達が一般的に食べるカレーから
一歩外に出ないイメージなのだ。

いくら頭で考えても結局わからないので
一旦リストアップした食材を買って
早速調理に取り掛かることにした。

チキンと野菜を一緒に炒めて
そこにカレー粉と塩を入れて、
水とココナッツミルクを入れる。
煮立ってきたらナンプラーや調味料を入れて
味を調えて完成が近づいてきた。

だがココナッツミルクが入った分
間違いなくアジアのカレーっぽくはなっているものの
やはり頭で思い描いた通り、
タイのカレーには何かが足りないのだ。

一体何が足りないのか。

そう考えた時に一つのものが足りないことに
ふと気が付いた。

唐辛子である。

先ほども書いたようにオリジナルの
タイカレーは明らかに辛い。

それだけ多くの唐辛子が入っているから
辛いのであるが、
そこに入っている唐辛子は青唐辛子である。

もちろん我が家ではそんなモノないし、
入れてしまうと子供たちが食べられなくなる。

なので私は唐辛子なしでカレーを作ったのだが
もしこれが辛さだけでなく味や風味に
影響していたとすれば、
何か物足りない感じがするのも納得できる。

そこで冷蔵庫を探ってみると
1つだけ残ったピーマンがあることに気が付いた。

ピーマンは辛くはないが唐辛子の仲間なので
風味は近しいものがある。

そこでさっそくピーマンを別のフライパンで炒め
投入してみると、
驚くほど味がタイ風味に仕上がったのである。

しかも本場のもののように辛くない。

出来上がったカレーを食卓に出すと、
妻も子供たちも美味しいと言って
ペロリと平らげてくれた。

私もいい出来だと自画自賛しながら食べたのだが、
ふとこのプロセスは学びと似ているなと思った。

私達は日々何かを学んでいるが、
学んだからと言って何かが劇的に変化するわけではない。

それは頭の片隅に点のように置かれて
脳という白い紙のあちこちに点を打っていくような
そんなものである。

だが、何かアウトプットしようとしたとき、
この点と点があることで、
それぞれの点同士の距離が短くつながることで
真っ白な紙よりも格段に早く線を
引くことができるようになる。

これがまさに学びの効果である。

日々料理をすることは私にとって
学びと同じ。

脳の中に点を打っていくことなのであろう。

そして、その無数の点があったからこそ
過去に作ったことがないタイカレーも
自分なりに最適解を見つけることができたのだ。

そう考えると日々の料理もムダではないのだ。

味も美味しく、何だか気分のいい休日の昼食となった。

今日も新しい一日が始まったばかりだが、
今日打った点がいつか使える日が来ることを信じ、
変わらず点を打ち続けたいと思う。



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