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商品に妥協しない会社

昨日仕事でとある会社を訪問した。

その会社とはもう7年ほどの取引になり、
彼らに専用仕様の商品を提供しているが、
その商品のリニューアルについて打ち合わせるため
訪問したのである。

このような場合ふつうは営業と私の2人で行くが、
昨日は営業担当がどうしても別の案件で対応できず
先方も日程が合わないということで
私が一人で訪問することになった。

とはいえ、ここ最近の打ち合わせでは
技術関係の話が多く、技術者2名と応対することが
多かったので
今回も2名との面談だと思っていた。

だが、面談室の扉を開けると先方の購買担当や
技術部隊のトップまでおり4人が座っていた。

急に就職活動の面接気分を
味わうことになり、私はひそかに緊張した。

早速面談が始まると、現状提案している
新仕様について現状の課題点のすり合わせ、
今後のスケジュールについてほぼ雑談なしで
話が進んでいく。

多くの企業は面談の際に雑談などを入れて
面談時間が長くなる傾向にあるが、
彼らはいきなり本題に入り、
本題が終わればピシャリと面談を終えるので
面談していてとても気持ちがいい。

そうして、1時間少しが経過し、
おおむね打ち合わせる内容について議論が終わった時、
私はふとこの状況を冷静に眺めてみた。

具体的なことは書けないが、
このプロジェクトで私達の会社が納めるものは
彼らが販売する商品のごく一部の部品である。

彼らの商品とは機械系のものなので、
彼らにとってメインの調達品は間違いなく
機械に関わる部品である。

だが、私達が納める商品は機械の動きに
関わるものではないし、
正直機能的には殆ど影響しないものである。

では何のために私たちの商品を使うのかというと
それは意匠性を付与するためである。

工業用の機械ではなく、エンドユーザーは
一般の人になる機械なので
ある程度デコレーションが必要となる。

私達の会社にとっては大きな話ではあるが、
そのごくわずかな部分のために
彼らは4人もの人を出して1時間少しも
私と面談の時間を使ったのである。

しかも、その中で決めたTo Doでは
彼らが実行すべきことも多く含まれており、
私達が今後出す予定の試作品について
かなりの工数を使って評価を進めるという。

確かに商品にとって意匠性は大切なポイントであるが、
私達の商品でなくても選択肢はいくつもありそうであるし、
それほどこだわるべきポイントではないように
私の目には見えるのだが、
彼らは全く妥協をしない。

提供するこちらは当然その道でプロなので
質問されれば大抵のことは答えられるが、
彼らは知見がない中でも私達の商品について
驚くほど細かな疑問を投げかけてくるのだ。

彼らが販売している商品は
かつては沢山の競合があった。

だが、人々のニーズの変化に伴って
競合他社は1軒1軒と廃業していき、
いまでは彼らの実質独占状態となった。

彼らが生き残ったのには色んな理由があるだろうが、
自分たちの商品に妥協しない強い姿勢を
社員皆が持っていることは
間違いなく一つの要因ではないだろうか。

正直、彼らの様に商品に対してこだわりを持って
接してくれる顧客との面談はとても疲れる。

当然こちらもいい加減な回答はできないので
しっかりと準備もするし、事前にイメトレもする。

だが、疲れると同時にそのような面談は
とても楽しいものでもあるのだ。

彼らの細かなニーズを商品で満たして
彼らの商品の一部として世に出すことは
とてもハードルは高いが、
その分跳べた時の爽快感はたまらない。

昨日の面談では課題点こそ残ったものの
実搭載に向けてかなり前進した。

私達が心血を注いだ部品が
彼らの商品の搭載され、それを見る日が待ち遠しい。

やはりちゃんとこだわって作られたものは
多くの人を惹きつけるし、
時代を超えても売れるものなのだ。

きっと今身の回りにある色んな商品も
作り手の並々ならぬこだわりの結晶なのだろう。

なかなか外からは見えないが、
その商品に込められたストーリーを少しだけ
想像してみるのも面白いものである。

ちなみに、昨日面談した会社は
職場では完全私服スタイル。

特に昨日は暑かったのもあり、
先方は薄着のシャツで応対していた。

暑い中でカッチリ襟つきシャツを着こんで
汗をかきながら仕事をするのは
冷静に考えてみればとてもナンセンスである。

私の会社では顧客と会うことがなくても
営業マンはカッチリスーツを着ているが、
必要なところに必要なエネルギーを向ける意味でも
見直してもいいのではないかと思った。



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