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アシカセヲハズセ

昨日いつものように通勤していると
バスの中に見慣れないステッカーが
貼られていることに気が付いた。

毎日同じバスに乗っているので
いつから貼られていたのか
疑問に思いながらそのステッカーを見ると
「12か月通勤定期」というものの案内であった。

私が通勤で利用しているバスは
自治体が運営しているものではなく
民間のバス会社が運営しているものである。

そのため定期券の購入はその民間バスの窓口で
しなくてはならないのだが、
これが驚くほど窓口が少ないのである。

定期の更新のためにわざわざターミナル駅まで
行くのは正直面倒であるし、
今はどうかはわからないが以前は
現金しか受け付けてくれなかった。

民間のバス会社の運賃は自治体運営のものより
格段に高いので定期の料金は
否応なく高くなってしまうが、
それを毎月銀行からおろして定期を更新するのは
たまらなく面倒なのだ。

しかも、定期にしたからといって
特段価格が安くなるわけでもない。

計算上21日往復で乗れば定期の元が取れるが、
出勤日数や出張のケースを考慮すると
元が取れないケースも出てきてしまう。

なので、私は今の会社で働きだして
2か月だけ定期券を購入して、
それ以降は交通系ICにチャージして使っている。

交通系ICならばクレジットカードと連動させれば
チャージのために現金をおろす必要もないし、
定期のような更新の手間もないので
非常に合理的な選択だと思っている。

なので最初「12か月通勤定期」などという言葉を見ても
私は全くピンとこなかったのだが、
よく考えてみるとこれまで定期の最大期間は
6か月までがほとんどであった。

払う側からすれば長期の定期を購入するほうが
割引額も大きくなり、更新の手間も省略できるので
便利であるし、
バス会社からすれば更新頻度が下がることで
対応する作業者の負担減につながるとともに
先払いのような形になるので
キャッシュフロー的にも有難い
Win-Winな仕組みだと言える。

人手不足に悩み、減便を余儀なくされている
バス会社からすれば顧客満足度を上げる
一つの策として12か月通勤定期を発売したのであろう。

そう考えながらそのステッカーを見ていたのだが、
いざ自分が12か月定期なるものを購入したいと
思うかと言われれば、全くそうは思わなかった。

もちろんそう思う背景には先ほど書いたような
現状のやり方に満足しているからというのもある。

いくら割引になっているとはいえ12か月分の
運賃をまとめて払うとその金額はかなり大きいので
我が家のキャッシュフローにも多少の影響もでる。

だが、私がこの定期に魅力を感じない一番の理由は
”フレキシブルさがなくなる”だと思うのだ。

12か月の定期を購入するということは
当然ながら12か月以上はこの路線を使い続けると
いうことである。

私の場合、12か月以上駅から会社までの距離を
この路線で乗り続けるということに他ならない。

別に1年以内に会社を辞めようと
思っているわけではないし、
通勤の方法を大きく変えようと思っているわけでもないが
いざ自分がそうしようと思った時に
この12か月定期は足かせになってしまうと
感じてしまうのである。

実際、私は電車の定期は1か月単位で
更新するようにしている。

会社の通勤費精算は1か月単位の料金で
支給されているので
私が6か月定期で購入すれば
毎月差額分を懐に入れることもできるが
私はあえてそれをせず1か月ごとに更新している。

それも全く同じで、長期間にすることで
自分の足かせになるのが嫌なのだ。

だが、10年前の私はそのようには
感じていなかった。

長期で定期を持つ方が合理的だと考え、
そちらを選択していた時期もある。

一体何が私の判断基準を変えてしまったのか。

それはやはり例の感染症ではないかと思う。

私達のほとんどが例の感染症騒動が巻き起こるなど
微塵も想像することなくこれまでの生活を
送ってきたはずである。

だが、2020年からその騒動は確実に
自分たちの目の前にまでやってきて
社会の仕組みから仕事の仕方までゴロっと
変化させてしまった。

この時には真剣に会社の存続を
危惧していたし、
これからどうなるのかという不安を感じたが、
その危機感をバネにして私は行動を変えた。

早起きして朝活をするようになったし
今は積極的ではないものの副業として
Kindleの出版もするようになった。

そして何よりこうしてnoteやSNSで
発信をするようにもなった。

色々な変化を自分の中に起こす事で
どんな未来が来ても対応できるように
備えなくてはならないという気持ちが
その根底にあったと思う。

そうして、自分を変化させた結果、
一つの結論に至るようになった。

”自分の足かせになるものは極力排除したい”

以前からモノを多く持つタイプではなかったが
この頃からより一層モノを持たなくなったのは、
所有物が多くなるということが
それだけ自分の足かせになるということだと
感じるようになったからである。

極端な話、何かあったらスーツケース一つで
どこかに移り住めるぐらいが私の理想なのだ。

もちろん現実はそんなに上手くいかない。

妻はどちらかというとモノを所有したがるタイプなので
私的には家の中はモノが多すぎると思うし、
いくら私のクローゼットがスカスカになっても
妻や子供たちの服であふれてしまう。

私の価値観を彼女らに押し付けることは
いくら家族でもあってはならないと思うので
軽く助言する程度にとどめているが、
少なくとも自分が選択するものに対しては
自分の価値観を大事にして選ぶようにしている。

今回バスの中で偶然見かけた”12か月通勤定期”という
ステッカーは
私がこの数年で実感するようになった自分の変化を
改めて気づかせてくれるキッカケになった。

誰にも縛られたくないと逃げ込んだこの朝に
自由になれた気がする40の朝である。

無論、私はバイクは盗まない。


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