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我が家に”赤いヤツ”が来た話

2週間ほど前のこと。
インターホンが鳴り、カメラを見ると
いつも我が家に荷物を運んでくれる
運送会社のお兄さんが立っていた。

そそくさと出て行って荷物を受け取ると
想像していなかった大きな箱であった。

宛先は妻の名前なので
妻に中身を尋ねてみると
家電のレンタルでシャープのホットクックが
届いたという。

家電のレンタルというビジネスは
以前に聞いたことがあったが、
我が家でもそれを活用していたことに
私は驚いていた。

箱を開けながら目を輝かせる妻。

中には赤い炊飯器のような
機械が出てきた。

子供たちは荷物が届くといつも何か何かと
喜んで見てくるのだが、
「なんや、ママ新しい炊飯器を買ったん?」
とガッカリした様子である。

妻が時々Voicyで聞いている尾石晴さんという方が
この調理家電をオススメしていたらしく
以前から欲しいと思っていたそうである。

休日の調理担当の私としては
これを使う楽しみゆえに妻が料理をしてくれれば
ありがたいことこの上ない。

そして、その日から我が家のキッチンに
この赤い炊飯器のような機械が鎮座し始めた。

到着したその日から数日妻は嬉しそうに
野菜スープやみそ汁などを作っていたのだが
正直、これらのスープは鍋で作るものと
クオリティとしては大して変わらず、
子供たちからすれば嫌いな野菜が沢山入ったスープに
テンションが下がり、リアクションはイマイチであった。

とはいえ、鍋で作るのと同じクオリティを
具材を入れてスイッチオンだけで作ってくれるのは
十分にありがたい話である。

そうしてこの機会がきて2週間が経過した。

最初は違和感のあった赤い色も
もはや我が家になじんできた頃である。

土曜日、スーパーから帰ってきた妻がなぜか
日ごろ絶対に買わない野菜を持っていた。

セロリである。

私は男性の中ではかなり料理をするほうだし
自分で言うのもなんだが料理が得意な部類だと思う。

だが、セロリの使い方だけは
イマイチわからないのだ。

タイやマレーシアで食べた炒め料理に
セロリが入っていていい香りづけになっていると
感じることはあったが、
自分が同じような用途でセロリを使おうとは
思ったことがない。

というか、それで消費できるセロリは
ごくわずかなものだが、
基本セロリは1本単位で売られているので
ほぼ間違いなく、残りのセロリは
ベジタブルスティックにするしかない。

そんな私にとって縁遠い野菜のセロリを
妻が嬉しそうに買ってきたので
私は思わず妻に「これで何を作るの?」と
尋ねてしまったほどである。

すると妻は嬉しそうな顔で
「今日は無水カレーに挑戦してみようと思うねん」
と言う。

そう言えばこの家電は無水調理ができる事が
売りらしく、届いた箱にも書かれていた。

そのまま妻にお任せしていても良かったのだが
休日の調理担当としては、何か手伝わないと
気持ちがわるい。

そこで、妻と一緒に準備をすることにした。

食材を切ったりするのは得意なので、
何をどれだけ切ればいいかを妻に聞く。

すると、みじん切りにしてほしいと
玉ねぎとセロリを私に渡す妻。

そこで私は驚愕した。

なぜなら妻が渡してきたのは
セロリ1本丸々だったからである。

「え?ホンマにこんなにセロリ入れるん?」
念のため確認する私に頷く妻。

レシピにそう書かれているなら
信じるほかないので、
私は玉ねぎとセロリをみじん切りにし始めた。

キッチンに漂うセロリの強烈な香り。

これをカレーに入れてどんな香りになるのか
私は全く想像がつかなかったので
内心不安な気持ちで刻んだそれらの野菜を
赤い機械に投入した。

その後は妻が他の材料を投入して、スイッチオン。

後は待つのみである。

土曜日の午前は色々と忙しいので
私はそのスイッチオンを見届けてから
息子のサッカー教室の迎えに行った。

雨の中ずぶぬれになりながら練習した息子を乗せ
家の玄関を開けると、
我が家では嗅いだことのないような
本格的なカレー屋さんのような匂いに私は驚いた。

部屋でくつろいでいた妻と娘は
その香りが出始めてから部屋にずっといたので
あまり気にならないようだったが、
私と息子はその匂いに驚いた。

しかし、息子はびしょぬれで寒がっているので
その香りよりも、先に風呂の用意をして入らせた。

息子が風呂から上がってきたタイミングで
赤い機械が調理が完了したことをアナウンスした。

サッカーをしてお腹を空かせた息子は
はやくカレーを食べたいというので、
11時半過ぎではあったが、食べる事にした。

カレー用に作ったターメリックライスを盛り付け、
赤い機械の蓋を恐る恐る開ける。

すると、部屋に漂っていたあの香りが
ふわっと立ち上がった。

中身をかき混ぜてみると
市販のルーを入れたはずなのに
どうも様子と香りがいつものカレーとは
全く異なっていた。

カレー皿にそれを盛り付け、
家族で「いただきます」を唱和して食べ始めた。

味の感想を文章で書くと陳腐な感じになるので
私自身、あまり得意ではないのだが、
このカレーは明らかに家で食べるそれとは
違うもので、とても美味しかった。

鼻から抜ける香りもスパイスの香りが立っており
黙ってこのカレーを出して
「朝からスパイスを調合してそれを炒ってましてん」
などといっても誰も疑わないほどであった。

しかし、何度も言うが入れたのは市販のルーである。

子供たちもこのカレーを気に入ったらしく、
作ったカレーを昼ご飯だけで綺麗に間食してしまった。

皆大満足で、食事を終えて
私は食器を片付けるためにキッチンに立った時、
私の中でふと一つの疑問が浮かんできた。

「セロリをあれだけ入れたのに、
セロリの香りは全く感じなかった。
あの香りは一体どこに行ったのか?」

調理前は大量の刻みセロリに
不安な気持ちしかなかったのに
食べる時には完全にそれを忘れていた。

それほどセロリの香りも味も
感じなかったのはとても不思議であるが
恐らくスパイスの一種として溶け込んで
セロリ単体の香りはわからなくなったのだろう。

私はそう解釈して食器を洗った。

そして、食後2時間ほどして
次は娘をプール教室に送る時間である。

私はこの1か月ほど、娘をプールに送った時は
教室の開催されている1時間を
プールに併設されているジムでトレーニングを
するようにしている。

娘をプールに送り出したあと、
私は着替えをもってジムに入った。

アップのためにジョギングから始め
いつもの流れでウェイトトレーニングを始めた。

雨は降っていたものの、気温は比較的高かったので
この時点でシットリ汗をかきはじめた。

すると、ある違和感に私は気づいた。

なんだか自分からいつもと違う匂いがする。

何とも形容しがたいのだが、
明らかにいつもと違う自分の匂いがするのである。

最初それが何か私はわからなかったのだが
しばらくするとあるものと同じであることに気が付いた。
先ほど食べたあのカレーの匂いである。

厳密にいうとカレーそのものの匂いではなく
その香りの裏に隠れていたスパイスのような
香りなのだが、
それが私の汗からなのか、体からなのかはわからないが
明らかに私から発せられているのである。

とはいえ、この状況ではどうしようもない。

そのままいつものようにトレーニングを続け、
娘の教室が終わるタイミングで
着替えを済ませて出て行った。

そこでふと、その体臭の原因を考えてみたのだが
カレーの原材料は何ら特別なものを入れていない。

唯一アイツを除いては。

そう、セロリである。

冒頭に書いたように私は日ごろセロリを食べる機会も
調理する機会もほとんどないので
自分がセロリを沢山たべるとどうなるのかは
全く経験がなかった。

しかし、どうやら私はセロリを食べると
体臭にその香りが出てしまうようである。

昔ベトナムで仕事をしているときに
現地のスタッフは不思議と蚊に刺されないのが
不思議だったのだが、
どうやら彼らは香草を日常的に食べるために
体臭から蚊の嫌う匂いが出ていると
誰かに聞いたことがあるが、
それと似たようなことがセロリで起こるのかもしれない。

食べたとき鼻では感じなかった
セロリの香りが周り回って私の体から
出てくるとは、
人間の体は面白いものだなと感じさせられた。

なんだかこの記事は変な話で終わってしまうが
こんかい紹介した赤いヤツ(ホットクック)は
なかなか面白い調理家電である。

値段は高いが、レンタルならばリスクなく
試すことができるようなので
ぜひ試してみてほしい。

そして、ぜひ無水カレーを作り
体臭の変化を確認してみてほしい。

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