水99.9%というコピーが教えてくれたこと
我が家には小学生と保育園の子供が2人いる。
2人の子供たちを連れて外出すると、
ふとした時にウェットティッシュが欲しいと
思うことが多い。
子供の手や口を拭いたり、服などに何かが付いた時に
応急処置として拭き取ったり、
何かと便利なので、我が家ではあかちゃんのおしりふきのような
ウェットティッシュを常備している。
先日在庫を見るとほとんどなくなっていたので
新たに買い足すことにした。
妻がスマホをポチポチして購入が完了。
翌日はさっそく家にAmazonの箱が届いていた。
新しいウェットティッシュを保管場所に置こうと
箱をあけると、そこには水99.9%という文字が
書かれていた。↓
この表示は子供たちが赤ちゃんの頃に
おしりふきでも見たことがあったのだが、
どうやらそれの手口拭き版のようである。
昔を思い出して懐かしいなと思いながら
それらを収納しているとふとあることが気になった。
水99.9%ということはそれ以外に書かれている
コラーゲンやモモ葉エキスは0.1%以下ということである。
これは360mlの缶で想像してみるとわかりやすい。
この中に0.1%の成分が入るということは
0.36mlが入っているということである。
比重を考慮せずに0.36gとすれば
耳かきで約10杯分ということになる。
これはとても少ない量だとは思わないだろうか。
少なくとも私の感覚からすればとても少ない。
化学の世界ではほんのすこしの微量成分が
化学反応に何らかの影響を与えることは
しばしば経験しているが、
人体に対して使うものでこの添加量が
本当に効果があるレベルなのかと言えば
それは甚だ疑問である。
だが、今回私が議論したいのはこの点ではない。
このように有効成分の添加量が極めて少ないことを
消費者に悟られる可能性があるにも関わらず、
なぜメーカーは水99.9%というキャッチフレーズを
商品に載せようと思ったのであろうかという点である。
普通に考えれば、あかちゃんが手や口に使うものなので
余計な成分が極めて少ないことをアピールするために
書かれたものだと思うが、
何度も言うようにこれは本来デメリットなはずである。
なぜなら、ほとんど水ならばハンカチを水道水で
濡らしたものと何ら変わらないからである。
ある意味家庭の中にある競合品との
せめぎ合いという観点では
このキャッチフレーズはネガティブなものである。
しかし、私の妻は主に家の中で使うにも関わらず
このキャッチフレーズを見てこの商品を購入した。
それはなぜか。
競合となる商品は濡れたハンカチではなかったからである。
本当の競合は他のウェットティッシュだったのである。
入院したときなどに置かれる旧来のウェットティッシュは
基本的にアルコールが含侵されたものであった。
感染症の影響でアルコールタイプが一時売れたりもしたが、
やはり子供の手口に使うものならば
アルコールが入っていると親は不安に感じるものである。
だが、商品をパッと見た時にはそれが
アルコールタイプなのかそうでないのかはわからない。
そんなときに水99.9%という表記があれば
消費者はこの商品がアルコールタイプでないことが
一目でわかる。
この瞬間、商品を選ぶ親からすれば
水99.9%はアルコールの含有量が0.1%以下という言葉に
変換され、ポジティブな意味合いとして
解釈されることになるのである。
この話は一見すると製造業における
ネーミング、キャッチフレーズの大切さの
話のようにも見えるが、
実は私達もとても活用できることだと私は思っている。
なぜなら私達は必ず何かしら弱点を持って
生きる生き物だからである。
例えば、私はどうしても経済のことや社会情勢には
あまり深い興味を持つことができないのが
一つの弱点だと思っている。
マクロ的な視点がどうにも持てないからである。
だが、それも見方を変えればミクロな視点に
特化した見方ができるということでもある。
そう考えると弱点は強みに変換できることになるが、
この変換が私達はあまりに苦手なのだ。
ついつい自分の苦手なこと、うまくできないことに
フォーカスしてしまい、
そこばかりに意識を向けてしまう。
そうすると、弱点を単なるネガティブな事として
受け入れる以外に選択肢がなくなってしまう。
だが、見方を変えるとこれは必ず
ポジティブな面が見えてくるはずなのである。
水99.9%のウェットティッシュを
「他の有効成分が0.1%も含まれていない」と
捉えるか
「アルコールや有害物質が0.1%以下」と
捉えるかは全て自分次第なのである。
どうせ同じものをもって生きるならば
それをネガティブに捉えるよりも
ポジティブに捉えて生きたほうが
楽しいのは言うまでもないだろう。
ふと目にしたウェットティッシュは私に
自分に対する捉え方を改めて考えさせる機会を
与えてくれた。
改めて仕事が終わった後にでも
水90%以上の琥珀色した泡立つ液体を飲みながら
自分の捉え方を見直す機会を作ろうと思う。
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