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ヒーローの登場を待つな

ここ1年ほどであるが、
私が働く会社の業績が悪い。

だからといってすぐに倒産の危機が
あるかと言われれば、そうではないのだが
海外から多くの原材料を仕入れて
モノづくりをする企業としては
この極度な円安が大きなダメージになっているのは
間違いない。

そんな状態なので、当然私達は対策を打っている。

顧客に値上げ要求をして、
少しでも原材料コストの安いものに
切り替えを検討することで、
少しでも利益率を改善しようと試みてきた。

だが、それによるプラスのインパクトも
円安の影響ですぐに相殺されてしまう。

なかなか思うように業績を上げていけずに
この1年間が過ぎていった。

私の職位は課長であるが、
経営に関わる会議に数年前からずっと
参加し続けている。

商品開発自体が未来への投資的な要素が
強い部署だからというのもあるし、
私は海外グループ会社とのやり取りが多いので
情報として知っておくことが必要だという
会社の判断によるものである。

先日も経営に関わる定期会議が開催された。

議題に沿って話が進んでいくのを
参加者の一人として見ていたのだが、
その議論を聞いていると何だか私の中で
モヤモヤが広がっていくのを感じた。

それはなぜか。

多くの参加者が何だか他人事のような
姿勢で課題に向き合っているように
私には見えたからである。

こんなことをその本人たちにいうと
きっと「そんなことはない」と
憤慨するだろうが、
私の目にはそのように映ったのである。

では、なぜ私にはそう見えたかというと
彼らが皆、ヒーローの登場を待っているかのような
姿勢だったからである。

かつて私が働く会社には創業者である
現会長がいた。

この人はアメリカ資本の親会社と話をして
日本法人を立ち上げ、
今のビジネスの形を作った人で
その溢れるバイタリティをもとに
いい意味でワンマン社長として長年会社を
引っ張って来た。

だが、その会長も数年前に経営から退き、
今は親会社が選んだ別の人が社長をしている。

率直に言うと、今の社長はそんなに
バイタリティが溢れるタイプでもなければ
統率力が強いタイプでもない。

悪い言い方をするならば、
親会社にとても従順な人という印象で
あまり主張をすることがない。

その反面、私達がやろうと言うことに対しては
理解は示してGoを出してくれるので
私としてはむしろやりやすくなったと思っている。

だが、先日の会議では多くの参加者が
自分たちの課題に対して、
社長に方針を求める場面が多くみられたのである。

もちろん、社長は経営者なので
指針を問われれば、それに答えなくてはならない。

しかし、その指針を出すためには
経営に関わる人もどうすべきかを考え、
議論をすることが大前提ではないだろうか。

なぜなら、社長が出す方針に対して
その方針をどう展開するかだけを考えるのなら
私のような課長クラスだけで事足りるからである。

会議にメインで参加している彼らは
経営者の補佐として何をどうすべきなのか
自ら考えて、検討して、その結果を経営者である
社長にぶつけることが必要なのだ。

社長は現場のことはわからないのは当然だが、
その社長の方針と現場を知っているマネジメントが
しっかりとすり合わせをするからこそ
現実に即した経営が成り立つと私は思っている。

ところが多くの参加者は自らどうするべきかを
口にすることなく、
社長に対して方針を求めていたのである。

例えとして良くないかもしれないが、
私には彼らがジャイアンにいじめられた結果
ドラえもんに泣きつくのび太のように見えた。

ジャイアンにいじめられたという事象は
確かに良くない事象であるが、
そこに対して自らの力で何ができるかを考えず
ドラえもんに対応を求めるのは
非常にナンセンスだと私は思っている。

だが、私が会社で見た事例は
それ以上にナンセンスだと思うのだ。

なぜなら、社長はドラえもんでもなければ、
ウルトラマンでも仮面ライダーでもない。
(見た目的にドラえもんっぽいが)

スペシウム光線で敵を倒すこともなければ
どこでもドアを出すこともない。

私達よりも経営に関する経験が多く
判断力があるというだけなのだ。

アニメの世界ならこういうピンチのときに
ヒーローが助けてくれるのであろうが、
現実の会社経営ではそんなヒーローが
現れることは少ない。

無論、経営者が変わって劇的に業績が
回復した事例もある。

だが、それは極めてまれな事例。

私達がすべきことはヒーローを待つことではなく、
自らがヒーローの一員になることなのである。

私達には魔法や必殺技はないが、
長年実務をしてきて、そして顧客と接してきて
培ってきた経験という強い武器があるのだ。

それを使って私達が一体何をすべきなのか
自ら方針を出すぐらいの気持ちを持たない限り
決して前に進むことはできないだろう。

僕のヒーローアカデミアという漫画があるが
その漫画の中に出てくる登場人物たちは
異なる個性を持ちながらも、
皆がヒーローの一員として敵や課題に
立ち向かっている。

私達があるべき姿はのび太ではなく
僕のヒーローアカデミアの登場人物なのだ。

あまりにモヤモヤしてしまったので
オブザーバー的な立ち位置にも関わらず
私は会議で意見をしてみたが、
その意見を苦い顔で聞いている製造部門の
トップの顔が印象的であった。

経営に絶対的な答えはない。

皆が自らの個性の中で出した最適解を
この場でぶつけ合し、
私達の最適解を出すべきなのだ。

苦い顔をするぐらいなら自らどうすべきかを
述べて反論すればいい。

少なくとも私は自分がヒーローの一員だと思って
戦っていこうと思う。

ちなみにこの記事を書きながら
僕のヒーローアカデミアを紹介しようかとも
思ったのだが、
ヒーローという言葉を聞くとどうしても
今年の1月末で終了したひろがるスカイプリキュアの
キュアスカイが頭に浮かんできてしまった。

後半はあまり言わなかったがキュアスカイは
変身する前に「ヒーローの出番です」という
キャッチフレーズを言うのが定番であった。

会議に参加する前に皆がキュアスカイのように
「ヒーローの出番です」と言いながら
会議室に入るぐらいの気持ちで臨めば
きっといい会議になるのだろう。


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