見出し画像

貸与と贈与と森へのパスポート。

前回noteでは、先日購入いたしました
宮﨑駿さん監督映画作品集を購入してから、
すこしずつ作品を観よう! と思い、今回は
『となりのトトロ』を観たことを申しあげました。

『トトロ』はね、前回でも申しましたが
ぼくはとっても大好きで、これまで
幾度か観ているのですが、何度観ても
やっぱり大好きなんだなあ〜。
どのシーンが好きか? ってゆうのは、
すべての場面が好き! と申したいですが、
強いて、強いて、挙げるとするならば、
ある日、大雨になり
傘を持って出かけなかった父を迎えに行くため、
サツキとメイは父の傘を手に、バス停(稲荷前)で
父が乗って帰ってくるバスを待つシーンです。
そして、この場所では、その先日メイが出合い
メイより話しを聞いてから、サツキも
「会えたらいいな」と願っていたトトロが現れる。

このとき、サツキは
おねむになってしまったメイをおんぶしながら、
となりで立っているトトロが雨にぬれるのを気づかい、
トトロに父の傘を貸してあげる。
トトロがその傘をさしてたら、突然、木から落ちてきた
雨粒が傘にあたってトトロはその雨の音にとっても喜ぶ。
その後、このバス停には
トトロが待っていたネコバスがやって来て、
ネコバスへと乗り込んだトトロは傘を持って行っちゃう。
サツキは、トトロからそのお礼として
どんぐりの入った包みをもらう。

ここで考えられるのはね、サツキは
トトロに傘を「貸与」したけれども、
トトロは傘を「贈与」されたものだと思った。
もしかしたら、トトロには
貸与という概念が無いのかもしれないけど、
貸与の場合には、そのものを
所有者に返却するけれど、
贈与の場合は返却せず、しかし
反対給付として別の品物をお礼として贈る。
そんなかんちがい的なやり取りによって、
その後、物語は大きく進展してゆく。

‥‥というシーンを観ながら、今回、ふと考えたのは
そのすこしまえの場面において、
サツキの同級生の男子・カンタが、
大雨の中で、じぶんのさしている傘を
お地蔵さまの小屋で雨宿りする
サツキとメイに渡すけれども、このときは
カンタより傘を渡されたサツキはもちろん
「貸与」だと思い、帰宅後、
カンタの家にこの傘を返しにゆく。
傘を返却後、サツキとメイは
その足でバス停へとむかうけど、
つまりはさ、その後、サツキが
トトロに父の傘を渡したのは、そのまえに
カンタよりいただいた恩に対する
「恩送り」のような行為をしたのではないか?!
とも思ったのよね。つまり、サツキは
カンタより傘を渡されたからこそ、
その行動を思いつけた、と申しますか。

そして、このシーンによって変化したのは、
サツキは当初、いちいち
ちょっかいをかけてくるカンタのことを
「男の子、きらい!」って言っていたのを、
終盤の場面において、サツキがカンタを
「カンちゃーん!」と呼ぶようになっていた。

それもこれもすべて、カンタが
サツキへと傘を渡したからだと考えられるし、
なんにしろ、傘が、物語の
キーポイントになっている。

というふうにも思いつつ、映画が終わり
エンディングテーマ(宮﨑駿さん作詞)を聴いていると、
その二番では、「雨傘」が
【森へのパスポート】
になっていると歌われていて、
なるほどなあ! と思ったんだった。
つまり、傘がパスポートであり
このパスポートによって魔法の扉が開く。
逆を言えば、傘が無ければ
その扉も開かなかったやもしらない。

そういうような物語の映画を
あらためて観ながら、ぼくもまた
ある扉を開く「パスポート」を
手に入れられたり、もしくは
貸与や贈与をできたら、と、感じたのだった。

令和6年7月26日