編集者が私の小説に勝手な赤字を入れてきます。(『おはなし仙人の勝手に人生相談』その5)

相談者(自称 新人小説家):念願の小説家デビューが叶い、とある小さな出版社から本を出せるようになったのですが、私の書いた小説に編集者が山のように赤字を入れています。文体のみならず、登場人物の心情まで変えてしまい、困っています。私のオリジナルを尊重してくれるように相談しているのですが、どうも話が通じず、相変わらず大量に赤字を入れてくるので、心理的ストレスが高じてこのままだと鬱になりかねません…。出版社から小説を出すというのは、そういうことなのでしょうか?

おはなし仙人:世の出版社の事情は知らないが、小説の登場人物の心情まで勝手に変えてしまうのなら、それはもうあなたの作品とは言えないね。編集者との共同執筆を望むならそれでいいかもしれないが、あなたのように、自分の好きなように書いて届けたいなら、そんなところから小説を出すのは馬鹿げている。相談して話の通じないような相手はたいてい、何を言ってももはや無駄な話じゃ。早いところ手を引くことだな。

とはいえ、ようやくの念願のデビューとのことだから、もったいない気もするんじゃろ? しかし、そんな不毛なストレスを抱えて心を病んでは、さらにもったいない。世の中は不条理だらけだ。くだらないところからは手を引き、いさぎよく捨ててしまうことだな。私はそうやっていろいろ捨てていくうちに、気づいたら仙人と呼ばれるような生き方になっていた。仙人といっても、「おはなし仙人」じゃがな。そう立派な仙人ではない。

あなたも、そんな傲慢な編集者がいる世界から手を引いて、もっと自由な世界を目指したらどうじゃ。今どき、出版社から本を出さなくとも、自費出版とやらで本を発表できると聞くし、インターネットとやらを使えば、簡単に言論を発表できるんだろ? わしのくだらない話もnoteとやらで発表されておるらしいしな。自分の好きに書いて、自分の好きな方法で発表すればいい。最初は大勢に読んでもらうのは難しいかもしれないが、あなたが本当に、人が必要としているものを書いているなら、読み手は徐々に増えていくだろうに。

そもそも、他人の文章に勝手に手を入れるというのは、非常に暴力的な行為だね。文体一つ変えるだけで、別人格になるってもんだよ。それに耐えられないあなたは、小説家としての素質があるのかもしれんよ。まぁ、小説を書いたこともないおはなし仙人の言うことだから、アテにならんがな。とにかく、そんな我慢は身体にも心にもよくない。もう一度自分でよく考えてみて、見切りをつけるなら早いほうがいい。頑張らず、好きにやっておくれ。


(おしまい)

※架空の人物「おはなし仙人」が架空の人生相談に答えるシリーズです。
筆者はおはなし仙人と同一人物ではありません。

※なお、おはなし仙人は修行とお昼寝でいそがしいため、コメントをいただいても返事ができません。コメント自体は歓迎で、いただいたコメントはおはなし仙人にお伝えしておきます。

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