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潮彩の僕たちは宛てのない道を歩く

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2021年9月の記事一覧

第56話「潮彩の僕たちは宛てのない道を歩く」

二十歳だった、長谷川千夏の言葉を思い返す。 『鍵のない扉を開けなさい』 『帰る場所を失っ…

第55話「潮彩の僕たちは宛てのない道を歩く」

「美鈴?どうしたの!?」 「あっ、海ちゃん」と僕の方に向かって笑顔で言ってきた。 ポニー…

第54話「潮彩の僕たちは宛てのない道を歩く」

昼過ぎに目覚めると、僕は何も起こらなかったことに困惑していた。台所で桃香がスパゲティを茹…

第53話「潮彩の僕たちは宛てのない道を歩く」

真夜中の世界を彷徨う二人の影。僕はポニーテールの似合う女の子と夜の公園を散歩した。千夏先…

第52話「潮彩の僕たちは宛てのない道を歩く」

「海ちゃん、また今度ゆっくり会いましょう」と千夏先生は公園の出口で言ってくれた。 そして…

第51話「潮彩の僕たちは宛てのない道を歩く」

博物館の前を通って、僕の予想通り彼女は静寂すぎる図書館の前で立ち止まった。 『静寂な場所…

第50話「潮彩の僕たちは宛てのない道を歩く」

真夜中の時刻、上野公園の桜をライトアップされた電灯も消えていた。僕は満開に咲き誇る桜を見上げていた。月は少し欠けていたし、気味が悪い色で漂うように浮かんでいた。闇夜の中、青白い顔した病人みたいな月。 まるで廃人のようにも見える。と言っても、実際に廃人になった人間を知らないので想像になるんだけど。 僕がどうして、こんな真夜中に桜を見上げているのか。それを知るには少しだけ時間を巻き戻す必要があったーーーー僕が桃香のアパートに向かってる途中の出来事だった。 それはあまりにも突

第49話「潮彩の僕たちは宛てのない道を歩く」

一冊の本が音もなく落ちた。静寂すぎる図書館は余計な音さえも吸収するように消した。僕は本を…

第48話「潮彩の僕たちは宛てのない道を歩く」

明日はバイトが入っていない。土曜日でも図書館は開館しているのか知らないけど、明日は行こう…

第47話「潮彩の僕たちは宛てのない道を歩く」

カーテンが全開に開けられて、熱帯雨林の部屋に風を通す。朋美の瞳に移る空虚な顔を見て、首筋…

第46話「潮彩の僕たちは宛てのない道を歩く」

真相を語る前に、朋美は自分の生い立ちを話し始めた。僕はそれを聞いたとき、朋美と僕はとても…

第45話「潮彩の僕たちは宛てのない道を歩く」

商店街から離れた路地裏で、朋美は周りの目を気にしながら建物の闇へと消えた。その様子を、僕…

第44話「潮彩の僕たちは宛てのない道を歩く」

肌着一枚にパンツだけの姿で、美鈴が安らかな顔をして寝てる。当たり前だけど、僕の前から消え…

第42話「潮彩の僕たちは宛てのない道を歩く」

冷蔵庫の中にぎっしり列べられた缶ビール。酒好きなのは前回の歓迎会でわかっていたが、常備これだけの数がストックされているのには驚いた。 「海野くん勘違いしないでよ。実家が酒屋なの。だから送ってくれるのよ」 「そうなんだ。それはそれでありがたいね。酒代が浮くもんね。僕はてっきり、北城さんが酒豪で酒好きな人だと思ってたからさ」 「もう、こないだの歓迎会の話はしないで。もうすぐ焼けるわよ」と照れた顔して言う。 そんな表情を見て、僕は普通に可愛いと思ってしまうのだった。二人っき