第50話「潮彩の僕たちは宛てのない道を歩く」
真夜中の時刻、上野公園の桜をライトアップされた電灯も消えていた。僕は満開に咲き誇る桜を見上げていた。月は少し欠けていたし、気味が悪い色で漂うように浮かんでいた。闇夜の中、青白い顔した病人みたいな月。
まるで廃人のようにも見える。と言っても、実際に廃人になった人間を知らないので想像になるんだけど。
僕がどうして、こんな真夜中に桜を見上げているのか。それを知るには少しだけ時間を巻き戻す必要があったーーーー僕が桃香のアパートに向かってる途中の出来事だった。
それはあまりにも突