慢性疼痛について

お久しぶりです!!
更新が滞っていました(滞るというレベルではない😷)がボチボチ記事を上げていこうと思います。
前回のnoteを見ると2020年11月と約2年前に
なっていました。時間が過ぎるのはとても早いですね(泣)

さて今回は慢性疼痛について書いて行こうと思います。私も担当した事がありますが、なかなかリハビリを卒業してもらうことが出来ず苦労した思い出があります。(私の勉強不足です😓)
内容としては日本、世界での慢性疼痛について、慢性疼痛との関係性となっております。

①日本の慢性疼痛患者

スライド2

病院、クリニック等医療施設において慢性疼痛で悩まれている方を多く見かけていました。

牛田らの論文によると2010年に全国1万人を対象としたアンケートで人口の15.4%(約1928万程)が3ヶ月続く運動器痛を有しているとされている。

また疼痛発生部位としては首・肩・腰・膝と理学療法で関わることの多い箇所となっている。

その中でも30~50歳代で比率が高いとされて
おり、職業としては林業・漁業の様な第1次産業より事務職・専門職の方が痛みを有している割合が高いとされている。

現在ではテレワークなどの普及で自宅内であまり動かず、椅子に座ってパソコンを使用するといった以前よりさらに活動性の低下が考えれれるため、今後さらに増えて行くのではないかと考えられる。

②米国での慢性疼痛の有病率

スライド3

ここで1つの例として米国では慢性疼痛はどの様な有病率を示しているのかを調べた。

james Dahlhamerらの論文によると米国成人の約20.4%(5,000万人)が慢性疼痛を有しており、8.0%(1960万人)が生活への支障が大きい慢性疼痛を有しているとされている。

疼痛部位についてはざっくりではあるが、背部(腰、肩、首)が一番多く、下肢、上肢の順番となっている。そこは日本とあまり変わらない。

また他の国を調べた所
・スコットランドでの調査で2001年の研究におい て成人参加者の約14%が慢性疼痛を有し、6.3%が重度の慢性疼痛を有す。

・オーストラリアの成人を対象とした2001年の研究では、男性の11.0%、女性の13.5%が日常生活に支障が起こる慢性疼痛を有しているとされている。

③慢性疼痛の定義

スライド4

ここまで日本、海外においての慢性疼痛の有病率等をまとめたが、その定義とはなにかということをまとめます。

慢性疼痛について厚生労働省「慢性疼痛治療ガイドライン」によると国際疼痛学会(IASP)で「治療に要すると期待される時間の枠を超えて持続する痛み、あるいは進行性非がん性疼痛に基づく痛み」とされている。

以前は発症から6ヶ月を超えて症状が持続する状態とされていましたが
2022年現在では3ヶ月以上持続または再発する痛みとなっています。

④慢性疼痛患者の症状

スライド5

慢性疼痛患者の症状として疼痛以外にも
多彩な症状・徴候を伴っていることが多いとされている。

主な症状として⬆の画像にある5つである。
・認知的要因(抑うつ、不安、欲求不満、怒り、
 破局的思考、恐怖等)
・身体的要因(睡眠障害、不動下・廃用による
 ADL低下)
・社会的要因(社会活動の低下、家族関係の変化、  
 経済的ストレス)
・自己肯定感の低下(自己価値観、自己効力感の
 低下、スピリチュアル要因)
・その他要因(訴訟、医療機関への過度な期待、
 治療への依存)

この中でも抑うつ症状が見られることが多いが、痛みと気分的なものどちらが先で後か現在でもはっきり結論は出ていない。

⑤慢性疼痛と運動

スライド6

慢性疼痛と運動療法の関係性についてこちらも厚生労働省の「慢性疼痛治療ガイドライン」によるとこの様に記されており、
運動療法が単独で、安静や生活指導等と比較すると慢性疼痛と機能障害に対して有効である」とされている。

一方で、運動の種類による効果の差は明らかにはなっていないとのことで、運動療法をすることて一定の効果があるということは証明されている。

また運動の種類による効果の差は明らかになっていないとのことでしたがエビデンスとしては
モーターコントロールexを強く推奨している。
(モーターコントロールexとは、脊柱の安定性向上を目的として体幹部深層筋群の筋機能向上を図るトレーニングである。)

⑥慢性疼痛と心理的要因

スライド7

④にあるように慢性疼痛は痛みだけでなく精神・心理的なものも症状として現れることがある。
リハビリとしては認知行動療法、患者教育が
推奨
されている。

認知行動療法では単独・他治療との組み合わることである程度の疼痛軽減、身体機能の改善を図ることが出来る。
認知行動療法と運動療法の組み合わせでは、
OPEと比較して短期的な面では身体機能の改善効果は少ないとされているが、
長期的に見た場合には疼痛、身体機能の改善度はOPEと同等とされている。

患者教育はリハビリに携わる人であれば誰しも悩んだりするものでしょう。患者教育単独での行うことは一般的な治療と比較して短期・中期的な差がない様です。そのため他治療に加えて患者教育を行うことで効果をもたらすとされています。

内容、方法については
治療の最初に疼痛症状や治療計画について概要を教育患者の意思決定を支援すること
が推奨されています。

⑦慢性疼痛と脳

スライド8

次は慢性疼痛と脳についてです。
また脳の中でも中脳辺縁系との関係について今回がまとめました。

中脳辺縁系は、腹側被蓋野から側坐核、腹側淡蒼球、前頭皮質、扁桃体などに軸索を伸ばしているドーパミン回路のことを言います。

その中で人体に痛み刺激が加わることで腹側被蓋野への群発射が起こり、
側坐核にドーパミンが伝達されることで
μオピオイドが生成
されます。
以上の伝達、産生等が起こることで下降性疼痛抑制系が活動し、疼痛抑制される流れになります。

元々が⬆で説明した事が無意識下で行われるはずなんですが、ストレス・不安・うつ等の心理的などによって痛み刺激に対するドーパミンが減少し、十分にμオピオイドが生成されず、
痛みに過敏な状態に陥ってしまいます。

⑧慢性疼痛と気候

スライド9

リハビリ関係者であれば経験したことがある方が多いのではないかと思います。私自身も患者さんから「台風が近づいてくると膝が痛くなる」、「冷えてくると腰が痛む」と言われたことが
何回もあります。
実際関係性としてどうなのか少しまとめてみました。

気象と痛みの関係については低気圧・低気温が関係するとされています。

佐藤によると低気圧では、
交感神経優位⇨副腎髄質ホルモン(アドレナリン)分泌⇨末梢血管が収縮⇨組織内での虚血、酸素濃度低下⇨痛覚線維を刺激⇨痛み
といった様な流れになります。

低気温でも
交感神経優位⇨副腎髄質ホルモン(アドレナリン)分泌⇨末梢血管が収縮⇨組織内での虚血、酸素濃度低下⇨冷感受性線維興奮⇨痛み⇦皮膚冷却による冷感受性線維興奮と低気圧と違った経路がある様。

まとめ

慢性疼痛と一言でいっても痛みだけでなく、心理的・身体的な影響が
大きく、発生原因も多種多様、老若男女誰しもが有する可能性がある。

そのためにも痛みの部位だけでなく患者自身の全体像を把握して
色々な面からのアプローチを行うことで快適な日常生活が
送れる様に日々考えて行く必要がある。

【参考文献】
・慢性疼痛治療ガイドラインhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/manseitoutsuu/index.html

・紺野 槇一. 脳内機序に基づく慢性痛の治療.日本麻会誌
 Vol.33 No.5,703-708,2013

・佐藤 純.気象変化による慢性痛悪化のメカニズム.
 日生気誌 40(4):219-224,2003

・牛田 享宏.運動器慢性痛と学際的アプローチ
 理学療法学 第38巻第8号 649-652.(2011年)

・Jochef Hardt他.Prevalence of Chronic Pain in a Representative Sample in the
 United States.
https://academic.oup.com/painmedicine/article/9/7/803/1859615?login=false

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?