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乱反射

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noteで投稿する初小説。殺されて幽霊となった姉と彼女に対して劣等感を抱く妹が事件の真相に迫るヒューマンミステリー。
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2017年11月の記事一覧

乱反射 11.

乱反射 11.

 休日になり、私と姉は犯行現場に向かうことにした。私は事件以来、現場には一度行っていた。その時は血痕が生々しく残っていて、近くには花が供えられていた。姉曰く、あの時は思い出せないくらいトラウマとして残っているらしく、何も思い出さなかった。一定の時間を置いた今なら思い出すかもしれない、そんな姉の提案もあり再び行くことにした。
 犯行現場は駅とは反対方向の場所にある。私は普段通ることが無い道だ。私たち

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乱反射 10.

乱反射 10.

 パンケーキを食べ終わった後、樹梨はトイレに行くと言って席を外した。
「樹梨ちゃんって、私の事件を知ってるの?」
 姉は樹梨が席を外したのを見計らったかのように、私に聞いた。
「知ってるよ」
 私は答えた。姉が殺された翌日、私は樹梨にメールで伝えている。忌引きで三日休むから、と。その時は樹梨から電話がかかってきて、心配してくれた。一緒に受けている講義はノートを取っておくから任せてと言ってくれた。

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乱反射 9.

乱反射 9.

 水曜日の五限の講義は地方自治法の講義だった。私は樹梨と一緒にこの講義を受けている。隣に座っている樹梨は終始眠そうだった。私は樹梨に構わず講義を受けていた。
 講義が終わると、講義室は緊張感から解放された。講義中、終始眠そうにしていた樹梨は大きく背伸びをする。
「終わったあ。もう眠かったよう、美月」
 樹梨は安堵したような声で言い、抱き着いてくる。
「知ってた。ずっと眠そうにしてたもん」
「ねえ、

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