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私の恋はかなわない Version2.0 第2話

登場人物
琴音:今作の主人公であり、信康の正妻。徳川家に嫁ぐとある子に出会う。
徳川信康:江戸幕府の将軍になる若殿。琴音の夫でもある。
幸次:琴音が出会った不思議な子。

前回のあらすじ
信康の元に嫁ぐことになった琴音。唐突に告げられたことにより彼女はまだ心の整理がついていないが、前を向いた。そして、結婚が迫りついにその日を迎えたのであった。

そして次の日の朝。予定通りに信康さまの代理の方がやって来て、私は信康さまの元へとお輿入れすることとなった。
「はぁ~……」
信康さまの元へと向かう馬車の中で、私は大きなため息を吐いていた。
(まさかこんなことになるなんて……。どうしてこうなったのかしら?)

そんなことを考えていると、不意に声をかけられた。
「どうかされましたか?」
「……何でもないわ」
「そうですか。何かあれば遠慮なく仰ってくださいね」
「えぇ、ありがとう」
そう答えながらも、私は再び思考の海の中に沈んだ。そして考えることおよそ半刻程、ようやく私はある結論に至った。
「どうやらこれは神様からの試練みたいね」
「試練、でございますか?」
「えぇ、きっとそうに違いないわ」
でなければおかしいもの。何せあの人があんなにあっさり承諾してくれるはずないもの。ということはつまり、これは私に対する試練ということなのだろう。
ならばここで諦めてしまうのは簡単だけれど、それでは何も変わらないまま終わってしまうだろう。
(そんなのは絶対に嫌!)
だったらやるしかない。例えどんな困難が待ち受けていようとも、必ず乗り越えてみせる! そう決意を固めている間に、目的地に到着したようだ。
(さぁ、ここからが勝負よ!!)
それから私は気持ちを引き締めると、目の前にある扉を見据えながらゆっくりとその中へ足を踏み入れた。
「失礼いたします。琴音でございます」
「おお、来たか。入ってきなさい」
「はい。では失礼致します」
そう言って部屋に入ると、そこには信康さまとその奥方である妙齢の女性、さらに数名の見慣れない人たちがいた。「よく来たね、琴音。とりあえずそこに座りなさい」
「はい。ありがとうございます」
そう言って示された椅子に腰かけると、向かい側に座っている信康さまが口を開いた。
「まずは、大変な中我が家へ嫁いでいただいたことに誠に感謝したい。そして私の正妻としてよろしく頼む」
「こちらこそ不束者ですが、末永く宜しくお願い申し上げます」
すると信康の父が口を開いた。
「うむ、これからは義理とはいえ親子となるわけだし、もっと気軽に接してくれて構わないよ」
「いえ、そういうわけには参りません。仮にも相手は当主様、私がそのような態度を取るわけにはいきません」
「そうか……。まあ無理強いするつもりはないから好きにしてくれて構わんよ」
「はい、ありがとうございます」
「話は変わるが、実は君に会わせたい人がいるんだ」
「そうなのですか?それは一体どなたでしょうか?」
「入っておいで」
すると隣にいた妙齢の女性が立ち上がり、後ろを振り向くと声を上げた。
「ほら、早くしなさい」
「は、はい!」
そう言って姿を現したのは、まだ年端もいかない少年であった。
「……この子はいったいどちらさまですか?」
「この子の名前は幸次。私の弟の子供でね、今年から徳川家の跡取りとして育てることにしたんだよ」
「弟さんの?でも確かご病気で亡くなったと聞いていましたが……」
「あぁ、確かに亡くなったよ。だけどその前に身籠っていたらしくてね、その子を養子に迎えたというわけなんだよ」
「そうなんですか……」
「というわけだから仲良くしてあげてくれ」
「わかりました」
そう返事をしてから改めて少年の方を見ると、彼は緊張しているのかガチガチになっていた。
(ふふっ、可愛いところもあるのね)
そんなことを思っていると、少年は意を決した様子で話し始めた。
「ぼ、僕は徳川幸次と言います。よ、よよ、よろしくお願いします!!」
「はい、私は琴音といいます。こちらこそよろしくね」
「は、はい!よ、よろしくお願いします!!」
「そんなに固くならないでいいわよ。それに、私はあなたより少しだけお姉さんなんだから、あまり畏まらないで欲しいかな?」
「えっと、その、はい。わ、分かりまし……分かったよ」
「うん、それでよし!それじゃあせっかくの機会だから、一緒に遊んでみましょうか」
「え!?で、でも僕なんかが……」
「大丈夫、きっと楽しいと思うから。ね?」
「う、うん。わかった……」
「なら決まりね。じゃあいきましょうか」
そうして私は彼を連れて外に出るのだった。
(やっぱりここは綺麗ね)
庭に出て真っ先に目に飛び込んできたのは、咲き誇った桜の花々だった。
(そういえば、もうすぐ満開になるって聞いた気がするけど……)
そんなことを考えていると、不意に声をかけられた。
「あの~……。琴音……さん」
「どうしたの?」
「えっと……。そ、その、手を繋いでもいいですか?」
「ええ、もちろん」
そう答えながら手を差し出すと、彼は恐る恐るという感じに私の手を握ってきた。
「これでいいかしら?」
「う、うん。ありがとう」
「琴音さんはすごく優しいんだね。初めて会ったばかりの僕とこんなに仲良くしてくれるんだもん。」
「そんなことないわよ。ただ単に私がそうしたかっただけだもの」
「それでもだよ。普通はみんな僕のことを避けるんだ。なのに琴音さんは全然違うんだもの。」
「そうなの?どうして?」
「だって、今までの人たちは皆父上の命令だったり、家の格や血筋のためにしか接してくれなかったから……。でも琴音さんは違った。僕自身を見てくれた。それが嬉しかったんだ」
琴音は自分の家族を思い浮かべて、幸次と昔の私は同じような気持ちでいたんだなあと感じた。
そして琴音はこう答えた。
「そうなんだ。実はね...私もあなたと同じようなことを自分の家族に対しておもっていたことがあるの。」と、
                       to be continued…


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