マガジンのカバー画像

ミステリー小説『犯人はヤス、』

51
私が今までに出会ってきた方たちをモデルに、実際の透視能力を盛り込んだ、一風変わったミステリー小説です。 警察の日常や宗教、事件、神社などが混ざり合い、沢山の伏線の中、主人公の悟や… もっと読む
運営しているクリエイター

記事一覧

犯人はヤス、-終焉-|あとがき|神話

犯人はヤス、-終焉-|あとがき|神話

この度は、ミステリー小説『犯人はヤス、-終焉-』を読んでいただきありがとうございました。

『犯人はヤス、-終焉-』も、前作『犯人はヤス、』同様、スマホ一台で書き下ろした作品です。

この小説は、私が、『神話ミステリー』に挑戦した作品でもあります。

『犯人はヤス、』
『犯人はヤス、-終焉-』

シリーズを通じて、日本に伝わる神話『日本神話』の要素を、随所に散りばめています。


日本という国が

もっとみる
犯人はヤス、-終焉-|最終話|天眼

犯人はヤス、-終焉-|最終話|天眼

サヤの悲鳴も虚しく、悟と安は、神楽の舞台から落ちていく。

4階建て相当の高さから、落下する二人。

ほんの数秒間、走馬灯のように、今までの安の人生が映し出される。


安には、隠された能力があった。

それは、幼い頃から。

能力があることをひた隠しにしながら、普通の生活を送っていた安。

そんな彼に、転機が訪れた。

それが、ミノとの出会い。

彼女が、自分に能力があることをカミングアウトし

もっとみる
犯人はヤス、-終焉-|第19話|終焉

犯人はヤス、-終焉-|第19話|終焉

5年前の春留神社祭り。

この祭りにすべての意味が込められていた。

春留神社は、元々神が祀られていた場所ではなく、闇神が封じられていた場所。

それが時代とともに風化し、闇神を隠すようになっていった。

その過程で生まれたのが、春留神社祭りだった。

文屋長官が持つ古文書では、春留神社祭りで神輿に乗せられた者が、未来の創造主となる定め。

二柱の神さまが神輿に担がれ、どちらかが真の創造主になる

もっとみる
犯人はヤス、-終焉-|第18話|炎舞

犯人はヤス、-終焉-|第18話|炎舞

神楽の中では、炎が次々と襲い掛かってくる。

その炎の中を迷うことなく走り抜ける安。

安の後を追う悟。

今、救えるのは、母親かサヤのどちらか。

離れた神楽にいる二人を助け出すためには、安と悟がそれぞれ、別の神楽を選択するしかなかった。

降りかかる炎をものともせず、階段を駆け上がっていく安。

悟は、安を見失った。

安が向かった方向を探るために、建屋の周りを見渡すが、炎に視界を遮られており

もっとみる
犯人はヤス、-終焉-|第17話|神楽

犯人はヤス、-終焉-|第17話|神楽

鎌倉時代から続いていた、都を移す歴史。

平安京へ都を移した年は、三人の能力者が生まれた年でもあった。

古代につくられた都は、いずれも短命。

平安京が長く続いた要因は、この三人の能力者にあるといわれている。


松明で囲まれた広い庭。

そこに、二つの神楽の舞台が、左右対称に建てられている。

4階建て相当の木製の高床式神楽が二つ。

左の神楽には『伊弉諾』、右の神楽には『天照』の文字があし

もっとみる
犯人はヤス、-終焉-|第16話|畏敬

犯人はヤス、-終焉-|第16話|畏敬

荒れ狂う世界。

全てが、文屋長官の思い通りに進もうとしていた。

反転した世界。

それは、単なる化学テロではない。

神が、人間に託した世界。

この世界が、ずっと続く事など、最初から神は求めていない。


神の意思を能力者たちが読み解き、記述にしたのが、三つの書『古文書』『古事記』『巻物』。

これらは、それぞれ別の人間が読み解いた書物である。

神の意思とはいえ、これらの書に書かれている

もっとみる
犯人はヤス、-終焉-|第15話|閃き

犯人はヤス、-終焉-|第15話|閃き

「意味が繋がるように、文字起こし出来たな」

「それにしてもこの文章……どう読んでも、日本神話と変わらない気がしますが……」

「いや、何かあるはずなんだ、何かが……」

古谷警部と蓮による、古谷家から安が持ち出した巻物の解読が終わった。

「まぁ、ここからが本番だ。古谷家の巻物に書かれている神話と三輪家に伝わる古文書、この二つの内容と、現在までに起きた出来事を照らし合わせなければならない。文屋家

もっとみる
犯人はヤス、-終焉-|第14話|囮り

犯人はヤス、-終焉-|第14話|囮り

銃声が鳴った。

悟が振り返ると、フードの男がうつ伏せの状態で倒れていた。

「安!!!!」

フードの中から、安の顔が見えた。

警察官たちへ発砲しながら、安のもとへ向かう。

すると、一台のパトカーが歩道橋から現れた。

銃を構える悟。

「悟! 俺だ! 乗れ!」

運転席から顔を出しているのは、連だった。

理解が追い付かず、銃を向けたまま動かない悟。その目からは、薄っすら涙が流れていた。

もっとみる
犯人はヤス、-終焉-|第13話|攻防

犯人はヤス、-終焉-|第13話|攻防

(安を助けるためには、サヤを信じて飛び移るしかない)

二人の警察官に拳銃を突きつけたまま、悟は意を決して、隣のアパートへ飛び移った。

着地してすぐ、警察官に近寄る。

すると、煙幕が投下され、悟は煙に包まれた。

視界を奪われた悟は、しゃがみ込みながら、煙の外に逃げる。

足音が聞こえる方向へ走る悟。

一人は、すでに屋上から降りていた。

もう一人は、ちょうど降りようとしているところだった。

もっとみる
犯人はヤス、-終焉-|第12話|紅涙

犯人はヤス、-終焉-|第12話|紅涙

スクリーンに、三輪家に伝わる古文書が映し出された。

綴り字で書かれている。

ただ、虫に食われているのか、所々穴が空いており、その部分は何が書いてあるか分からない。

[二十三ノ神柱が現れ表裏が変革する日……]

[……三つの透視が重なり合い一つの神へと新たに宿される]

所々空白があるいくつかの古文書。

この古文書が、三輪家に伝わる予言書の大元となる書物であった。


「文屋長官が来られま

もっとみる
犯人はヤス、-終焉-|第11話|絡繰

犯人はヤス、-終焉-|第11話|絡繰

「みんな、協力してくれ! 赤と橋本は、思考テロの解析を頼む。さおりさんは、三家の秘密を探ってくれ」

「分かりました。管理人を使い、保管庫にある書物を調査します」

「蓮は、安が持っていった古谷家の巻物の在処をつかんでほしい」

タバコに火をつける蓮。

「最後に悟、お前は安を捕まえろ。それから、俺たちと合流だ。いいな」

「……」

「返事!」

「は、はい! 分かりました」

的確な采配を瞬時

もっとみる
犯人はヤス、-終焉-|第10話|真相

犯人はヤス、-終焉-|第10話|真相

「私はお邪魔ね。飲み物でも準備してくるから、みんなで話して」

ママが遠慮して席を外し、キッチンへ向かう。

チームのメンバーとサヤによる秘密の会議が始まった。

「サヤ、君は何を今まで見てきたのか、どこにいたのか、出来るだけ詳しく話してほしい。これから、みんなの意見も踏まえて、今後どうしていくべきか話し合いたい。まずは、5年前のあの日、何があったんだ?」

5年前の事件について、サヤが話し始めた

もっとみる
犯人はヤス、-終焉-|第9話|集結

犯人はヤス、-終焉-|第9話|集結

「蓮さん、生きてたんですね!」

「お前らこそ! ママ、迷惑かけてすまない」

「ホントよ! あとで、きっちり請求するから」

助手席には、地味な服装をした女性が座っている。その女性が振り返り、鋭い目線で悟を睨みつける。

「三輪警部補! よかった。無事だったんですね」

「当たり前だ。私としたことが……5年も記憶を失っていたとは……情けない」

ショックを隠しきれない三輪警部補。

「三輪警部補

もっとみる
犯人はヤス、-終焉-|第8話|喪失

犯人はヤス、-終焉-|第8話|喪失

サヤは、安を誘導しながら秘密を探り、悟にも同じ道を誘導していた。

春留神社の床下にメダルを置き、名港水族館の裏口に侵入。そこから、安に指示を出すために、電車に忍ばせていたスマホに電話。

しかし、安がスマホを手にする前に、電車は脱線。安を、安全に逃がすために、電光掲示板を操作したのだ。

そして、地下水路から悟が来るのを予知していたサヤは、はしごにメダルを置き、パトカーをあらかじめ準備。ナビを操

もっとみる