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独り言多めの読書感想文、マンガver( 浅野いにおさん『ソラニン』)



いにおはきっと、自分が生み出したはずの作品「ソラニン」が嫌いで、その理由は作中に歌詞として出てきていて。本当は自分が伝えたい音ではないのに、売るための作品を世に放った。結果不本意な注目のされ方に、けれど事実その作品によって生かされる現実に嫌気がさした、というよりは溜まりに溜まった鬱憤を晴らすべく出したのが「零落」なのだろうと勝手に受け取っている。


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自作にその名前を拝借するほど同作者のファンである私は、おこがましくとも10年以上前から呼び捨てで彼を書き綴っている。故に、不快に思われる方もいると思うが、愛情表現の一種なのだと寛大な心でご容赦いただきたい。この距離感だからこそ書けることがあるのだ。とはいえ奥さんに怒られたら即修正する所存。あ、「先生の白い嘘」も好きです。



いにおはきっと、自分が生み出したはずの「ソラニン」が嫌いで、けれども私が「ソラニン」を愛し続けていることもまた確か。青年期の悩みや葛藤。分母の多い共感は、それぞれ個々の経験に置き換えられ、昇華されゆく(独り言多めの読書感想文、朝井リョウさん『少女は卒業しない』参照)結局本棚に残るのは血の行き交う作品群であり、主張が強すぎたり、深すぎたり、エッジがきき過ぎたりするとそれだけ読み手を絞ってしまう。それでもこだわりたかったんだろう。


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「おやすみプンプン」や「うみべの女の子」はそれはそれで好きだし、「ひかりのまち」も「虹ヶ原ホログラム」もいいと思う。けれどやっぱり「ソラニン」に代えはきかない。第一印象。私にとってのいにおはずっと「ソラニン」だ。私は


「ソラニン」を読んで、自殺した友人を生かせることを知った。自分の筆で、自分勝手に、自分の解釈で、その時を書き留める。

標本。最も大切な大学4年間を最も傍で過ごし最も話をしてきた生き証人、その袖を、死して尚引くことができる。与えて、奪ったその半身。それを私には書き残せる手がある。目がある。頭がある。伝わらなくても伝えたいと思う意思がある。好きだと声高に叫べる喉がある。それを教えてくれたのは他の誰でもない、いにおであり「ソラニン」だ。

「零落」の帯に書かれた「浅野いにおの時代が終わる」の文言。終わらない。私の中で終わることはない。この物語は現在進行形で続いている。何年経とうと色褪せない。そんな作品に出会えたこと、心から幸せに思う。


語りが過ぎた。いい加減題名を「独り言多めの」ではなく「ほぼ独り言の」に変えなければいけない。毎度長々とお付き合いありがとうございます。本日一本めからお付き合いいただいた方、重ねて御礼申し上げます。


それでは、良い読書ライフを。






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