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1話 「鶴喰米」誕生秘話 〜消滅の危機に迫る集落の美味しいお米ができるまで〜

熊本県八代市坂本町鶴喰。

県南の球磨川流域にあるこの集落は、四方を山で囲まれており、四季折々の姿を見せ、日本の里山の原風景とも言える文化が色濃く残る地域です。

歴史は奈良時代からと古いものの、現在は鶴見城(上鶴城)があったという場所のみがその名残を伝えています。

高度成長期の昭和30年代の鶴喰地区は170戸で住民700人程の集落で、戦後の旺盛な食糧需要の下、山の中腹まで開墾された田んぼでも稲作が行われ、耕作面積は30ha(東京ドーム約6.4個分)程でした。

■ 集落の生き残りをかけ、
農業組合法人「鶴喰なの花村」設立

しかし、時は流れ、昭和が終わり、平成も20年を過ぎると、それ以前から直面していた過疎化・高齢化という問題がいよいよ深刻化。

平成も終わりに近づくと人口は70戸150人程度まで減少。

往時30ha程あった圃場は半減し、耕作放棄地も増えはじめ、現在では消滅の危機に迫る限界集落となっています。

このような状況を背景に、平成29年2月28日、農事組合法人「鶴喰なの花村」が、38戸の組合員で設立されました。

■ 農事組合法人をつくる意味

鶴喰地区における「鶴喰なの花村」の設立は画期的なことでした。

単に農作物を生産するだけでなく、農業を通じて、地域をコミュニティーとして維持することができ、脈々と受け継がれてきた土地と文化を継承する機能ができるからです。

さらに、鶴喰地区には昔から住民が一致団結する文化があります。

したがって、各農家で成り立たせてきたこの機能を過疎化・高齢化の流れを受け、集落営農団体が担うことは自然な流れでした。

こうして生まれた「鶴喰なの花村」は、営利団体である以上、農作物を生産し、販売して利益を生み出さなければなりません。

利益を生み出せば営利団体としての存続のみならず、この地で雇用を創出し経済基盤を作ることで集落の存続にも繋ります。

つまり、農業組合法人を設立することで、消滅の途を辿るこの集落を未来へ繋ぎ、私たちの大切な故郷を守ることができるのです。

■ 消滅の危機に迫る集落の未来を担う「鶴喰米」

では、具体的にどのようにして故郷を守っていくのか?

鶴喰には“お米”がありました。

蛇紋岩層の水と菜の花を緑肥にして育てていた鶴喰の米は、以前より“美味しい”と知られていましたが、JAへの供出や各農家の縁故米で消化され、
“鶴喰のお米”として一般市場で流通する事はありませんでした。

そんな中、幸運なことに「鶴喰なの花村」の設立と並行して農林水産省の交付金を基にした坂本地域山村活性化協議会が、立ち上がったのです。

坂本地域山村活性化協議会「ブランド米確立部門」でお米をブランド化


この事業で組織された「ブランド米確立部門」は、鶴喰農家の経験と熊本県の米栽培技術が融合する場となり、鶴喰米の栽培方法が確立されました。

「ブランド米確立部門」では、熊本県八代農業普及・指導課、八代市農林水産政策課、JAやつしろ、および「鶴喰なの花村」の4者が、6回にわたる会議と現地検討会を実施し、以下の6項目を決定しました。

1.鶴喰の恵まれた気候、土壌、水系を活かし、消費者に安全・安心で美味しいお米を届けるため、土作りを基本とした減化学肥料と化学農薬の削減に取り組むことを基本方針とする。

2.秋の収穫終了後、菜の花とレンゲの種をまき、翌年4月に緑肥としてすき込む。また、菜の花とレンゲを景観作物、およびミツバチの蜜源として活用することで、鶴喰なの花村は、自然環境と共生する稲作を展開しているとのイメージづくりに繋げる。

3.栽培品種を、熊本県水稲奨励品種である「くまさんの力」とする。

4.以下の栽培スケジュールとする。
4月下旬:種まき、
5月下旬:6月上旬にかけて元肥散布、田植え、除草作業
7月中旬:下旬にかけて中干し
8月上旬:追肥と1回目の防除
8月中旬〜下旬:出穂期に2回目の防除、さらに必要であれば3回目の防除
9月下旬〜10月上旬;収穫

5.肥料については、緑肥作物のすき込みの前に土壌診断を行い、緑肥作物の生育量を勘案して、堆肥および土壌改良剤を施す。また、八代地域の標準的窒素施用量と比較して、その1/2以上を有機質由来窒素成分を含む有機肥料を使用する。これは、「特別栽培米」の要件の一つ。

6.病害虫防除は、化学合成農薬と除草剤の使用成分数を、八代地域標準の1/2以下に低減できる農薬使用計画を組む。これも、「特別栽培米」の要件の一つ。

鶴喰米は、鶴喰なの花村単独の力ではなく、
熊本県・八代市・JAの協力を受けて、その栽培方法が確立したのです。

■ 「熊本県推奨うまい米基準」Sランク
「日本穀物検定協会」食味ランキング「特A」を獲得

このようにして誕生した鶴喰米は、「熊本県推奨うまい米基準」のトップクラスであるSランクの認定を受け、さらに、令和2年産米は、日本穀物検定協会の食味ランキングで「特A」の評価を獲得する事に繋がりました。

「鶴喰の美味しいお米」は口コミの評価だけでなく、お米のランクを具体的に評価する登録検査機関でも証明された名実ともに美味しいお米となったのです。

「鶴喰米」が、参画した熊本の発展を願う4者の協同作品であることを、私たちは誇りに思うとともに、先祖代々受け継がれてきたこの地で作る鶴喰米で、私たちの大切な故郷の未来へバトンを繋げていきたい所存であります。

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