本とその不確かな表紙7.
拝啓 村上春樹様
もはや旅の勾配は
下りの斜面に入っております
見渡す限りの緑野であります
半世紀前の手術で生かされた心臓の
細く速い脈を聞きながら
残りのキャンバスを数えている私です
そうだ
もう一度あの街に帰っておこう
物語の集う市
川が吸い込まれる暗渠の都市ヘ
自身の最終章に取りかかる前に
顔を無くしてしまった青春の友達に会いにゆこう
そのように思う5月です
それでは
夢と永遠と霊に至る街に入ります
門よ
開きたまえ
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