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北九州戦レビュー~危機の中で見せたチーム力~

出番に恵まれていなかった選手たちが躍動!

私事ながら1週間半ぶりのnote。群馬戦がかなり遠くのことなのではないかと感じるほど濃密なGW(ほぼ仕事)を過ごしてしまっているが、山雅的にはいい意味で充実のGWのスタートとなっている。

前節の勝利で最下位から脱出してミクスタに乗り込んだ試合。このゲームの相手・北九州はそれに代わって最下位に転落したチームであり、お気持ち表明済みの山雅のように、並々ならぬ危機感を持っていたのは相手も同様だったはず。「一寸先は闇」という言葉を某元監督が度々残してくれたように他会場次第の結果次第では再び最下位もありえるようなシチュエーションだったが見事に勝ち点3を持ち帰ることができた。

特にこの勝利でポジティブだったのは"これまであまり出番のなかった選手の台頭"が見られたこと。台頭と言っても横山以外はJ2以上で実績のある選手ばかりで、「実力が開花した」というよりは「本来の姿を見せつつある」という方が正しいかもしれないが、それだけ例年と比べても戦力の厚みがあるチームだと言っていいだろう。

そんな新たな顔を見せた試合を改めて振り返っていきたいと思う。

~勝手にチームMVP~

MVP:鈴木国友
古巣相手に無慈悲なほどに豪快な決勝点。振り切り方・シュートコースが完全に乗ってる選手のそれ。相手を知っているという点でも山雅にかなりのアドバンテージを与えてくれた。

次点:河合秀人、前貴之、浜崎拓磨
河合→鈴木と共にもはやこのコーナーの常連。その分、期待値も高くなっていくが、あれだけのタスクをこなして点まで取ったら入れないわけにはいかない笑
前→完全に影のMVP。佐藤和・米原が欠場となり、かなり急な1DH起用になったはずだが、いい意味で佐藤のようにやろうとしなかったのが彼の良さであり、勝因となったと思う。
浜崎→70分間の出場だったが、最多パス数を記録。前向きなプレーが多かったのも好印象。クロスやセットプレーでも違いを見せており、新たな武器をもたらしてくれそう。

~戦評~

■敵を欺くのは偶然の産物だったりする

1週間の感覚はあったものの、久々の勝利となった群馬戦後とあってメンバーの変更は最低限と予想されていた今節。メンバー表を見た時には明らかな"違和感"を感じたサポがほとんどだっただろう。

キャプテン佐藤が不在で代わりに横山。メンバー変更はここのみだったとはいえ、明らかにポジションもタスクも代用できないような入れ替え。ベンチにすらその姿はなかったので戦術的な理由ではないことはサポからも察せられるような変更点だった。

(代役として)米原の起用を想定していましたが、昨日、一昨日あたりから調子が悪くて使えませんでした。ダブルボランチを組める状態にはなかったです。<略>そういう意味では怪我の功名ではないですが、ダブルボランチではなく1枚のほうが良いのかなということで、対応しました

と、(少なくとも柴田監督の構想内では)ボランチが1枚しか計算できないということで3421ではなく1DHの352に変更したとのこと。

しかし、コメントにもあるような「怪我の功名」がここで起こる。442の北九州はうまく守備でハメる形を見つけるまでに苦労した。相手選手のコメントからもハイプレスでいくのか、セットするのか、という統一ができた時間とできなかった時間があったと明言されているように序盤は山雅のほうがやることが明確化され、主導権を握ることに成功する。

■狙いがハマった攻撃の形

そんな偶然もあって、相手のスカウティングを外すことに成功した前半。今年は主に2つのフォーメーションを使い分けているので、352のデータも当然相手にあったはずだが、この日の山雅は横山や浜崎を中心にいつもとは違う組み立てを見せる。

今年のほとんどの試合はWBに高い位置を取らせるためにCBが幅を取り(十分取れてるかは置いといて)、DHの一枚が下がって経由しつつ、HVが出し手となるケースが多かった。

想定 (2)

⇧その想定に対して北九州の守備は下りてくるアンカー役を2トップが監視。もう1枚はDHがマンマーク。WBには恐らくSBがついていくというルールのもと、プレスをかけにいくプランを用意。HVに入ったところでハメられる想定だったように見えた。

が、この日の山雅は352。さらに前はサリーダ(DHの1枚が最終ラインに下りる形)のために下りて行かず、代わりに浜崎が低めの位置を取ってゲームメイク

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前からハメにいっていた北九州は、WB(浜崎)にSBがつくルールのもとで試合に入っていたため、移動距離が長くなりすぎてハメきることができず。SHがマークに行くと鈴木や河合のコースが空くのでプレスに行くとしてもパスが出てからという形が続いた。

さらに前線に目を移すと、山雅の2トップ2シャドーに対して北九州は1アンカー2CB状態。ボールサイドの選手は阪野や鈴木についていくことになるので横山or河合が右サイドの裏に流れてきたときに数的に対応しきれなかった。

横山が「相手のディフェンスラインがあまりそろっていないとわかっていた」とコメントを残しているが、相手のCB目線に立つとラインを揃えるには下りていく阪野を捨てる必要があるので「2CBでラインを揃える(阪野は無視)」or「阪野に1枚はついていく(ラインは揃わない)」の2択を迫られることとなったので修正されるまでは難しい選択だったと思う。

そうでなくとも河合・国友は相手DFも1人で潰し切れていなかったため、先制点を取られるのは時間の問題。むしろ、今後のことを考えるとここで2点3点とリードしておくべきだと思うくらい優位には立てていた。

■河合に自由を与えた時点で勝負あり

こうして生まれた先制点は狙っていた右サイド(北九州の左サイド)で横山が起点を作り、浜崎→河合からの関係でのゴール。

崩し

局面だけ見れば六平の対応ミスのようにも見えるが、先に書いたようにSBは浜崎に釣りだされ、村松が横山に競り負けた時点でDFライン間は大きく空いてしまっていた。

加えてマークも鈴木は六平が、河合が針谷がついていたはずだが、河合が右サイドに流れたことで1vs2に。六平が2人見なければいけない状況になっていた。

これまでの試合でもJ1で通用するのでは?と思うような瞬間的なスピードとテクニックを持っていた河合をフリーにし、後追い対応になってしまった/後追いにさせた時点で勝負ありだったように思う。

■ハマらないプランB

そして、後半は横山→表原に変更。守備・疲労面と(ヒートマップからも分かるように)右の深い位置狙いを1人だけ徹底していたことによる周りの負担を考えた時に、他のプレーの総合的な貢献度は表原の方が上と見て交代に踏み切ったと思われる。

しかし、これで上手く回らなくなることもあるのがサッカーの難しいところ。浜崎とともにキーマンとなっていた横山、そして中盤でフィジカル無双していた鈴木が前線に回ったことで、一度押し込まれるとなかなか前半のように打開できない。守備では奮闘の見られた表原だったがアンカー・前の両脇を埋めるには適した選手だが、本来のイケイケな攻撃的な姿勢を犠牲にしてしまったのは少し気がかりではあった。

そして、69分にはまだフルタイムは難しいワイドの浜崎→田中パに変更。その直後の失点はややぎこちなさもあってか、中の選手に任せておいて良かったところで中を気にしすぎて遅れてしまった感はあるが、このあたりは試合に出ながら学んでいくしかないのかもしれない。ポストに当たった直後の下川・外山の寄せられなさもあってついに瓦解してしまうこととなった。

■劣勢を跳ね返した主役級の伏兵たち

ここから北九州は2トップを変更し、狩土名・前川を投入。4411気味になり、DFを引っ張る狩土名、そこで出来たスペースを使い、アンカーを混乱させる前川と役割を明確にする。ここを勝負所とみて一気に畳みかけてくるところはさすがの勝負師。

失点後 (2)

山雅側はそれまでも表原・河合と潰し切れないシーンが続いたが、これにより前の負担はさらに増加。そして、攻撃では田中パにシンプルにボールを預け、右から侵入を試みるもこの個人技頼りになっていたというのが正直なところで得点の匂いという点では北九州が上回る。

さすがにやばいと感じたのか、ここで柴田監督も戸島・小手川を投入。守備の噛み合わせを考えてサイドが厚く、2DHの3421にシステムを変更。

この交代により、守備では小手川が安定をもたらし、攻撃では1stターゲットを戸島に定めたことが直接的に決勝点へと繋がる。ワンチャンスを仕留めた鈴木の決定力ありきだが、何とか北九州の勢いを食い止めたこの采配が勝利に結びついた。

小手川は攻撃に特徴のある選手ですが、サッカー感がしっかりとしていて、DFに関してもこの状況でできない選手ではないと確信していました。戸島は怪我も多く、前線で体を張るプレーが出せていなかったですし、復帰して1週間。その中でも2人が大きな仕事をしてくれたと感じます

エンジェル戸島はさることながらあまり目立っていないように見えた小手川も、本来の持ち味ではないものの、個人に着目して見ると弱点を消す守備を卒なくこなしており、的確な仕事ぶりで指揮官にアピールをしてみせた。

ルカオ、山口の故障だけではなく、急遽欠場となった佐藤和や田中隼、平川などキャンプから主力として活躍していた選手が不在の中で、これまで怪我で出遅れていた浜崎、決勝点をお膳立てした戸島、ドリブルで相手のDFを押し下げた田中パ、ベテランの仕事ができる小手川とJ2で経験豊富な選手たちが途中から出てくるのは何とも贅沢。ここではあえて伏兵という表現を使ったが、次の試合で定位置を掴み、主役となっていてもなんら不思議ではない選手たちである。

選手の頑張りはお互いあったと思うので(言い方は悪いが)札束で殴るかのような層の厚さ、質の差が最後は勝負を分けた。

■逆天王山ラストマッチは連勝ストッパー

そして、早くも水曜日にはホームで昇格組のSC相模原を迎える。前節で降格圏19位に沈んでいるとはいえ、敗戦は京都・金沢・磐田・甲府・琉球といずれも上位チーム。資金力は大きな差があるにも関わらず今年うまくいってない千葉や大宮のようなチームにはきっちりと勝っている。

さらに開幕から無傷の5連勝中だった首位・新潟、3連勝中だった栃木を下したことで連勝ストッパーと呼ばれたことも。

幸か不幸か山雅も前節で初の連勝を記録。ストッパーの餌食になることなく、きっちりと勝ち切りたいところ。ここで負ければ再び降格争い、勝てば1桁順位も見えてくる。逆天王山4連戦で4連勝で弾みをとはいかなかったが、せめて勝ち点9を取り、勝ち点2ペース超えで乗り切ることで今後に弾みをつけたい。

END

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