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北九州戦レビュー~意識のズレはなぜ生まれるのか~

3連敗。大きかった「小さな差」

今節も悪い流れを止めることはできなかった。3連戦の最終戦となったホーム・北九州戦。前半は特に相手のやりたいことをほぼさせずいい時間帯もあったが、後半の悪い流れの時間帯で決壊してしまい失点。さらに追加点も与えた後にCKのこぼれ球から一矢報いたが万事休す。

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相手以上に思い通りにゲームプランを遂行している中でもなかなか先制点が取れない。それはゴール前の決定力であって、守備の勝負強さであって、メンタル的な部分であって……そういう1つ1つの小さい差が大きな差となって表れた試合になったと思う。

ただ、町田戦に比べるとポジティブな面もある。「批判」や「改善点」だけではなく「良かった点」も整理しつつ、次の戦いに向かいたい。

~素人採点~

■松本

圍 6.0
今日の戦術は間違いなく圍のキックも踏まえてのものだろう。ここ3試合ではベストプレイヤー候補。

乾 5.0
保持時に危なっかしいプレーもあったが守備はまずまず。森下のアクシデントにより中央に入った際には少しずるずるとラインを下げてしまった点が気になった。

森下 6.0
落ち着いたプレーと高めのライン統率で要所を締める。失点時に交代となったが怪我するまでは無失点で抑えていた。

浦田 5.5
攻め上がりや渋い守備など持ち味は存分に出した。ただ2失点目はそれとは別で、ミスはミス。自身が一番悔いている様子だったが簡単に点を取られてしまった。

田中隼 5.5
エネルギッシュな動き、果敢なプレスでチームに活気を与える。厳しい時期ではあるが、最年長のその姿勢に引っ張られる選手が少ない。

山本龍 5.5
動きなおす相手についていけていない場面もあったがここまでなかなか見れなかったアシスト級の鋭いクロスを見せるなど期待の持てる内容。実践のスピード感に早く慣れたい。

藤田 5.0
やはり行動範囲はいつもより狭くなっている。彼にしかできないようなボール奪取や賢い縦パスなどがなかなか出てこない。噂の前加入で負担を減らせるか。

久保田 5.5
前半のゾーン守備、90分のゲーム体力など課題は徐々に改善されてきていることを示す。サブのほうが輝くが本人の成長はスタメンの方がありそう。

鈴木 5.5
ショートカウンターのスイッチ役。ただいつものプレーを基準とするなら少し低調。どこか力の入りすぎたプレーが見受けられた。

高木彰 5.0
動き出しの早さや守備時の細かいポジション修正はグッド。攻撃の選手として怖さを出すにはこぼれ球でも再現性の低いものでもまずは得点を取って楽になりたい。

阪野 5.5
献身性や裏への動きは効果的で、現状「1番手」なのは証明してきている。だからこそそろそろ得点を決めたい。山本龍からのクロスはまさしく彼の形だったはずだが…。

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(途中出場)
大野 5.5
森下の負傷から緊急出場。機動力を生かしたカットや攻め上がりもあったがレギュラー奪取にはもう一回り成長が欲しい。

吉田 5.5
まだ体のキレは戻ってない印象。チャンスはあるので状態をあげていきたい。

服部 5.0
彼自身が悪いわけではないがシンプルな放り込みはやはり効果的とはいえない。

中美 6.0
山雅初ゴールとなるゴラッソ。試合を通しても自身の3年間を通しても「それを決めるか」というゴールだったが、今必要なのは前向きになれるような成功体験。

アウグスト 6.0
初出場、わずかな出場時間にしては十分なインパクト。ボランチとして計算できるのか?していたのか?は少々疑問……。

■北九州

何度も書くように自分たちの得意とするサッカーは抑えられ、セットプレーは得意としていないにも関わらず、そこから得点したのはチームとしての勢い、FWの活気の良さが大きい。終盤の粘り強さ、1点差になった途端に時間稼ぎにくるあたりも小林伸監督のチームらしい。

~戦評~

■高水準だった前半の戦い方

まずはかなり相手を意識して仕込んできた前半の守備→攻撃について。

これまで中の守備を締めにかかっているにも関わらず、中に通されるということが多かった中、特に前線の3枚はかなり相手のやりたいことを制限できていた。相手ボランチについていくのではなく、本来降りてきて使いたいスペースを先に消して、ボールの流れを遮断。CBが幅を使えず、SBも高い位置を取れないという時間が多かった。

北九州戦守備

そこでボランチからボールを奪って、相手のCB3枚とこちらの前線3枚で数的同数のチャンスを作ることを1番の狙いとしていたが、残念だったのはそのシチュエーションをあまり作れなかったこと。

そして、ボール保持時は前から取りに来る相手の守備を逆手に取り、サイドの裏にシンプルに入れることを狙っていたが、そこも精度が足りないシーンがしばしば。

プレビューに書いたような圧縮守備&シンプルなサイド裏を突く攻撃に近いゲームプランだったのでそこについては賛同するが、それ一辺倒にならないようにするのは中の選手の判断や精度。

そこから2次攻撃、3次攻撃と続けられなければ再び守備の時間になる。単発攻撃で終わりがちだったのが、シュート数の差につながった。

■「失点するとバラバラになる」背景

圍の『何をするという一貫性がない』『途中でバラバラになっている』という指摘。なかなか強烈で、サポも不安を感じるようなコメントである。

確かに見だしを見た時はぞっとした。しかし、コメントにはこうもある。

『前半は自分たちのやりたい守備ができていたが、セットプレーで失点してからはズルズルと崩れていった』『こういうシチュエーションは1年間を長い目で見たときに必ずあること』『もっともっと積み重ねる練習や試合をしていきたい』と。ここまでセットにすると不満や批判ではなく、現状の分析と前向きなコメントであることが分かる。

海外でもチーム状況が悪い時期に一部分だけが切り取られ、ネガティブな発言や批判と取れれることも多いが、それに似た現象が起こっていて発信した圍としても不本意な広がり方だったかもしれない。

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ただ、ピッチでサッカーとして体現する上でやりたいことがバラバラになっているというのも本心であり、ピッチの外からも分かる事実

失点したらバラバラになるというのは「先制点」というのがキーワードになったあたりからなはず。先制された愛媛戦、追いついた甲府戦あたりまではどこか自信があって「90分通して勝っていればいい」というほどの堂々とした戦いっぷりだった。これはチームの成熟度というよりはチーム状況の問題だろう。

そこからメンバーをローテーションしだした水戸戦あたりからは先制されるとプレーに動揺が見える。「絶対に先制されない」というゲームプランが裏目にでて、その結果、前に行きたい選手とゲームプランを遂行したい選手の"意識のずれ"が生じる

これはチームの不協和音ではなく、圍の言うような「(チームを作っていくうえで)必ずあること」「練習や実戦を重ね、選手間や監督との擦り合わせで解決できること」である。

これを解決するにはある程度長い目で見るか「先制点」の課題を乗り越えるかしかない。自分も「バラバラ」という言葉に悲観的な印象を受けたが、その原因と解決策を考えていくと「必要なプロセス」として受け入れることにする。

(ただし布監督による修正や選手同士の意思疎通も早いに越したことはない。)

■「服部大作戦」で致命的なのは……

さて、試合の話に戻ると「FW服部」によるパワープレーが今季よく行われているがここについても改善が必要なのは目に見えている

ジャエルやイズマがいない今、FW服部投入自体は妥当な1手。榎本に信頼を勝ち取ってもらいたい気持ちもあるが、フラットにみると服部が優先されるだろう。ここは編成上少し問題があったように感じる

ただ今はそう言っていても仕方がない。服部を使うことにより、FWの活動量の維持に加え、チームとして明確な狙うポイントができるが、今現在はそこに問題がある。

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前提として服部をシンプルに使うのは狙いの1つではあるが必ずしも「約束事」ではない。その証拠に中美はボールを散らそうとしていたし、サイドも幅を取ろうとする動きを取っていた。監督としても服部を生かそうとしながらそういうプレーを求めているのは明白だろう。

この状況に応じたプレー選択に「簡単に入れたい服部と後ろの選手」と「自分たちを経由してほしい他の前線の選手」の意識のずれがある。どちらが正解ということもないが、今節のように早めに投入された時は特に服部一辺倒は無理がある。これは中の選手たちの判断になってくるが、個人的にはそれまで通り、繋げるところは繋ぐという勇気とチャレンジを求めたい。

■諸刃でもしっかりと剣になりそうなアウグスト

交代でこの試合でインパクトを残したのは80分に投入された二人。1人目はアウグスト。言語の問題が心配だったが、パス回しなどでも技術の高さを見せ、クロスも要求通りマイナスに供給。前評判通り、推進力やシュートへの積極性も見せてくれた。

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アルヴァロ同様、守備で彷徨う場面が見られたので「ボランチとして今季出場させられるか?」は大いに疑問だが、流れを変えるアタッカーとしては十分な能力を見せた。

■中美のゴールがもたらす2つの意味

そして、2人目は得点を決めた中美。この試合では残念ながら勝敗を左右するものにはならなかったが、山雅に加入してから長い間苦しんでいた「無得点」のトンネルは抜けた。元々2桁を取る力のあるプレイヤーなのでここから乗っていける可能性はある

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さらに1点は返せるという成功体験はチームに勇気を与える。メンバーが変わってもここまで得点者は開幕戦のメンバーのみ。どこかそのメンバーがいなければ点が取れないのではという閉塞感がある中でそれを打ち破った。先ほど書いた先制された後のメンタル面も1点返せるかどうかでだいぶ変わってくる。

それがあのゴラッソであったことからもどんなシチュエーションでも「1点なら返せるかも」という心理的余裕がチームを楽にしてくれるだろう。

■次は同じ降格組。"負のオーラ"を出していても始まらない。

今回も試合内容的に複雑な戦術面よりも現状の整理と選手や監督の意図の話がメインになってしまったが……とにかく後ろ向きなメンタル面や成功体験の少なさがプレーに表れてきているのは間違いないだろう。

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ただ、チームの矢印は上に向きつつある。次の磐田戦は降格組同士の対決とあって「負けられない」気持ちをぶつけるには絶好の相手。サポーターがここで弱気になっていてはチームの足を引っ張るだけである。

サポーター内にもネガティブな感情が出るのは当然とはいえるが、去年のライバルでもある名門チームに対して久々の勝利をあげることでその逆境を乗り越え、最高の週末をみんなで味わおう。

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