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新潟戦レビュー~新たな可能性を見せてラスト3戦へ~

続いていた停滞からの脱却

手痛い敗戦の功名とでもいうべきか。長崎、京都と引き分けが続いた後に前節・群馬に敗戦。勝ち点だけではなく、内容面でも停滞感が続いていたが今日の山雅は明らかな違いがあった。

琉球戦でも大幅なメンバー変更はあったが、「過密で主力が使えない」というネガティブな面が明らかにあり、それとはまた違う、チームに何か変化を与えてほしい、来季に向けて希望を見せてほしいという前向きな起用によって勝ち点3という結果を手にした。

多くのサポーターの前で今後に向けてポジティブな試合を見せることができたのではっきり言ってケチをつけるほうが難しい試合といっていい。ただ、今日出てきた久保田や圍、村越のような選手を使い続けることが次からも正解になるとは限らない。その時々のベストを見極め、限られた選手に頼り切るのではなく幅を広げ続けることでチーム力と成長の最大値を目指したい。

■個人的チームMVP

起用を推していた立場なので贔屓目しないように何度も考えたが……そこも考慮した上でこの試合の「変化」と「結果」、両面で象徴的な選手となった久保田を個人的MVPにあげたい。

そして次点は阪野、杉本、セルジ、高橋。選びきれないくらいの試合だったので細かい理由は割愛するが阪野がもう1点取れる、取らせることができれば文句なしだった。

■4バック?3バック?

まず、両チームの布陣から。今季の新潟の強みの1つとなっているがスタメン表を見ただけでは3バックなのか?4バックなのか分からないということが多い。実際に試合を見ても3バックとも4バックとも取れるようなポジショニングを取ることがあり、この試合でも人によって取り方が異なるというスタートとなった。

そもそもポジションというのは形式的なものでしかないという哲学で、そこにこだわりはないというタイプの監督なのかもしれないが、それでもこちらにとっては大きなポイントの1つだった。

なので、あえて形式的に考えてみると恐らくスタートは4バックが基本形。

最初

攻撃時に早川が後ろでビルドアップ、堀米が前に上がる可変システムのような組み立てがほとんどだった。

(システム的に考えると)4バックと思った理由としては給水前はどちらかというと2列目の選手とラインを揃えていた矢村が、早川が左に移った給水後は最終ラインに吸収され5バックの1角となっていた点。それまではどちらかというと最終ラインまで下がっていても前に戻ることが多かったところを見ると守備時は4バックで守るという意識で試合に入っていたはずだ。

しかし、実際の試合では前半の給水前までは山雅5バックが相手の1トップ+3枚の2列目をあまり移動を要さずに捕まえることができていたので大きなエラーは起こらず。逆につなごうとする新潟のパスワークをプレスが上回り、押し込めたことが1点目にも繋がった。

■ターニングポイントとなった3バック化

先ほど書いたようにそこから新潟は給水タイムを機に早川を左に移して完全に3バック化。攻撃の入り口になれる早川を左に置くことで高い位置を取る堀米、そして本間至恩を生かす」という意図のあったこの修正策は見事にハマり、山雅は出ていったIHの後ろを使われた時にサイドレーンで1VS2を作られるというエラーが生じるようになる

変更

そこで、いつものようにWB鈴木がWBとなった堀米につくという対処は行ったものの、本間至恩の時間・スペースが増えて1VS1で突破されるというシーンが作られるようになっていく

後手

試合前から警戒されていた本間ではあったが、浦田・佐藤あたりがついてもここまで簡単に突破されるほどてこずるのは恐らく想定外。まさに規格外の存在となっていたため、どこかで無理をして形を崩し、対処するしかないという状況に陥る。

■理にかなっていた修正も90分続くかは別

・修正としては効果的だったが……理想は続かず。

そして、後半新潟は両WBに大本と荻原というスピードと突破力のある選手をWBに投入。バランスの取れる堀米をDHに入れて前線5枚を攻撃に割くような形を取ってくる。理想としては佐藤の両脇を機動力のある矢村・本間で掻きまわして杉本久保田も下げさせるというのがあったように思う

後半

ただし、実際はそうはいかず。逆に新潟側が大本や荻原が最終ラインに吸収されて5バック化、前線にも収まらないのでカウンターもできないという悪循環になっていた。

・練度の差でデメリットが強くなっていく

こちらが自由にできた要因としては352(3511)を相手にした時の新潟の受け渡し・取りどころがはっきりしなかったところ。

2点目が顕著だが、セルジが絶妙に捕まらない位置取りも上手かったが、裏抜けする阪野、下りてくるセルジ(もっというと出し手の常田)に誰も付いていないという現象が起こる⇩

キャプチャ

2点目

こちらにフォーカスしてみると貰う前にセルジだけではなく、阪野の位置も何度も確認していた常田と息のあった2人のコンビネーションは見事。ボール・動きの質、ともに完璧な勝ち越し点となった。

そこからは珍しく柴田監督が77分まで誰も交代しないで済むほど良いバランスを保ったまま時間が進む(隼磨・山本真が入ることでなお安定性は増した)。

最後にはルーキー村越を投入。高卒として大然以来2人目となる出場を果たし、個人としてもチームとしても「チャレンジ」と「結果」を手にする大きな勝利を手に入れた。

新潟が守備面で不安定になりながらも3バックを継続したのにはこちらと同様に「来季にむけてのチャレンジ」の側面もあったはず。ビルドアップやこちらのプレスを欺くための修正策としては正しくとも、時間とピッチの状況次第では諸刃の剣になることもよくある話だ。

■来季への希望

この試合で「違い」を見せることができた柴田山雅。来季にむけても希望が見えると多くのサポーターが感じることができたのは「戦術面」よりも「選手起用」の面だろう。

中央でのプレーは2ヶ月以上ぶりになった久保田は、532のIH、山雅的に言うと「シャドーボランチ」として高水準のプレーを披露。下りてゲームを作る杉本に対して裏抜けや衛生役しての特徴を出せていたので、阪野や鈴木が孤立するような場面は少なく、より前方にスムーズにボールが進んでいった。もちろん守備や安定性ではまだまだな面もあり、1試合で測れない部分もあるが確かな「生きる道」を示したことにより今後の可能性も広がったのではないか。

そして、同じく久々の出場となった圍。テセの2度のPKを止めることはできなかった(あれは村山も厳しいとは思う)が、最少失点にとどめて勝利に貢献した。セーブするシーンは少なかったものの、キックの飛距離は相変わらず。圍にとっては難しくない試合でも、GKは1つのミスで試合を壊すことはある。90分出場して勝利することができたのは財産となる。

最後は村越。左WBで出場するということにまず驚いたが、スプリント力は大然を彷彿とさせるものがある。得意のドリブルは残念ながら披露する場面はなかったが、出場がない状態でトレーニングを続けるよりも間違いなくいいイメージはできるはず。サポーターの心もがっちりと掴んだに違いない(グッズ収入的にも良さそう笑)

■泣いても笑ってもラスト3戦

最後の5連戦が終わり、残りは3戦。4位甲府、12位東京V、21位愛媛との試合を残すのみとなった。

1週間を挟んで、前節活躍した選手、コンディションがイマイチだった選手に加えて、満了が発表された選手も試合に絡んでくる(もしくは来季を見据えて使われない)可能性があるのでどのような戦い方を選ぶかは非常に読みづらい。

前節のいいイメージを継続しつつ、どのようなメンバーを組んでくるか。どれだけ順位を上げることができるか。監督自身も来季のことは現時点で発表されていない立場なので柴田山雅としてもここ数カ月でやってきたことの集大成を出して、いいシーズンの締めにしたい。

END

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