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岡山戦レビュー~勝ちたいのにうまくいかない原因と繋げたい光明~

戦術よりも刺し切る力・粘り強さの差が結果に

9月最初の試合、アウェイ岡山の地で再び勝ち点を取ることができなかった……。これまでの試合と違い、試合を通して見れば山雅側が優勢に進めておりシュート数も上回っていたが、結局"刺しきる力""粘り強さ"が足りなかった。連携面、ビルドアップ、守備の構築……もちろんここも突き詰めなければいけない要素であるが、勝ち点3を取れるチームになるためにはそこの欠如が致命的だっただろう。

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〜素人採点〜

・松本

圍 6.0
失点はノーチャンス。CKの攻め上がりは自分の意思ではないかと推察する。最小失点に収めただけにもどかしさは感じているだろう。

乾 5.0
やはり後ろからの指示だしが少ないのはこちらの印象だけではない。失点シーンは吉田に指示を出して後ろに下げさせることもできたはず。闘将というキャラでないのは承知だがベテランの経験を出したい。

常田 5.0
決して悪い部分ばかりではないが裏対応などで怖いシーンが多いのはCBとして無くさなければならない。毎度同じような話になるが持続力・集中力。

吉田 4.5
攻守にあとひとつ。相手の弱点を完全に突いたシーンが2度あったがそこで仕留められるかがスコアを左右した。ただ群馬時代も順風満帆なスタートではなかった、まだまだ成長できる選手。

浦田 5.0
大事な局面でバタつくシーンが多いのは残念。狙いを突こうとする動きは良かったがフリーなのに前線に蹴りこんでしまうシーンもあったので柔軟性を見せたい。

塚川 6.0
何かを変えようという姿が見れる選手の1人。アウグストとのコンビはギャンブル要素も大きかったが、誰と組んでも気の利いた立ち回りができることを示せた。

アウグスト 6.0
DHとしては難しいと思っていてごめんなさい。まだJリーグ仕様のポジショニングにはなっていなかったが活動範囲と身体能力は可能性を感じる。自陣でボールを捨てることなく、繋ぐ意識が高いのも好印象。

杉本 6.5
「空いた逆サイドにうまくボールを配球できた」という自己評価の通り。監督の求めるものを再現し続ける力はチーム1かもしれない。後半の「勢いで行った」攻撃についていけていた唯一の日本人選手ではないか。

久保田 6.0
闘えるようになってきたというのはこれまでもここで触れている通り。ただ"ボールを受ける動き"がどうしても足元になってしまいがちなのは改善点。

阪野 5.0
前線の起点が2つになったことでいつもよりはマークが分散された。となればもう少し怖さを見せたいのが正直なところ。ジャエルの台頭が自身にとって吉と出るか凶と出るかは本人次第。

ジャエル 6.0
1試合の先発で全てを判断できないが今日はプレーも振る舞いも何か違いを感じさせるものであった。得点を取れればさらにノってきそう。後はケガと継続性。

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(途中出場)
セルジーニョ 5.0
力があるのは誰もが分かっているが、影響力のある選手がセルフジャッジやラフプレーをしてしまうのははっきりと良くないと言える。悪循環に陥らないためにも一度冷静さを取り戻したい。

イズマ 5.5
もう少し絞ってほしいのが正直なところ……。アクセントにはなっていたので使いようによっては試合をひっくり返すほどの力はある。

高木利 5.0
個のごり押しで途中から入るには非常に持ち味を発揮するのが難しい環境ではあったが見せ場を作れず…。試合に入れていなかった。

服部 5.5
空中戦で強さを発揮。以前より周りも服部の良さを出そうという意識は感じた。それで良いと言えば良いのだがそこ止まりなのが先発で使うには難しい点。

布監督
前節からプレス位置を修正。しかし、後ろの下がり癖は相変わらず。相手とCBの力関係を考えると下がってしまうのは理解できるのだが……前線にいかせるのであれば勇気を出して押し出したい。編成・怪我人事情的に仕方ない部分でもあるのだが、交代選手が入ると完全に個に依存した形になってしまったのは少し残念に思った。

・岡山

内容面を見ると山雅と同様かそれ以上に岡山にとってもいい試合ではなかったかもしれないが、0と3の違いは大きい。スローインからの連動した狙いと上門の決定力は勝負を左右した「差」だった。

有馬監督のコメントからも怪我人の多さ、コンディションを整える難しさが滲んでおり、「どこのチームも同じなのですが…」という前置きにすら切実さを感じる。また「誰が出ても最低限のことをチームとして共有すること」の重要さを説いている部分はむしろ山雅にこそ刺さるコメントであった。

~戦評~

■深刻な「失点したくない病」

「先制点を取られたくない」「点を取られてはいけない」。それは山雅の伝統として強くある。参入後ここまではJリーグ1と言っても過言ではないほど徹底的に意識付けされてきた。

ただ今それが悪循環を生んでいる要素でもある。ラインをずるずると下げてしまう、リスク回避でロングボールを蹴ってしまうというのは前体制から言われていたが、それは当然そういうサッカーをしたいというよりは根本には「失点したくない」という心理があるはずだ。

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そして構造にもそれが色濃く出ている。2CB(もしくは3CB)・2DHが崩れないチーム(崩さないチーム)というのは確かに自陣で奪われても陣形を戻しやすいという利点がある。「反町さんがビルドアップの形を作れない」という批判も当時からよく見たが我々素人が分かっていて、あれだけサッカーを見てる反町さんがビルドアップを知らないわけがない。ビルドアップの形とリスク管理が両立させるのは選手層と環境を考えると現実的ではなく、失点のリスクを抑えることを第一にスタイルを構築した結果だろう。

そして、今はどうか。布監督の場合はそこまで極端なサッカーは志向してない。特別ビルドアップにこだわっているようにも見えないが、大抵修正する時はボールを繋がせようとしている。「形を作ってないのにただ繋ごうと言うのは無責任だ」という意見も一部分かる。が、ただでさえテーマを持って選手編成をしていない上に怪我人やコンディション不良で基本メンバーが定まらない中で形を作るのも短期間ではなかなか難しい。

(例えばCB1つ取っても橋内がいないだけでガタガタになるなら守り方も変えざるをえないし、ボランチも米原と藤田に同じ形でビルドアップをしろというのは無理な注文である。)

そして、そうした中でも主体的に動こうという選手がいないわけでもない。後ろの選手でいえば塚川。最近では特に後ろが繋げないと見ると最終ラインまで下りてボールを展開しようという動きは見える。ただなぜそれでも変わらないか。周りがそれに連動できていない。

ビルドアップ

だいぶ選手心理を汲み取った言い方をするとどこかで「失点したくない」「失いたくない」気持ちが強くなりすぎているのだ。塚川が下りてきたならば最終ラインが勇気を持って幅を取れるようなポジション取りをするべきだし、(セルジが下りてきたときも共通だが)下りてきた選手に何の工夫もなしにボールを渡していても相手は全くズレないで終わってしまう。

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またこの試合では浦田も何度かサイドに来たボールをダイレクトで前線に送り、相手選手に引っかけていた。決まり事としてはSBから前線に入れる形はあったかもしれないし、あるいは決まり事がなくても奪われないためのリスク管理にはなる。ただ仮に決まりごとがあったとしてもそれをただやるだけが戦術ではない。相手の出方によって臨機応変に対応できなければただ自分よがりなサッカーになってしまう。決まり事がしっかりしているチームでも相手の出方に合わせられなければ対応は簡単にされてしまうだろう。

話は逸れたが誰かが我慢できず、ポジションを取れなかったり、ボールを捨ててしまったら成り立たない。ビルドアップをいち早く成り立たせるには形よりも「失点したくない病」を克服しないといけない。

■やるべきことを理解していたジャエル&アウグスト

ネガティブなことに目がいきがちだが、ポジティブな要素もあった。

特にボランチとしてのアウグスト、ジャエルの先発デビューは一定の成果を得た。両選手ともどちらかというと自由奔放に動き回るイメージだった(本当はそのほうが生きるだろう)がこの試合ではかなりチームのためになるプレーを何度も見せてくれていた。

アウグストは先ほども書いたようなポジショニングの危うさは日本サッカーへの慣れなさを感じたが、素早い戻りでボール奪取。間に合わないときにはファールでしっかり攻撃の芽を摘み取るなど責任のあるプレーを披露。そして、ポジトラ時(奪った後の守→攻のフェーズ)には相手の寄せがある中でもしっかりボールを引き出して味方に繋ぐプレーが見れた。そして無事フル出場したのも今後にむけては好材料だろう。

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ジャエルも初先発にしては十分のプレーを見せた。恐らく本人的にも足元でもらえたほうが得意の形ができるタイプだが、イーブンのロングボールもほとんど負けることなく収めることで時間を作る。守備も穴にならない程度には行っていたのもやるべきことを把握している証。あとはこちら☟のツイートに書いている姿も印象的だった。

二人ともサッカー選手としては経験がある選手たちである。外から見てきた分、純粋に感じる意見もいくつか見られた。これからどうチームに組み込まれていくかは今後の働き次第になってくるが良くなっていくことを予感させるような、可能性のあるプレーを見せられた。

■まず見せたい変化は「戦術」よりも「成長」

前置きとして戦術がこのままでいいとは思わない。特に後半の勢いだけの攻撃は「なんなんだこれは」感を感じざるをえなかった。だが、まずは体制を立て直すことが優先になっているのだろう。それが余計にサポからするとどっちつかずに見えてしまう原因にもなっているが、現場も勝つために必死である。とにかく次の試合に勝ちたい状況・スタイルになっている。

そして、選手が上手くできなければできないほど指揮官の選ぶ戦術が簡略化されてしまうのはどこのチームでも一緒。リカ将やフベロ、小林伸のようなJ2の名監督もそこらへんは柔軟にする。かつて極端なまでにハイラインをしていた監督のようにうまくいっていない状況も物ともせずさらに難しい要求をするのはかえって愚将であるケースが多い。

それはサッカーに限った話ではない。現場がうまく行ってない状況なのにトップがさらに難解な要求をしても余計に混乱をするだけである。そういう意味では外からは「ビルドアップを整理させればいいのに……」と感じるが、周りが感じる以上にこのビルドアップ問題は根深い。これまでに山雅が手をつけてきていなかった要求になってくる。

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それを打破するには「現場のメンバーを変える」か「ピッチ内で現場の人々が変化を見せる」しかない。前者の入れ替えはできる範囲ではやっており、補強か怪我人を減らさない限りは克服できないので後者になってくる。

例えばパススピードを上げる、勇気を出してCB間の距離を空ける、相手を引き付けてパスを出すなど……こんなことは監督も言っているはずだし、プロなのだから当然頭に入っている。あとは選手がどれだけリスクを顧みず、行動に移せるかになってくる。

各々が「できることを増やす、思い切って行動を起こすなど成長を見せる」ことが「戦術の幅を広げる、変化を与えること」に繋がってくるはずだ

■今季を戦えないクラブに来季の飛躍はない

最後は全く違う話。この成績になると来季のために……という意見や思考もでてくる。確かにここから昇格を目指すには相当な飛躍がいるし、先を見越して早めに動くのは戦略的には賢い。

ただ昇格を目指して戦う選手たちがいるにも関わらず、「今季を見れないチーム」では今季の選手たちは来季を戦うために残ってはくれない。監督も戦うモチベーションを失ってしまう。そんなチームに戦える選手は来てくれるのだろうか……。

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僕は選手も監督もサポも(最低でも可能性が残されている限りは)今季のために全力で戦うことが一番今後につながると思う。明るい未来のためには最後まで戦い切ることが大事だと思う。そして、目の前の選手、目の前の試合のために声援でもブーイングでも全力を尽くせるのが松本山雅サポーターの在り方だと思う。

今は確かにフラストレーションが溜まるし、落ちるところまで落ちていっている状態である。当然見るのも辛いと離れる人も、批判的な意見しか言わない人も出てくる。それも仕方ない。ただ、それでもここで書いたことに共感してくれる人がいるのならば「今いる選手・監督に目を向け、全力で後押しすること」は共に忘れないで応援していきたい。

そして、次は必ず勝ってくれる!そう信じ続けたい。
山形戦絶対勝つために再び一つになろう、Onesou1!

END

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