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北九州戦レビュー~進撃の塚川!我慢の先の勝ち点3~

3位&前半戦敗北の北九州相手にウノゼロ勝利

5連戦のラストゲーム。1分け3敗となかなか結果を出せていなかったが、3位北九州を相手にウノゼロ勝利を達成。

「これまで良い内容と言われていたものを続けた先の勝利」というよりは「内容を1度棚に上げてでも掴み取った勝利」という側面が強かったが、内容の良い、俗に言う面白いサッカーが常に勝利に結びつくかと言われればそういうわけではない。特に山雅は長年その真逆のコンセプトでやってきたというのもある。

恐らく柴田監督のコメントに出ていた「もう少し握りたかった」というのは反町監督の言うそれよりさらに本音に近いと思われるが、勝つことができたのは何よりも好材料だといえる。まずは結果で1つ前進することが理想とするサッカーに近づくことにも繋がっていくのではないか。

次なる5連戦にむけてこの試合を制することができた要因、残された反省点についてまとめていきたい。

<個人的なMOM>

塚川
積極的な動き出しがゴールに結びつく。多くの修正は難しい中で違いをもたらす重要なピースとして機能していた(すごい怒鳴られてはいたが笑)

次点は阪野
おつかれさまの一言です。これだけ酷使されてて終盤までチェイスし続ける献身性と決定的なアシストにはチームメイトも監督もかなり救われている。

<戦評>

■フリーマン・セルジに戦術を合わせる選択

352を基本フォーメーションとしている柴田山雅。なかなか勝てない、繋げてるのにゴールが遠い原因としては「セルジ下りすぎ問題」は確実にあった。

保持時、ほぼフリーマンと化しているセルジは「相手が捕まえづらい」「セルジのアイディアを最大限発揮できる」というメリットはある一方、監督にとっても良くも悪くもフリーダムである。

「阪野の周りにフォローがいない」「サイドに展開してもゴール前に人がいない」「IHがその分"労働者"になる必要がある」など問題点も少なくなかった。

起用法を変えないのならばセルジがシステムに合わせる(制約を与える)かシステムをセルジに合わせるか……大きく2択だがこの試合では後者を選んだ。

■3421によって生まれた利点と欠点

・FW塚川により生まれた「バランス」と「ゴールへのルート」

まず変えたシステムについて。352だと攻撃時に実質"351+セルジ"になるところを3421で"3411+セルジ"にすることで前線にも満遍なく選手を配置⇩

画像4

阪野も前線で長い時間ボールを持っているというよりは、受けてすぐはたいてまた貰って少ないタッチ数で攻撃をしたいタイプなので塚川の動き出しやフォローの動きは持ち味を出しやすかったといえる。

クロスに対しても阪野と塚川が前線にいることでサイドの選手も的が増えて上げやすそうにしてた(阪野は点で合わせるのがうまく、塚川は線で合わせるのがうまい)だけではなく、どちらかが流れても片方は中にいるという関係性も先にあげたフリーマン・セルジシステムの問題点を解消するには十分だった。

・ネガトラの不安定さ

しかし、全てがうまくいったかと言われるとそういうわけではないのがサッカーの難しさ。攻→守への転換(ネガトラ)時に前線の阪野や塚川が置き去りになる状況が起こると本来の3421の定位置に2シャドーがどちらもいないで、これまで3枚で守っていた中盤を2枚で守らなければいけない状況を作られてしまうエラーが多発。

ネガトラ

山雅の最終ラインは2トップ監視、WBはサイドレーンを埋めるので中盤の中央が数的不利になり、セカンド回収もできず、ファールで止めざるを得ないケースが多かった。セルジも監督が変わったからか352の時の感覚からか、去年の3421の時と比べると攻撃に置く比率が高くなっているのだが(この形で今後行く時は)ネガトラ時の意識をあげていくしかないかもしれない。

■ハマったカウンター戦略

そして、この試合ではここ数試合見られなかったような鋭いカウンターも何度か仕掛けることができていたのは好材料。

特にポジティブに感じたのはとりあえず前線にラフなボールを入れておいて走力でカバーしていく「キック&ラッシュ」のようなカウンターではなく、地上戦で細かく繋いでのパスワークによるカウンターがいくつか見られた点。その中でも2つピックアップしたい。

・この試合ベスト・ロングカウンター

この試合のカウンターで最も良い形を作れたと思うのは前半27分56秒~のロングカウンターのシーン。相手のシュートのディフレクションからセルジ→前→鈴木と繋ぎ、アーリークロスから阪野に合わせた形。惜しくもGKの正面にいってしまったが、連動性のある動きをしながらグラウンダーで正確にボールを運べたのは今年取り組んできたものが出た形と言える。

また、中の動きも、クロスの直前に阪野の位置を見てDFをニアに引っ張った塚川、DFの間に入り込み頭で合わせた阪野、大外を回っていたセルジと役割分担も絶妙、まさに「決めるだけ」というパーフェクトに近い攻撃だった。

・得点に繋がったショートカウンター

そして、得点シーンもショートカウンターから。

この試合はこちらの前線が3枚だったこともあったせいか、北九州は3バック化をせず、シャドーの後ろでボールを受けることで中で数的優位を作ってサイドに展開するという狙いがあった

ショート1

得点シーンは綺麗に追い込んだという形ではなかったが、前線に3枚カウンターのための選手を残していた山雅の狙いが見事にハマった。阪野と塚川ももちろんだが、あそこで1列前に出て奪い切った前のプレーも称えたい⇩

ショート2

シュートシーンはフリーだったがニアをぶち抜くストライカー顔負けの得点感覚と勝負強さで阪野に並ぶ今シーズン6点目を記録。シュート練習でもあのコースは何本か決めていたので得意なコースなのだろう(ちなみに正面からのシュートは半分以上ふかしていた笑)。塚川がどこまで得点数を伸ばしていくか?にも注目していきたい。

■残された後半の課題

しかし、依然として課題は残っている。特に後半の戦いは相手が前に圧力をかけてきたのに対してこちらはほとんどパワーを使って攻撃することができていなかった。

前や佐藤が先発で、山本真が怪我?で不在。ポゼッションはできるようになっているが、まだ個人に依存しているところが大きいため、先に書いたような選手がいないとボールを落ち着けることもできず。交代も補充的な意味合いが大きかったため、これまでの試合と同じく尻すぼみになりがちな試合運びは変わらずだった。

アルヴァロで守備に不安があるのならば、前半戦流れを変えられるカードだった久保田を入れる、高さに不安があるのならば榎本を入れる、繋げるメンバーがいないならアウグストを入れるなどそもそもカードがなかった前半戦よりはやりようがあるように感じるのでこの状況が何試合か続くのは少しもどかしい。

ただでさえ、連戦で疲労の溜まる今シーズン。柴田監督は選手の特徴は掴めているというのも暫定監督としての利点のはずなので(交代するのが必ずしも良いとは思わないが)もう少し後半の戦い方は工夫を見せたい。

■北九州

北九州目線に立ってみると狙っていたサイド攻撃がなかなか実らなかった。前半から逆サイドに常に人数を残しつつ、主に山雅の右サイドを攻略しかけることもあったがそこからの勝負でなかなか突破できず。個の力を組織力でカバーしているのが前半戦であったが、逆に今回は鈴木・高橋が1VS1で互角以上の健闘を見せたため、個ですぐに抜ききれずに山雅のカバーが来てしまうというシーンが多かったのがもったいなかった。

また前線3枚でプレスをかけてくる山雅に対して、3142ビルドアップではなく、4222ビルドアップを続けたのが結果としては裏目に出た。確かに山雅の前線3枚に対して北九州の後ろ4枚で繋ぐというのは合理的ではあったが、失点シーンなど適した距離感がうまく掴めていなかったのはあったかもしれない。

■次は最後まで何が起こるか分からないことでお馴染みの…

北九州戦については以上。前回の5連戦に引き続き、勝って過ごすことができる1週間。先ほど触れた交代カードという意味では復帰が発表されたハンヨンテなど北九州戦いなかったメンバーが新たな風を吹かせることはできるか。

次節の相手は"点は入るが、どうしても勝てていない"という試合が多い「レノファ山口」である。前回と同様に順位が近いため、特に気持ちのぶつかり合いのような、「形よりも結果を」というような展開になる可能性が高い。

後半の戦い方は特に大事で、失速してしまうような試合運びをしてしまうと上位とも遜色がない山口の爆発力に飲まれてしまう。逆にプレスは比較的いなしやすいチームでもあるのでここまで取り組んでいる冷静に後ろから組み立てをしていくことは大事にしていきたい

今季初の連勝と柴田体制ホーム初勝利を。Onesou1!

END

画像は松本山雅公式より

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