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試作から量産に移るときに知っておきたいこと

ネット通販で購入した電子部品やマイコンボードを使って簡易的な試作品を手作業で開発するというのは、ハードウェアスタートアップの世界でもよくあることです。

しかし、お手製の試作品と工場での量産品には異なる点が多々あります。また、量産できたとしてもビジネスが成功するわけではありません。成功の可能性を高めるためには、量産する前の準備に時間をかけることも重要です。

数個の試作品を経て、量産が視野に入った際に覚えておきたいことを紹介します。


ブレッドボードで作ったものを工場に持ち込んでも量産はできない

ブレッドボード(プロトタイプ基板)は電子工作ユーザーにはお馴染みのアイテムです。はんだづけせずに電子部品やジャンパ線を差し込むだけで動作するので、手軽に工作したい場合や、とりあえずの試作品を制作する際に使用する方も多いかと思います

ブレッドボードに限らず、arduinoやRaspberry Piなどを使って、手早く試作すること自体は良いことですが、その試作品を量産するには製品としての完成度を上げる必要があり、そのために基板や筐体、ファームウェアや外装など、さまざまな要素が試作品とは全く違う、製品として耐えうるものへ再設計されます。

一人で制作する試作品と異なる仕組で量産は進みます。多種多様な企業と人材が集まり、彼らを動かすには設計図面や仕様書、BOMリスト(製造に必要な部品リスト)などの書類が必要であり、相応の時間が必要です。

丸投げしても、完璧に全てやってくれるわけではない

自前で工場を持たないスタートアップが量産する際、EMS(electronics manufacturing service)に依頼するケースがあります。

誤解されがちですが、EMSは試作品を持ち込んだら市販品の品質に仕上げて届けてくれるわけではありません。最終的な仕様や守るべき品質水準などスタートアップが決めるべきことは山ほどあります。製品のスペックも、ビジネスプランや年間の販売計画などを発注側が決めないことには話が前に進みません。

製品だけに気を配るのではなく、製品を軸としたビジネス全体に気を配る必要があるのです。

量産には莫大な資金が必要

部品を買いそろえて自分で一つだけ組み立てる場合には、部品代=原価という認識でも良かったかもしれませんが、量産には金型費用や組み立て工賃といったコストが発生します。また、量産に移る前に量産化試作という工程で、量産可能な形の試作品を開発する必要もあり、そこでもまとまった資金が必要です。

製造する製品の仕様や量、原価にもよりますが、1000万円程度の自己資本では量産化試作に到達する前にショートする可能性もあります。

そのため、金融機関からの融資やVCからの資金調達によって、量産に必要な資金を集める必要があります。どこから調達にしても説得材料としての事業計画書が必要であり、試作と並行して準備するべきです。

いつでも、どこでも、好きなだけ作れるわけではない

数千〜万単位での量産となると、部品の調達面でも問題が発生します。場合によっては予定していた部品が十分な量を確保できなかったり、廃盤・製造廃止になるケースもあります。

報道でも度々目にするように半導体不足は顕著な例で、購買能力の低いスタートアップは欲しい時に欲しいパーツが手に入らず、計画が遅延するというリスクと常に背中合わせの状況です。

また、同じ機能でもコスト面や調達容易性から評価すると自分が選んだ部品が必ずしもベストではないケースもあります。

量産する前に試し売りをしてみる

工場にとって最も避けたいのは、製造したものが売れずスタートアップが倒産してしまい、代金が受け取れないことです。もちろん、スタートアップ側にとっても避けたい状況であり、莫大な予算を投じて量産する前に少しでもリスクを回避することが重要です。

例えば低予算で収まるロット数(数十〜100個単位)の少量生産で販売して、フィードバックを集めるといった手法は有効です。またエンタープライズ向けの製品であれば、最初の顧客とパイロット版の製品開発を突き詰めて市場ニーズを理解した上で、量産化に移るのもリスクを抑える方法の一つです。

量産品となると個人・法人に関係なく、市場は完璧な品質を要求されます。初めから完全なものにこだわって量産するのではなく、まずは必要最低限のものを少量生産し、市場に問いかけるというプロセスを踏むことをおすすめします。

「量産して完成」はゴールではなく、スタートライン

ハードウェア・スタートアップにとって量産はビジネスの過程の一つに過ぎません。量産した製品を届ける顧客の開拓や不良品対応や故障時のサポート、そして弛まぬ改善が待っているのです。

そして中長期的な成功を収めるためには、早い段階から市場のニーズとのギャップを埋めていくアプローチが欠かせません。HAX Tokyoでは創業から間もないハードウェア・スタートアップを支援するアクセラレーション・プログラムを提供しています。

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HAX Tokyoとは

HAX TokyoはSOSV、SCSK、住友商事の共同運営による、ハードウェアに特化したアクセラレータープログラムです。

採用されたチームには、米国シリコンバレー発、世界的に実績のあるハードウェアアクセラレーター「HAX」にて蓄積された知識やノウハウが提供されます。また、ハードウェアに特化したコミュニティが提供され、ビジネスおよび製品開発の分野で世界をリードする専門家や、住友商事をはじめとする日本のパートナー企業とのコラボレーションの機会が得られます。

さらに、3ヶ月後のDemo Day後には、HAX Shenzhen(中国)、HAX San Francisco(米国)に参加し、ベンチャーキャピタル等から資金を得て事業を拡大できる可能性があります。

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