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シード期のスタートアップに伝えたい、売ることより大事な「営業の本質」

事業を継続させる上で営業活動は欠かせません。それは製品やサービスが開発段階にあるスタートアップにも当てはまります。営業(セールス)活動は、製品やサービスがある程度完成してから行うものと思われがちですが、それは全くの誤解です。
シード期のスタートアップこそ営業活動を行うべきであり、営業をしないでプロダクトやサービスは作るべきではありません。

営業は売ること「だけ」じゃない

営業というと製品・サービスの売り込みと考えてしまいがちですが、そこで思考停止してはいけません。「売ること」は営業において重要な要素の1つですが、シード期のスタートアップにとっては「検証する」ことこそが営業においては重要な意味を持ちます。

顧客や顧客となりうる企業とコミュニケーションをとることで、自分たちの仮説は正しいのか、製品の仕様は間違っていないか、自分たちが定義した課題は、実際に顧客にとって課題として存在しているのか、そうした検証無くしては本当に社会に必要な製品・サービスを生み出すことはできません。

製品開発を担うファンクションとして、「企画・開発」「製造・量産」「販売」の3つがありますが、これらは独立した関係ではなく、それぞれがお互いに作用する関係にあります。メーカーの企業活動でも、販売に向けた活動を行い、その結果として顧客や市場からのフィードバックが集まり、それが「企画・開発」に反映され、製造にも影響を及ぼします。

自分たちのビジネスモデルを可視化するフレームワークとして、「ビジネスモデルキャンバス」を使用する事があると思いますが、9項目のいずれもデスクトップ・リサーチだけでは十分に定義することはできません。現実的なものにするためには顧客にアプローチする必要があるからこそ、シード期のスタートアップも営業に出て、自分たちの仮説を検証することが重要なのです。

実績が無くても、営業で差別化できること

企業活動では「会社」「プロダクト」「個人」、この3つへの信頼を得ることが重要です。
シード期のスタートアップは製品も完成しておらず、知名度も十分にありません。しかし、個人に対する信頼を高めることは自助努力で可能です。

具体的には問い合わせに対するアクションを短くすることです。

チャットボットのSaaS企業であるdriftが発表した調査によれば、433社の企業サイトの問い合わせフォームからメールを送信し、5分以内に連絡がったのは7%。5営業日内に返信がなかった企業は50%超にも登ると言います。

こうしたデータが示すように既存企業の多くが問い合わせに対して、スピーディーに対応できていません。問い合わせに対してクイックに反応するだけでも差別化を図ることができます。

会社の初期に必要な営業マンとは

市場や顧客のニーズを把握し、製品の仕様を固め、必要な資金を調達して、市場に打って出るという段階であれば、営業を束ねるマネージャーも必要になりますが、シード期には必要ありません。

初期の営業に必要な素養としては、
・顧客の課題を理解している
・商品を熟知している
・熱意にあふれている

この3つが重要ですが、シード期の段階でこれらの条件に当てはまるのは創業者しかいません。まずは創業者自身が営業し、顧客と製品の間にあるギャップを埋めることが重要です。

プロダクトの検証時期が落ち着き、売上が出始める段階になると、ビジネスモデルを固める段階に突入します。この段階の営業活動では「効率的にユーザーを獲得できるビジネスモデルであるか」を検証しましょう。この頃になると営業やマーケティング担当を1〜3人程度の採用を検討し始めるようになります。
ここでお勧めしたいチームの編成は、セールスエンジニア2名+マーケター1名の3名1組です。それぞれに求める役割は以下の通りです。

セールスエンジニア
顧客の課題をできるだけ言語化すること。その課題を解決する施策の難易度や必要性を検討する

マーケター
セールスエンジニアが明らかにした課題と製品が持つ解決策を、営業活動で提案可能な形(営業ツールなど)に落とし込むことで、営業支援を行う

※いずれも、従来イメージするセールスエンジニアやマーケターの職務に当てはまらない場合もあるので、新規に採用する際には上記の役割を伝えておくことも重要です。

役割を分担し、このサイクルを回すことによって、より多くの顧客にアプローチしながら、製品と事業の成功確度を高めることを目指します。

少ないリソースでスピードを落とさずに製品化を進めるためには、それぞれのメンバーが自分の専門性を生かした仕事をしながら、異なる役割を支援する業務を担うことが重要です。

これまで説明したように、営業とは単に売り込むだけが役割ではありません。市場に独占できるだけの製品・サービスを確立させるまでに必要な要素を、顧客とのコミュニケーションを通じて検証することこそが、シード期のスタートアップに求められる営業のあり方なのです。

(監修:市村慶信 文:越智岳人


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