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2022年4月の歌 題詠「柔」


手の内に風船かずらをそっと包みこころやすらぐその柔らかさに
手を借りず箏ケース抱えて前を行く老師に付いて長き通路歩む 
岡まなみ

母は逝き賀茂の流れを泣きながらうちは走った さいなら母ちゃん   
柔らかいベービーアリ君さあおいで ひいばあちゃんだよ抱っこしましょ沖 葉子

非力でも青と黄色の花を植えウクライナの春を思いえがく
起こってもいないことをあれこれ思う夜更けの雨が春愁におとす
小野貴子

柔らかなラッキーのお腹を撫でながらいつしかまどろむ九十路近く  
楽しきはシニアになって詠む短歌思い出ほろほろ遠くに霞む  
小島夢子

柔らかな川風受けて桃色の桜餅食む隅田川クルーズ
花咲けばギリシャの春を思い出す遺跡に咲きいし林檎の花も
近藤秀子

柔らかきマシュマロ一つ目に浮かぶペンギン歩む雪降る海辺
三月の風はゆらゆら薄みどりかげろう揺れてうぐいすの声
関本なつ

柔らかいなぜた瞬間暖かい我が子の背中愛しているよ    
コロナ渦でどんな境遇あおうとも絶対負けぬ絶対勝てる 
田中えり  

柔らかな春の日差しに包まれて赤子は眠る四肢を伸ばして
貰い来しいびつなアボカド晩酌にわさび醤油をたっぷり添えて     
筒井みさ子

理不尽にロシアに追われし幼き日ウクライナの子ら思えば切なし     
朝ごとの雨の恵みか色ふかく庭の紫陽花いま盛りなり
原 葉

たった今何かしようとしてたのに思い出せない霞みゆく春
草根っこ綱引きすれば突然に尻餅ついた我の勝ちなり
藤代敏江

  四年ぶりの娘の来布 
滞在は友のコンドで十日間予約の食事は全てオンライン        
一日は共に滝見を楽しまんお結び作りて遠足気分           
三浦アンナ

春の陽に小さな掌パーにして山椒の芽は日ごと伸びゆく        
小糠雨のぼんやり過ごせし終日は損したような得したような      
森田郁代

柔らかき毛の感触の残る手でゴン太の写真をひしと抱きぬ       
春なれどすべてが色褪せ見ゆる今彼と過ごせし日々のみ鮮やぐ     
山下ふみ子 

「久し振り」と手を振る友のブラウスに春風吹きてふわりとふくらむ
レンギョウを腕に抱えて急ぐ人の後ろ追いかくる黄金の蝶
楽満眞美

柔軟に仕事しつつも「これだけは」という局面では堅物でいたい      若き日は敢えて茨の道を行き創った傷を歌の糧とす     
六甲もこ 

そよ風にひらひら揺れるパンジーはワルツを踊る乙女の如し 
コロナ禍の年に生まれし初孫の二歳の祝いに「あおむし」絵本
伊藤美枝子

二歳児の頬はマシュマロ我の手に吸い付きやがて溶ける気のする 
青と黄のライトに浮かぶ市庁舎を見つつ願えりプーチン打倒    
鵜川登旨

塀のあるプールから見える星たちを放してあげたい海の夜空へ 
二百年前にショパンの生み出した音の出て来る譜読みの楽しさ 
  注;譜読みとは初めての曲を譜を見て弾いてみること
大室やよい














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