自然の時間

人間社会だけが 時間に数字をつけて ここからここまでが朝で、ここからは昼でと やっている。
私の住む南の島も 今では そんな人間時間に すっかり区切られてしまったが 時間を忘れていられる
休日は 数字で時間を 区切らないように過ごしている。
朝 磨りガラスから差し込む 外の明かりの具合で
そろそろ起きようかと ベッドから這い出し 波乗りに行こうかどうか 迷いながら、先に 猫たちに ご飯をあげる。そうこうしているうちに 太陽は 東の山から
姿を見せ 大気が どんどん温められていくのを感じる。
波乗りに行くなら 急がないと 風がやって来る。
自分の中の 長年 海に慣れ親しんできた自分が 決めかねている自分に 言葉を放つ。
していたことの全てを止めて 車にボードを積み うねりの方角が ドンピシャなポイントへ向かう。
夏のノースは 波が殆ど無いから 駐車場はガラガラだ。
今度は 車からボードを下ろし ビーチへと向かう。
ラインナップには 3人の旅行客らしき人たちが 波を捕まえようと 必死にパドルしている。
私は 挨拶するでもなく できれば気にしてほしく無い態度で 3人から離れたところで 波を待つ。
セットの波に パドルしようとしたら 3人組の1人が
奇声を上げる。「Be cool. 」頭の中で 呟く。
白人は陽気だが 同時に 不必要にエネルギーを消費している。
そう言うのって ちょっと 疲れるんだよねと 思いながら その波には行かず 次のを待つことに。
と 西側から イルカの群れが やって来た。
夏場 イルカたちは 島の西から カエナ岬を
周りこんで 北にある ワイメア湾までやって来る。
そこで少し休憩して また西へと戻っていく。
なんという タイミングか。
3人組は かなり経ってから イルカが近くに来ているのに気付き イルカの方にむかって パドルしていく。
私は そのタイミングで ラインナップに 1人になり
静かに波を 捕まえる。
イルカたちが エンターテインしてくれたお陰で 3人組は しばらくその場に釘付けになり 私は その間に 乗れるだけの波に乗る。
最初の風を感じたのと うねりが来たのが 殆ど同時で
今日は そこで上がることにして 最後の波を捕まえる。
波は 調子よく ビーチの手前まで 続いて 今日一番のいい波だった。
7月4日の独立記念日が近いせいかどうか 最近 偽雲の
発生が 少ない。
空は いつもの夏の空のように 青く澄み渡り 日差しが眩しい。馬鹿なディストラクションがないと 世界はこんなに美しい。
けれども おかしなもので 普通じゃない空を 長いこと見せられていると いざ 普通の空を見た時 まるで 映画のセットのように感じるのはなぜだろう?
打つことを選択した日本人が多かったのは こういうことだったの?と ふと思う。
偽の情報に 何十年も晒されて来た人たちに 本当の情報が 流れて来ても 間違えた情報の方が まともに感じる。そういう意味では 人の感覚は あまり信用できない。まともな感覚でいるためには 使用頻度の高い包丁のように 定期的に研ぐ必要がある。
不安になったり、何が何だか 判断に迷う時は とりあえず 意識的に呼吸するのがいい。
最低、その行為は 自分自身と直接 繋がっている。
私たちの日常は あまりにも 人間時間で区切られていて それは 秩序だった社会を作る為には 必要なことだったとしても 不自然な秩序に 自分たちを合わせすぎて 人は具合が悪くなっているのだと思う。
時計を見て「寝るのは まだ早い」とか「食べるのは まだ早い」とか 言ったことは ないですか?
それって 時間のせいで 身体が待たされてるって
ことですよね?
そうやって 人は 自分をどんどん後回しにすること慣れていく。
だから 今度は 時計を 後回しにするといい。
ちょっと行ってくるから そこにいてねと 時計を 待たせるがいい。
時計は文句も言わずに そこにいて あなたの帰りを待つだろう。
時間厳守と脅迫しているのは 他ならない自分だったりする。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?