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創作デザート「孤独のアイスソース」

【どんなデザート?】
 冬の、急に泣きたくなるような夜のみに食べられるアイスソースです。バニラアイスにたっぷりとかけて、とびきり綺麗な銀のスプーンでお召し上がりください。紅茶との相性も最高です。

【作りかた】
①泣きたくなるような孤独を準備します。心臓がひっくり返りそうなくらいがちょうどよいです。孤独の採取方法はいくつかありますが、今回はため息から採取しました。涙から採取する方法は純度が高い反面、少し塩気が強くなります。お好みでどうぞ。言葉から採取する方法は、上級者向けなので、初めての方はため息から採取してください。

②ため息から、孤独を250g程採取しました。放っておくと、翌朝には消えてしまいますので、すぐに調理に移りましょう。砂糖はだいたい孤独の3分の2程を目安にしてください。出来れば、優しい記憶の香りを移した砂糖で作ることをおすすめします。隠し味に最適です。

③お気に入りの手鍋に、孤独と砂糖を合わせて入れ、弱火にかけます。最初は古井戸の底のような、塗りつぶした黒色ですが、弱火でゆっくりと煮詰めると次第に色が変わっていきます。

④ゆっくりじっくりと煮詰めていくと、冬の宇宙の色になってきます。オリオン座がはっきりと見えるまで、我慢強く煮詰めましょう。

⑤お好みの星の量になりましたら、火からおろして氷水に当てて冷やします。急激な温度変化によって、星屑の瞬きまで、しっかりと残すことができます。

⑥冷えたら、完成です。たっぷりとバニラアイスにかけてお召し上がりください。

【感想】
 銀のスプーンですくって、ゆっくりと口に含むと、舌の上で哀しみの星屑がぱちぱちとはじけた。バニラの甘い香りに混ざって、ほろ苦さが心臓の糸をしめるようだ。だけれども、口の中でアイスが溶けたあと、懐かしくて優しい記憶がふんわりと鼻にぬけていった。
 ひとりだな、と思う味だ。この世界に、ひとりだなと。
 ぽつんと取り残されて、どこの輪にも入れない。冬の夜空に放りだされた、寂しく取り残された月のよう。
 ひとりだなと思うのだ。
 この世界で。みんなひとりのこの世界で。

 だけれども、よくよく目を凝らすと、ちゃんと星があるように。
 遠くとも、きちんとひかっている。
 遠すぎて、触れ合うことはないけれど。
 みんな孤独なら、孤独は孤独じゃないのかもしれない。 

 〇

 去年の手帳の中に見つけたメモ(ポエム)を再編集。
 物語の中に出てくるような、不思議な感じの料理レシピが大好きで、そういう感じを目指したかった。もっとうまいこと書けると楽しくなるかな。

 こういう形式で書き溜めていけば、いずれなにかしらの形でまとめられるかもしれないので、シリーズ化していきたい。

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