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精神科の病院に1年務めて感じたこと①~精神科という悪評~

今の病院に赴任して、はや1年が経ちました。まだまだ慣れないことばかりですが、1シーズンを過ごさせていただいて、何となく雰囲気はつかめた印象があります。それらを忘れないようにするためにも、ここまで感じたことを書き留めておきたいと思いました。

ひとつ目に残念に感じたことを書くのも恐縮なのですが、わたしが感じた印象の強い順から挙げさせていただきたい。それは異動してから、知人たちに「今は精神科の病院に努めています。」と伝えると、ほとんどの人に驚かれるということです。もちろん「いままで麻酔や救急をやっていた人が、何で精神科の病院?分野が違うでしょ?」という声がほとんどなのですが、『精神科』に対するネガティブな印象も表出した感じの聞かれ方も多かった。ところがある日「それは面白いですね。で、どんなことをしているのですか?」と聞かれたことがあって、ああ、素敵な質問のされ方だなと感じました。共感による傾聴ができる人はこんな聞き方をされるのだなと。

精神科で主に治療する病気の一つに統合失調症があります。「統合失調症は、こころや考えがまとまりづらくなってしまう病気です。そのため気分や行動、人間関係などに影響が出てきます。統合失調症には、健康なときにはなかった状態が表れる陽性症状(典型は、幻覚と妄想)と、健康なときにあったものが失われる陰性症状(意欲の低下、感情表現が少なくなるなど)があります。周囲から見ると、独り言を言っている、実際はないのに悪口を言われたなどの被害を訴える、話がまとまらず支離滅裂になる、人と関わらず一人でいることが多いなどのサインとして表れます。早く治療を始めるほど、回復も早いといわれていますので、周囲が様子に気づいたときは早めに専門機関に相談してみましょう。(知ることから始めよう みんなのメンタルヘルス総合ガイドー厚生労働省ー;

https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_into.html)」 発症の原因は未だわかっていないそうですが、現在日本における患者数は約80万人(全人口の0.7%)いて、100人に一人弱。決して珍しい病気とは言えません。

かつて日本でこの病気は『精神分裂病』と呼ばれていました。みなさんはこの病名を聞いて、どのような病気をイメージするでしょうか? 人間が社会で一緒に暮らしていくために必要な「精神」が、「分裂」してしまっている病気……やることなすことがバラバラで、とても一緒に暮らしたりできない「怖そう」な病気、と感じてしまうのではないでしょうか。 そして「この病気は精神が分裂していて、わけが分からないことを言ったりしたりする」と、どこかで納得してしまうのではないでしょうか。当時は患者さんたちも医療従事者たちも、統合失調症についてどんどんと悲観的になっていき、やがてそれが社会にも浸透していき、『精神分裂病』は不治の悲惨な病気というイメージが作られていったそうです。このような背景から、2002年8月に病名が精神分裂病から統合失調症へと変更されました。もちろん現在では治療薬や治療方法が進化し、人によって時間はかかりますが、かなり治る病気になってきたとのことです。

残念ながら、上記の悪評が社会には変更から20年経っても根強く残っているのか、精神科に対するあまりよろしくないイメージがネガティブっぽい質問に反映されていると感じています。個人的には精神医療は社会生活上絶対的に必要な『手段』だと考えており、もっと積極的に前向きに気軽に受診できるようにあるべきだと思います。欧米では、ビジネスマンにそれぞれお抱えのメンターやセラピストがいるというお話も、日本ではまだ稀なようです。『心療内科』というネーミングも精神科診療の敷居を下げるために行っているものと思われますし。(精神科と心療内科が違うという先生がた、ごめんなさい。)

「最近こころの調子が悪いから、まずは受診する。」というセリフが当然のこととなるように、医療側も国民側も精神診療に対する理解を深めていかなけばなりません。そのためにまず自分ができる影響の輪は…?

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