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精神科の病院に1年務めて感じたこと④~精神科病院におけるコロナ対策~

世の中、新型コロナウィルスが猛威を奮っております。幸い今回の変異株は、感染力は強いものの、毒性は以前のものと比べて弱いとのことで、不幸にして感染された方はどうぞご養生ください。幸い感染を逃れている方々は、わたくしもそうですが明日は我が身です。お互い気を付けましょう。

さて、以前「コロナクラスターの原因」の会で、精神科病院における感染対策の難しさについてお話させていただきました。今回はオミクロン株が猛威を振るう中、「その後どうなったか?」についてお話させていただきます。

もともとICD(インフェクション・コントロール・ドクター)の資格を持っていたので、2021年2月より感染対策副委員長に任命していただきました。そして最初のミッションとして新型コロナ感染対策に乗り出したわけですが、当初は苦難の連続でした。疾病の性質から患者様の感染対策への協力が十分に得られない以上、必要十分な対策はできません。一方で「またクラスターになったらどうしよう」という恐怖感と戦う職員を目の前にして、無責任に「大丈夫です」とも言えません。患者様と職員の安全性を確保しながら、必要十分な感染対策を行う、一見矛盾したこの二つのカテゴリーを同時に達成する必要がありました。

まずは新型コロナ対策チームを立ち上げ、院内の感染状況をつぶさに把握・報告するシステムを作り、いち早く情報を集約・対応できる体制を整えました。加えて、院内の感染対策リテラシーを上げるため、マニュアルの整備やPPE着用練習会などを開催し、職員一人一人に自分ご自身でを護っていただけるよう指導しています。また、定期的に感染認定看護師を院内に招き、第3者的な視点から院内の感染対策体制を評価・指導していただいております。しかしこれらのシステムを構築したところで、やはり「大丈夫です」と言えるものでは決してありません。

この「第3の案」を想起するべくしばらくは悩んでいましたが、4月末から始まった新型コロナワクチン接種の事前打ち合わせにおいて、熱心に議論するチームの人たちを見ていて、ふとパラダイムシフトが起こりました。『「院内で感染者を一人も出さない!」と考えると、ガチガチに考えてしまってひじょうに窮屈な恰好になってしまう。むしろ開き直って「感染者が出てしまうのは仕方がない。気が付いたら感染しているのだから。むしろ感染者がでたときに、いち病棟内で食い止められないか。最悪いち病棟内クラスターは仕方がない。」と考えたらどうだろう』というものです。感染管理責任者が「クラスターは仕方がない」なんて発言はとんでもない!とのご意見もいただきましたが、わたくし自身はこのパラダイムシフトにより病院を俯瞰的に眺められるようになり、むしろ余裕をもって対策を考えることができるようになりました。

実際、昨年8月のデルタ株流行の際、院内で新型コロナ感染者の発生を2度経験しましたが、いずれも該当職員がすばやく主体的に動いてその方2名のみに感染にとどめ、幸い院内クラスターは起こりませんでした。職員みんなの協力に感謝です。

今回のオミクロン株はどうなるか…今のところは何とも言えません。しかし「絶対大丈夫」とまでは言えないものの、この仲間たちとであればなんとかなるのではないか、と今はワクワクしております。不謹慎でしたかね。笑

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