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精神科の病院に1年務めて感じたこと③~営業活動をはじめました~

そもそも病院って、中がどうなっているのかわかりにくいと思いませんか?
どんなスタッフや患者さんがいて、どのような活動をしているのか。
もともと医療機関は患者様の個人情報保護のルールのもと、なるべく外からはわかりにくいように作られています。特に精神科は疾病の性格上、ほかの科よりも気を遣うことが多い。わたくし自身も実際に勤務してみてたくさんの気づきがありました。今回はその中の1ページを紹介させていただきます。

現在、全国的に赤字が継続していて経営が苦しい病院が多いのです(コロナ特需の恩恵を受けている病院は別ですが…)が、当院もご多分に漏れず苦しい状況にあります。その要因の一つとして挙げられているのが、「新型コロナ感染拡大以前から前と比べて患者数が減少している」ことでした。たとえば、統合失調症に関しては治療薬や治療方法が飛躍的に進歩して、以前と比べて入院しなくとも治療→軽快する方が増えたそうですが、これは患者さんにとっていいことです。(病院にとっては微妙ですが…。笑)その話を聞いてふと思ったが、「精神診療において、この病院の地域におけるニーズってどうなっているのかな?」という疑問でした。

この質問を病院幹部やスタッフ数名に聞いてみましたが、残念ながらあまり興味を引くような返事は得られませんでした。SNS上の書き込みをチェックしてみると、その内容は惨憺たるものでした。(笑) しかも詳しく見てみると書き込みが古いものが多く、最近のものはあまりありません。これはヤバいと思いました。ネガティブな内容の書き込みはもちろんよろしくないのですが、それよりもマズいのは世間が当院に対して無関心になることです。それは、社会的に必要とされていないことを意味するからです。

そこで昨年5月、院内で営業部隊を編成し、地域のニーズを拾うとともに、この病院をアピールすることを提案しました。折しも4月に新院長が就任し、新体制をアピールするいい機会捉えたからです。
https://www.hkh.or.jp/

ところが当初、職員からは大ブーイング!「なんで看護師や他の職員がそんなことしなきゃいけないんだ!」「ただでさえ忙しいのに、そんなことまでしてられません!」など、とても協力が得られそうな雰囲気ではありませんでした。その時気が付いたのは、自分の活動がアウトサイド・インであったということです。目的は正しいとしても、Win-Winな関係性の上での活動でなければ、相手の協力は得られません。自分が先走ってしまったが故に、相手のWinを考えることをしていませんでした。そこで、一番反対していた職員から順に共感による傾聴を行い、反対意見の奥底にある気持ちを探りました。その結果わかったのは、「病院に協力・貢献したい気持ちはあるが、営業などしたことがないのでどうしたらいいかわからない。」「もし間違って相手を怒らせてしまったら、病院に迷惑がかかってしまうので不安だ。」ということでした。

このことを事務長に報告し、作戦を立てます。まずは営業のノウハウを知っているスペシャリストを新たに雇用し、その方を中心に体制を整え、そこに職員も乗ってもらって、不安を取り除きながら、一緒に活動をしていただくというものでした。幸いとても人格の高いスペシャリストが見つかり、営業体制を整え、今では病院職員も本来の業務を遮らない範囲で営業活動をしていただいております。訪問をした職員からは、「地域の介護施設ってこんな感じなのですね。」とか「(院外の)ケアマネさんとお話して、地域の事情が良くわかりました。これから対応策を立てていきましょう。」などのお言葉を頂けました。

実際にわたくしも何度か営業訪問に出ましたが、そこでの反応は期待以上のものでした。まず、精神科病院の人間(特に専門職)が挨拶に来ることに驚かれます。そして、病院の内容を説明すると「知らなかった。精神科病院ってそうなっているのですね。」という意見が多く聞かれること。最後に「ぜひ今後良好な関係を作っていきたい。」というお話でまとまることです。まず相手を理解し、そして理解されるよう努めたことが良い結果に結びつきつつあると実感しております。

だんだん病院の認知度が上がってきたのか、徐々に依頼が増えてくるようになりました。まだ当初の目標値には届いていませんが、今後も自分の立ち位置を自覚して、影響の輪に集中するよう努めます。

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