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Jun Yamamoto 音楽を語る

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音楽を語ります。具体的に詳細に、譜面を示して語ります。めっちゃ語ります。
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記事一覧

Tchaikovsky Symphony No.6 Movt.3 (2)

チャイコフスキーの悲愴を取り上げるのは「私の記憶がたしかならば」二回目。第3楽章のブライトコプフの楽譜で練習番号Dの部分。

同じ音形がバスの上で、バイオリン、クラリネット、ビオラ、ホルンと受け渡されるのですが、ちょっと変わった響きになっています。和声的には最初のバイオリンがDの和音(所謂ホルン5度)で、次のクラリネットがEb7(バスのC#はEb7の7度音のDbと同じ音)、ビオラがEの和音でさらに

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Brahms Symphony No.1 Movt.4

「小澤征爾さんと、音楽について話をする」という小澤征爾・村上春樹両氏の対談があるのだが、その中でブラームスの第一交響曲第4楽章のホルンの息継ぎ問題が語られている。本には一切譜例がないのだが、著作権も切れているのだし、例示なのだから、ちょっとした譜例くらい載せればいいのにと思う。が、まーいろいろ事情があるのであろう。次の部分である。

「ホルンの患継ぎの真相

村上「ところでこの前のとき話した、ブラ

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Berg "Violin Concert" "Lyric Suite"

ベルクの音楽の独自性、美しさ、は十分認めるものであるが、時々、「これはいくらなんでも間が抜けてないか」と思うときがある。

上の譜例はバイオリン協奏曲の第一楽章で、リズミカルな主題が提示されるところだが、これはまぬけである。音はこちら。

下の例は、弦楽四重奏のための叙情組曲の第一楽章冒頭部分だが、このタタタンタンタンタンも相当なものだと思うが、どうだろうか。この音形はこの楽章を通じて繰り返される

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Mariya Takeuchi "Shuugakushou" 竹内まりや ”終楽章”

「けんかをやめて」といい「終楽章」といい、竹内まりやさんの描く女はもうとんでもない奴ばっかりだ。「誰が悪いわけじゃなくて」って悪いのはおまえだろ。あやまれ(笑)

「終楽章」は9thのかたまり。どんだけ9th好きなんだよっていう。9thにすべて赤丸をつけてみました。こうやって和声のrealizationをしてみると、竹内まりやさんの曲がいかにバークレーメソッドに忠実に作られているかがよくわかります

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Hikaru Utada "Ore no Kanojo"

祝!宇多田ヒカル復活!

というわけで『俺の彼女』(アルバム「Fantôme」から)のこの部分。

このメロディーラインは4小節目の頭でC に行くべきところC#にいく。これは新しいね。

Diana Krall covers "California Dreamin'"

Diana KrallのWallflower は大変なアルバムである。古今の名曲のカバーアルバムで、Krallが歌っているというだけでなく、プロデュースが David Fosterなんである。あー。

で、California Dreamin' はJohn Phillips and Michelle Phillipsの曲で、The Mamas & The Papas の1965年のカバーでヒット(

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Toru Takemitsu Viola Concerto "A string around autumn"

注文しておいた武満徹「ヴィオラコンチェルト」の楽譜が届いた。

気になっていたところをチェックしたが、三善晃さんあたりのスコアとくらべるとはるかにわかりやすい。

(1)15分もかかる大曲なのに、アレグロがない(そういう概念がない)

(2)対位法的なパッセージがない。糸がもつれるようなのはあるが、対位法的とは言いがたい。一瞬で終わるし。

(3)オーケストレーションは職人技。

(4)和声の構成

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Beethoven String Quartet No. 10 Movt.3

ベートーベンの10番の弦楽四重奏曲の第3楽章は、お得意の1小節一拍で振らないと振りきれないスケルツォである(速度表示はPrestoになっている。)

最初から飛ばしていく、急速な音楽であるが、途中でpiu presto quasi prestissimoになる。

そこまでも相当過激な音楽なのだが、この部分で、ベートーベンは完全に突き抜けてしまい、別世界に突入する。譜例に示したように、ところどころ

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Richard Strauss "Metamorphosen"

初めて第一バイオリンが入ってくる部分。リヒャルト=シュトラウスとしてはそれほど驚くような和声の扱いではないと思いますが、赤矢印の部分は普通じゃないですね。11小節目のバスのdisは倚音ですが、シュトラウス印。音はこちら。

クラシック音楽における即興演奏

クラシック音楽の即興演奏というのは、もともとは行われていたのだろうけれど(バッハ時代のオルガンの即興演奏とか、コンチェルトグロッソでソロが即興演奏するとか、バスコンティニュオだけ見てチェンバロを弾くとか。モーツァルトやベートーヴェンもコンチェルトではカデンツァを即興演奏しただろうし、パガニーニ、リスト、ショパンあたりも即興演奏をしたかもしれない)その伝統が絶えて久しい。数字付バスだけみてそこそこ演

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Schönberg Kammersymphonie Nr. 1 E-Dur op. 9

シェーンベルクの作品番号の若いものには好きな曲が多い。これもそう。編成が斬新だったので当時は賛否両論あったようだが、それ以上に音の使い方がすごい。だいたい、ホ長調と銘打ってあり、最初にホ長調の調号がかいてあるのに、ハナからこれである。とりあえず半音上のヘ長調に終止する。音はこちら。喧嘩を売っているとしか思えない。

つづいて有名なホルンによる完全4度を積み重ねていく動機が提示されて、そのあとに主題

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Kaori Nabeshima "Exotic Dance" for Alto Saxophone and Piano

この作品がNHKの朝のFMの番組で流れていて、「おお!」と思ったのが、鍋島作品を認識したはじめ、であった。すみません、遅くて。

大きく上下に展開したピアノのC音の強奏から始まるこの曲は、アルトサックスの最初の4つの音、C E D Bb これでノックアウトされるように書かれている。(譜例は骨格だけを示しており、表情記号などを捨象している。あしからず)

この4音がExotic DanceのExot

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Wagner "Ride of Valkyries"

『ワルキューレの騎行(Ride of the Valkyries)』は、ワーグナーの楽劇 『ニーベルングの指輪』の第一夜 楽劇『ワルキューレ』の第三幕の前奏曲です。

このブログ、手当たり次第にいろいろなものを取り上げてきたので、筆者自身も何をいつどういう形で取り上げたのか忘れていて、「これやってないよな」というのを確認しないといけない。前回ワーグナーを取り上げたのは、ジーグフリートの葬送行進曲だ

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Herbie Hancock Solo in The Eye of the Hurricane (1965)

ハンコックがMaiden Voyageというアルバムを出したのが1965年。ここで聞くことのできるイディオムを多少なりとも消化するのに50年かかっているとはなんたることであろうか>ワシ

日本のピアニストでも坪口昌恭さんあたりは、ハンコック節を完全にマスターしておられるのは知っているが、なかなか理屈ではまねできないところがあるんだよねぇ。

ここではMaiden Voyageに収められたThe E

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