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サッカーが失われた日々に、タクシーについてつづる物書き



旅とサッカーのOWL magazineをやっていく上で、オフシーズンのネタ欠乏は深刻でした。何を書いたらいいのやらとみんなで考えていた日も今は昔。

シーズン開幕早々、試合が延期になり3月後半になってもネタがない状況が続くとは思ってもみませんでした。そして、恐るべき事に試合が再開するのは5月かもしれないし、6月かもしれません。

そして、6月、7月、8月になってみたところで再開はしないかもしれません。宇都宮徹壱さんが、100日後に死ぬライターというテーマでコラムを書いていますが、エンタメ系の物書きにとっては試練が続きそうです。


といってもぼくは幸せな物書きです。


何故ならぼくは「遅筆で有名な先生」なので、埋もれているネタが山ほどあります。正直1年くらい試合がなくても書くことには困らないという……。

それはどうなんだという気もしますし、あんまり古い話ばかり書いていても仕方がないところです。何より、さっさとFC東京の試合が観たいのではやくサッカーを再開して欲しいわけですが、同時に、Jリーグには日本のエンタメ・ショービズ業界の中で、最も慎重で模範的な動きを期待しています。

そう考えると、しばらくは難しいのかなという気がしています。試合がないと書くことがない。そうなってしまうライターさんはとても多いと思いますが、ぼくの場合は試合にはまったく依存していない物書きなので実はあまり問題がありません。

そもそもぼくのサッカー記事は、サッカー以外のことばっかり書いてあるので、サッカー記事ですらないかもしれない。選手や関係者にもインタビューをしないというスタンスなので、何も困らないわけです。

ただ、旅が出来ないのは困ります。サッカーの試合の前後にある旅という文脈を主眼に据えて文章を綴っているわけですから。サッカーがなくても旅があるならば何とかしようもあったのですが、今は旅もサッカーも出来ません。

だから過去のものは溜まっているので何とかなるのですが、新規のネタは集められないというのが現状です。というわけでぼくだけではなくOWL magazineのメンバーも苦戦をしていますが、やはり「何か書きたい」という気持ちで集まってきたメンバーなので、何のかんので原稿は出てきます。

というか、ボトルネックになっていたのが、ぼくの編集作業なので実はまだ眠っている原稿も多数……。しゅんさん、まりおさん、すみませぬ……。


とまぁ色々ありますが、

何のかんのでぼくは幸せな物書きです。


稼ぎはいつもいまいちですが、書くことに困ったことはありません。書くための環境整理やら育児やら体調管理やらにはいつも困っていますが。

特に今は収入面でもあまり困っていません。それは、1月からタクシー会社に入社したからです。久々の真面目な会社員生活です。

どうでもいいけど知り合いに「社会人おめでとうございます」とか言われてちょっと苛つきました。フリーランスは社会人じゃないのか。それともぼくだからなのか。社会人という言葉は、日本にしか存在しない上、意味も曖昧なので廃止したほうがいいような気がします。

さておき、ぼくは今タクシー事業を行っている会社に就職し、ハンドルを握りながら文章を書いていこうとしています。後で有料部分にでも書きますが、給料はなかなか良いのと時間もかなり自由が利きます。

この記事にはタクシードライバー業務のことを書きます。個人的なことなので自分のnoteに書こうかとも思ったのですが、そもそも旅とサッカーのネタが少ない時期なのでOWL magazineに書いてしまおうと思います。


さて、タクシードライバーの仕事は何だと思いますか?

答えは簡単です。

お客さまを目的地まで安全になるだけ速く運ぶことです。

つまり、タクシーとは旅客運送業なわけです。ただ、タクシーは電車やバスに比べて高額な乗り物です。ヘリコプターなどの特殊なものを除くと、一番高価な移動手段とも言えます。

どうして高価な移動手段をわざわざ選ぶのかというと、タクシーを選ばざるを得ない事情があるからです。その事情は、雨などの悪天候や荷物が多いこと、あるいは急いでいることなど様々です。

電車で2駅なら電車に乗る方が多いと思いますが、電車が少し回り道をする上に乗換が発生する。しかも荷物が多い。などという場合はタクシーを使うことが選択肢に入ると思います。

タクシーを使うシチュエーションの中で最大のものは、タクシーしか移動手段がない状態でしょう。それがいわゆる終電後から始発前まで、電車やバスが動いていない時間です。

この時間帯は深夜割増料金になることもあってタクシー業界の一番の稼ぎ時です。専門用語で「青タン」と言うそうです。タクシードライバー目線で言うと、一部の街に東京中の腕利きドライバーが集まってくるため、激戦中の激戦になります。

そこではポジショニングと他者へのブロック、客を誘うドライビング、法令との戦いなど、客目線では見えない熱いバトルが待っています。これは懸賞金付きのスポーツといってもいいと思います。上手い人と下手な人では稼ぎがだいぶ違ってくるようです。そしてタクシーは歩合制なので、上手い人はしっかり稼ぎます。稼げない人はあんまり稼げません。

ちなみに深夜の激戦区になるのは銀座です。銀座という街は、日本で一番お金持ちが集まって飲んでいるところなのだそうです。

その中でも銀座八丁目というところに高級店が集まっています。終電近くまで銀座のクラブで飲んで、タクシーチケットを使って自宅まで眠って帰るという方々が飲んでいます。そういったお客さまに乗って頂くためのバトルが繰り広げられているわけですね。

ところでこの銀座八丁目、何か覚えがあると思ったらOWLで行ったことがありました!!

宇都宮徹壱さんや、マレーシア在住のSeinaさん一家と新橋で飲んだ時でした。二次会をどこにしようかと考えていたら、貴族の円子さんが「知っているお店があるから行きましょう」と言い出しました。

それで連れて行かれたのが並木通りにあるお店であり、一番の高級店が集まるとされる銀座八丁目でした。いやいや、ここは流石に場違いなんじゃ……。と途中から円子さん以外の全員が思っていたわけですが、ともかくエレベーターで3階まで行って、お店の中を覗きました……。いやぼくは覗けなかったのですが、覗き込んだあすかさん曰く「ここはお座りするだけで数万円取られるお店ですよ」とのこと。

「あれ?なんか間違えたかな?」

と天然型貴公子の円子さんが引き返したことで、うん良かった、やっぱり場違いだったよねと全力で引き返しました。

というわけで、近くの地下にあった誰も客がいない謎の中華料理屋さんで二次会から帰還したわけですが、あの中華屋さんなんであんなところにあったんだろうか。謎は残りますが、OWLで銀座に侵入した時の思い出についてはこれでおしまいです。

我々は安い中華料理を食べた後、全員電車で帰りましたが、飲み代を会社の経費として落とせるような人や接待用のタクシーチケットなどを持っている人は、タクシーで帰ることもあります。どうして銀座での飲み代が経費として計上できるのかについては、ぼくは知りません。どういう名目なんでしょう。バブルの頃はこういう用途が非常に多かったようですが、今でも多少は残っているようです。

タクシードライバーは勤務スタイルが特殊です。

ぼくの勤務スタイルは「隔日」で、2日に1回、18〜21時間くらい働きます(休憩3時間含む)。出庫してから帰庫するまで21時間を超えてはならないという鉄の掟があるので、それ以上の残業はありません。車庫を出て20時間ということは、勤務スタイルはこんな感じになります。

朝6時に出庫 → 翌日午前2時までに帰庫
朝10時に出庫 → 翌日午前4時までに帰庫
午後3時に出庫 → 翌日午前11時までに帰庫

熟慮の末、ぼくは最後のパターンになりました。会社によってはある程度強制的に決められてしまうこともあるようですが、うちの会社では希望が100%通りました。

午後3時に出庫 → 翌日午前11時までに帰庫

なんでこのシフトにしたのかというと一番稼げるからであり、執筆も進めやすいからと考えたからです。

というわけで、乗務することでお金を稼ぎ、ついでにタクシー飯記事を書き、欲を言うとビジネス系の記事まで手を出したいと考えています。言って見ればタクシー乗務というのは「取材」のようなものなので、ネタの宝庫です。お客様に関する情報を開示するのはコンプライアンスに触れますので、特別に許可を取ってから、あるいは、十分な時間が空いてからプライバシーに影響がないと判断してから書きます。


というわけで近況を兼ねた軽めの雑記でした。仕事にも慣れてきたので今後は執筆に割ける時間も増やせると思います。何が辛かったって、タクシー乗務ではなく、延々と続く研修でした。研修が終わったら怖い物はない!!

さて、無料版はここまでとして、有料版ではおまけコンテンツとして「タクシー運転手の給料どんなもの?コロナで影響はあるの?」について赤裸々GOGOしようと思います。

今年は長いオフシーズンになってしまいましたが、OWL magazineでは月に15本という鉄のノルマを守るため、必死にサッカーネタをかき集めています。いや、よく考えると更新に苦労するのは毎月のことで、OWL magazineは平常運転と言えるかもしれません。

是非これを機会にOWL magazineのご購読を!!

え?弱い?

弱いよね? いいじゃんいいじゃん、家に引きこもっているならどうせなら少しでもサッカー濃度あげようぜ!ほら、いいじゃん、いいじゃん!!

実は、生まれ変わったらチャラ男になってナンパとかしてみたい中村慎太郎でした。

というわけで↓ではみんな大好き銭の話です。

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