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ブラジルからロシアへ。現地組も、国内組も、この祭りを楽しもう!!

2018年、ワールドカップの舞台はロシア。

本当ならば今頃、ぼくもロシアにいるはずだった。しかし、計画が狂ってしまったのだ。これはとても悲しくて切ないことだ。

寅さんは……。FC東京サポーターの仲間であり、もっと広い意味でのサッカー仲間であり、ブラジルワールドカップでは時に行動をともにした寅さんは、今、シベリア鉄道に乗って西を目指している。

なんと羨ましい……。何もない大地。永遠と続く大地を、ひたすら電車で進んでいく。ぼくの憧れの旅だ。なんと羨ましいことだろう。

そして、シベリア鉄道に乗ってワールドカップに行くことは、一生で今しか味わえないことなのだ。

ワールドカップは一期一会だ。

ワールドカップがこれほどの価値を生んでいるのは、4年に1回しか開催されないからだ。ブラジルワールドカップは生きているうちに再び開催されないかもしれない。ロシアも同様だ。

例えばイングランドワールドカップが前に行われたのは、1966年。52年前である。ということは、次にイングランドで開催された時は、サッカーの母国で開かれるワールドカップを体験する最初で最後のチャンスになるかもしれないのだ。

今日は2018年6月14日。その4年と1日前、ぼくはリオデジャネイロにいた。

目をつぶると、今でも鮮やかに蘇る。

治安の悪さに怯えながらも、これから開幕するワールドカップの空気に打ち震えていたあの時を。

その時のことを改めて書くつもりはない。現地からブログ記事にも書いているし、もっとちゃんとした文章として電子書籍にもまとめたからだ。

ブログ
電子書籍 Jornada

ロシアワールドカップ現地観戦は外れくじだとも言われている。

「正直ロシアワールドカップには行く気がなくなった。チケットはキャンセル出来ないから行くけどさ……」

そんな書き込みを見るようになった。無理もない。あれだけのことがあったのだ。

我々が日本代表に重ねていた夢や希望はすべて打ち砕かれた。残ったのは、日本でよくみる醜い政治闘争であった。

サッカー協会会長の顔なんか知りたくもなかった。発言なんか聞きたくもなかった。裏方でいてくれたらよかった。すべての手柄は選手や監督、そしてサポーターのものとして欲しかった。

もちろん、裏方を評価することは大事だ。

でもな、日本代表はサッカー協会のものじゃないんだ。日本のサッカーを「公益」として管理するのがサッカー協会であって、個人の持ち物のように扱ってはいけないのだ。

それは負け犬の遠吠えなんだろう。むなしい話だ。ぼくらはハリルホジッチ解任の際に意見を聞かれることも、票を投じることも出来なかった。ただ見ているだけだ。

それが愚かな判断だと思っても止める手段もなかったのだ。

無力感に押しつぶされた。

そんな中、大きな衝撃があった。

ハリルホジッチ監督の解任から始まる醜聞の連続を受けて、二次予選からほとんどの試合を現地観戦していたYさんが「もう代表どうでも良くなっちゃった」と呟いたのだ。

Yさんとはブラジルでは会っていないのだけど、後から写真を確認したら、コートジボワール戦でサポーターが振り回した水色のゴミ袋を僕に手渡してくれたのがYさんだったことがわかった。

現地の商店を駆け回ってゲートフラッグの材料を集め、徹夜で仕上げたなんて話を聞かせてくれた。昔の記憶なんで細部は違うかもしれないけど。

セレッソ大阪サポーターでもある彼女は、2014年に降格が決まる年、そうセレ女が現れて、すごい勢いで去っていった年にも最後まで諦めなかった。

フードパークでたこ焼きをおごってくれて、吹田よりも、長居のたこ焼きの方が美味しいよと笑っていた。

そして、鹿島アントラーズに破れ、降格が決まった後も、彼女が応援をやめることはなかった。

もちろん日本代表の応援も一緒だ。

クイアバでは、偶然同じ飲み会にも参加していた。もっとも大きな飲み会だったので直接挨拶はしていない。飲み会には、試合に勝つことを見越してサンバ隊が呼ばれていた。

コロンビアとの試合に負け、サポーターとしての姿勢、サッカーを楽しむ姿勢でも遠く及ばないことを思い知らされ、打ちのめされた夜。

ぼくとYさんは同じ場所で、狂ったようにうるさいサンバを聞いていた。戦場で聞くマシンガンの音はあんな感じなんじゃないだろうか。

お通夜のような飲み会に鳴り響くマシンガン。誰も喜んでいないのだが、一人だけ高台に登って踊っている日本人がいた。もしマシンガンを持っていたらあいつを撃っていたはずだ。その日本人は、ケイタという人で、友人の友人だった。

あの時の太鼓のリズムをぼくは一生忘れない。きっとYさんも忘れないんじゃないだろうか。

最低の気持ちで、飲み会を後にしたのだが、宿泊先まで送ってくれた日系人家族との会話は面白かった。

「ポルトギー(ポルトガル語)は覚えた?」

「うん、覚えたよ!女性にはボニータって言って微笑むだけでモテるよ!」

もちろんジョークである。されど一家は、大爆笑。

「それじゃもっと上級の口説き方を教えてあげるわ。ボニータは子供向けだからね。大人を口説くときは、美しいっていう意味の単語があって……」

「オブリガード!これからサンパウロ行くからその時に使うよ!」

「撃たれないようにね」

そんな会話であったように思うのだが詳しいことはよく覚えていないのだ。酷い夜。酷い酒になった。

メモなんかいらない。あの日のことは鮮明に覚えている。

サンパウロから60時間くらいかけてバスでやってきた井戸さんと一緒にスタジアムの周りをうろついて、どっちのチームが勝つだろうかとコロンビア人と話していた。

待機列でコロンビアサポーターがチャントを歌っていたので俺たちもやり返した。あまりに声が揃っているのに驚いたのか、彼らは沈黙してしまった。あの時のバモニッポン、みんな覚えているかな?

後ろのほうではゴジラのマスクをかぶったUGさんがブラジル人を脅していた。

入場ゲートで止められたペルーが日本語で文句を言っているのを見捨て、スタジアムに入ると、一平くんがブラジル人に大人気になっていた。

広場で、ぴろぽんぴんが白粉を塗ってボーリングのピンに変身した。クラウジーニョは戦いの前にピッチを睨み、バモは「俺はウルトラスだぜ、文句あるか!」という顔をしていたのに、鼻の下を伸ばして南米の美女と写真を撮っていた。

暑さにちょっとやられ気味のさおりんとマルコフを横目に、FJまりこといつものサッカー談義をする。

ツンさんはいつも囲まれて写真をせがまれている。ここが戦場ならツンさんほど優秀な「おとり」はいないだろう。ツンさんが撃たれている隙に、こちらはゆうゆうと目標を達成することが出来る。

帰り道には「はとのす」ユニフォームを見つけてくれたyukaさんとクイアバで初対面。

その後、ぴろぽんぴんの割れたiPhoneを頼りに、マサさんと3人でクイアバの町を彷徨った。祝杯を上げるコロンビア人の間をすり抜けながら重い足取りでさまよい続けた。

試合には負けた。完膚なきまでにたたきつぶされた。

でも、あの時以上の思い出はないのだ。

ぼくの人生の中でも、クイアバまで行って、仲間と一緒に日本代表を応援したこと以上の経験はない。これがワールドカップだ。これこそがワールドカップだ。勝つとか負けるとかは、とっかかりとしては大事なのだが、本質ではない。

コロンビアは強い。日本よりはるかに強い。しかし、歴史的に見ると大した成績を上げてはいないのだ。ブラジルの前の2大会は出場すら出来ていないのだから。

だから、コロンビア人は割り切っていた。

「優勝することだけが目的だ。我々サポーターは勝利のためになんでもする。たとえ死んでも構わない。何としてでも優勝したい!!!」

そんなことをいうやつはいない!!


「ワールドカップに出場できた。世界一の祭典に参加できた。どこまでいけるかわからないけど、負けるまでは楽しめるぜ。日本よ、勝敗なんてどうでもいいじゃないか。一緒にこの祭りを楽しもうぜ。どうせ、お互いどこかで負けるんだから」

現地にいた人ならわかると思うが、コロンビア人は概ねこんな感じであった。極めて友好的だったし、お祭りを楽しんでいた。もちろん、狂信的なナショナリストもいるかもしれないが、ワールドカップに来るのは富裕層なのである。

4年に1度のワールドカップで、コロンビアと日本がめぐりあうなんていうことは奇跡なのだ。その瞬間を楽しまなくてどうするんだ。

カンボジアのプノンペンからシェリムアップへと向かう飛行機で、隣りに座ったのはコロンビア人だった。彼は英語で話しかけてきた。

「日本人!ワールドカップで試合したよね!」

「ぼくは現地で試合を見ていたよ、ブラジルのね。」

「本当かい!!わーお、すごいね!!ブラジルまで行ったんだね。コロンビアにはファルカオっていう凄い選手がいるのを知ってるかい?」

「もちろん知ってるよ(サッカーをよく知らない人だなと気づく)。ブラジルでは怪我で出れなかったんだけどね。コロンビアは本当に強かったよ。」

人懐っこいコロンビア人の話は永久に終わらないのではないかと思えたが、この不思議な縁を楽しみ、しばらく話していた。

我々日本人と、彼らコロンビア人には、一生もののつながりが出来たのだ。

なぜならワールドカップで戦ったからだ。

それこそがワールドカップである。ワールドカップは、ドイツやブラジルのものではない。彼らは主役だが、彼だけが楽しめる大会ではないのだ。

そして、

そのコロンビアと、

ロシアで戦うのだ!!!


なんたる偶然。まさしく奇跡だ。これこそが奇跡だ。厳しい戦いを勝ち抜いてワールドカップへとたどり着き、そして再び相まみえる。

ワールドカップにおいて、前の対戦相手はコロンビアである。そして次の対戦相手もコロンビアである。こんなことがありえるのだろうか。

サランスクへと赴けば、あのクイアバですれ違ったコロンビア人と再びすれ違うことになるのだ。共にバーベキューをしたコロンビア人ともう一度バーベキューをすることが出来るかもしれない。

ブラジルの奥地の奥地、パンタナール湿原の玄関口であるクイアバから、ロシアの片田舎にあるサランスクへ。

地球規模のビッグドラマを体験できる唯一最大のチャンスを前に、ぼくは日本にいる。

仕事が不調だったこともあるけど、我武者羅になって、なりふり構わずに行こうと思えば行けたかもしれない。しかし、ぼくは作家として結果を出していない。この間は割と親しい人からも結果を出してから物を言えと言われてしまった。悲しいことだが、確かにその通りなのだ。

結果とは何か。作家というのは、何かしらの作品を商業ベースで世に出す人のことで、そういう意味においてはぼくは結果を出している。しかし、その後に続く流れを生み出せずにいる。

『サポーターをめぐる冒険』(ころから)は、日本ではじめてのサポーター文学であると称賛されたし、重版もしているわけだから成功したといえる。しかし、サポーター文学を書き続けることは機能的に不可能だった。もし出来るとしたら、ぼくが死ぬ間際にしか書くことが出来ないことだろう。

あれは一旦おしまいなのだ。その後、スポーツツーリズムという観点から書き始めようとしたが、いくつか問題点があって書籍化には至らなかった。旅をテーマにした文章というものは、ウェッブ記事や、飛行機や新幹線の座席に置かれている冊子などには適しているものの、一つのテーマを持った書籍にするには色合いが薄くなってしまうのだ。何度か書き直したが、出版する迫力までは出せなかった。

であれば、ウェッブで出すべきなのだろう。ウェッブであれば写真も自由に使えるし、字数の制限もない。最近はnoteを使えば有料コンテンツも容易に作れるようになっている。

サッカーと旅、いや、スポーツと旅というテーマで、良い文章をかけるようになり、ウェッブコンテンツとしても魅力を高め、その売上を基本としてワールドカップに行くべきなのだろう。それが出来ないうちに次の旅をすることは出来ない。

2022年までが勝負だ。

どういう勝負をするかというのは、ワールドカップに関して言うと3つの戦いがある。

1つは、スポーツと旅をテーマにしたnoteの有料マガジンをリリースして、成功させること。有料コンテンツである以上、お金を払うに値する面白いものにしなければいけない。このプロジェクトをこれから4年間の基幹と考えて注力していこうと思っている。

2つ目は、サッカーの競技そのものについての造詣を深めること。ハリルホジッチを解任へと追いやったのは、我々がハリルホジッチのサッカーを理解できなかったからなのだ。競技としてのサッカーは、ヨーロッパの人が考えただけあって非常に複雑で難解なものだ。しかし、サッカーの魅力はサッカーなのである。スタグルとか、旅とか、マスコットとか、色々な付加的な魅力があったとしても、サッカーの最大の魅力はサッカーなのだ。その点についてより深く言及できるようにするというのが大きなテーマだ。

3つ目は、新しい挑戦だ。ワールドカップ期間中は、ニコニコ動画公式において、日本代表戦を実況・解説することになった。

代表戦の実況・解説である!!

ニコニコ公式は、もちろん民放ほどの視聴者数はないだろうが、万単位であることは間違いない。予想がつかないのだが、場合によっては10万人を超えるかもしれない。

そんな中で、実況・解説という今まで経験していない仕事をする必要がある。それも、ワールドカップの日本代表戦である。

もちろんニコニコ動画は放映権を持っていないので、試合の動画は各自テレビで流しつつである。

オファーを頂いた時は受けない手はないので即答で承諾したのだが、実際の所かなりのプレッシャーがかかる仕事である。いかようなテーマであっても、4時間ちかくライブで話し続けるのは非常に大変だし、不正確な言及をすると、すぐに火だるまになってしまうことだろう。

とはいえ、サッカー分析回のラウ・チェンこと、五百蔵老師がいるので、困ったら全部投げるという捨て身の戦略なら何とかなると判断した。

知識的な漏れがないように資料を整理する時間がそれなりに必要なので、やはり大仕事ではあるが、やりがいもある仕事だ。ぼくのキャリア上、テレビの実況解説をすることは考えづらいので、サッカーの喋りの仕事としては、最高峰と考えていい。

ロシアに行けなかったからこそ与えてもらったチャンス。精一杯務めて、次のステージに進もうではないか!!

【サッカーW杯 日本×コロンビア】地上波では絶対流せない実況 ~ダバディ、戦術マニアら 大放談~

【サッカーW杯 日本×セネガル】地上波では絶対流せない実況 ~ダバディ、戦術マニアら 大放談~

【サッカーW杯 日本×ポーランド】地上波では絶対流せない実況 ~ダバディ、戦術マニアら 大放談~

(タイムシフト予約をポチっと押してもらえたら後からでも視聴できます。ご面倒ですが是非ポチっとして下さい!)

タイトル上、ぼくも戦術マニアという括りになっているものの、当然のことながらぼくは戦術マニアではない。強いて言うならばサポーター文化屋さんなのである。ただ、現代のサッカーは科学的なアプローチをすることが多いので、元科学者という肩書き、というよりも、思考形態はそのまま援用できそうだ。

座組的に司会的な振る舞いも求められそうなので、どこで誰に何を聞くかもしっかり考えておこう。

まさか代表戦について、仕事として話す機会が来るとは思わなかった。大学院の時のサッカー部の仲間とはほとんど連絡をとっていないけど、みんな驚くんじゃないだろうか。

あの時、みんなと夜な夜な語ったサッカーの話が、電波に乗って日本中に広がっていくのだ!!

ぼくには夢がある。

世界中を旅をして、世界中でスポーツを楽しんでいる人たちの顔を見て、それを次々と文章にしていくことだ。

そんなこと、最初は出来るわけがないと思っていた。でも、今は自信がある。文章力も、取材力も、旅する力もある。表現もできるし、告知も拡散もできる。後は、自分の表現を、お金に変えて、活動資金を作ることだけが課題なのだ。

何を書いたらいいかわからないとか、書いたものに自信がないとか、そういうステージではないのだ。あともう少し。虹には指がかかっている。ここが踏ん張りどころだ。ここで頑張れば、きっと夢に描いたような世界が手に入るはずだ。

We believed we'd catch the rainbow


そんな曲を聞いていたのは高校生の時だが、もう虹は虹ではない。はるか彼方には浮かんでいない。今あるのは、目の前にある具体的な仕事だけだ。やってやれないことはない!!

ロシアに行っているサッカー仲間がどんな冒険をしてくるのか。

ハトトカの相棒、マツメイラス松田は、ロシアで通訳の仕事をするつもりだったのにその仕事が飛んで、予算が30万円ショートしたのだそうだ。慌てて金策に走るがなかなか難しいことだろう。

という愚痴をコンビニの店員に話していたら、後ろに並んでいたのが、スタンという男で、モスクワにいる父親に口を利いてくれるそうだ。

さて、あなたならば、コンビニで後ろに並んでいたロシア人を信用できますか? そこで飛び込むのが松田という男なのである。止めても無駄だ、聞くわけがない。どこへでも勝手にいくがいいさ。

というわけで、2018年FIFAワールドカップロシア大会!!!

始まるよーーーー!!!!!


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