解任されたハリルホジッチ監督とは何者だったのか【サッカー記事キュレーション&考察 vol.2】
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解任されたハリルホジッチ監督とは何者だったのか【サッカー記事キュレーション&考察 vol.2】

中村慎太郎 旅とサッカーを紡ぐOWL magazine

「ハリルホジッチ監督、W杯直前で解任」という衝撃のニュースから、8日間が経過しました。

その時書いた「発狂記事」
ハリルホジッチ解任でサッカークラスタが発狂している理由

また、解任から数日後に行われた日本サッカー協会田嶋幸三会長のインタビューもセンセーショナルな話題になりました。

そしてこちらが田嶋会長の発言を元に考察した「裸踊り記事」
サッカー協会会長の発言を解読してみた【NHK生出演】

こういった記事を書いてはいますが、ぼくはサッカーの専門家ではありません。戦術分析も出来ませんし、それほど多数の試合も見ていません。ただ、サッカー記事やサッカー本を読むのが好きなのと、元々研究者をしていたこともあって、現在のサッカー界がどういう位置づけにあるのかというマクロな考察は比較的得意です。

サッカーメディアには、優れた個性を持つライターが多いものの、ここに存在しているに止まり、総論(レビュー)するという方向性はあまり見られませんでした。

なので、サッカー界をマクロに眺望するした上で、良記事の位置づけをしていく「キュレーション」という仕事にも価値があると感じた次第です。要するにスキマ産業ですね。

というわけで今回は、ハリルホジッチ監督解任から1週間で、どういった論説が出てきたのかを見ていきたいと思います。

今回のテーマはこちらです。

・そもそもハリルホジッチ監督とは何だったのか

・ハリルホジッチ監督解任の是非を問う

・西野監督による新生日本代表を考える

15本の良質な記事を紹介しながら、上記のテーマを考えていきたいと思います。このキュレーション記事だけではなく、リンク先まで参照すれば、今回の問題について深い知識が得られると思います。

この記事は100円の有料記事ですが、全体の5分の1程度(記事3本)については無料公開しています。無料部分だけでも是非ご覧下さい。

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ハリルホジッチの解任を叫ぶ前に、最低でも考えてほしい3つの事柄結城康平  

20代の戦術分析家、結城康平さんの記事です。注目するべき事は、この記事が昨年12月に書かれていることです。欧州サッカーを中心に紹介している先進的なサッカー雑誌『footballista』において、欧州で使われる最新のサッカー概念などを紹介しています。

競技としてのサッカーの最先端を解明しようという姿勢を持った書き手とご理解下さい。

さておき、ハリルホジッチが昨年末に解任されるべきだったという論調はあります。その意見と対照しつつ、結城さんの主張を見ていきましょう。

難敵オーストラリアを抑え、アジア最終予選を1位で通過しロシアW杯への出場権を得たハリルホジッチ。にも関わらず、メディアには厳しい声があふれている。アルジェリア代表時代も厳しい批判に晒されながら、ブラジルW杯ではドイツを追い詰めた。そんな指揮官を解任したいなら、最低でも以下の事柄を踏まえてほしい。

つまり、結城さんは解任否定派でした。その論拠となる項目を紹介していきます。

1.「世代交代」の難しさ(抜粋) 
世代交代の移行期という、最も難しい時期をアギーレから突如受け継ぐことになったハリルホジッチだが、ポジションを問わず様々な選手を試し続けている。(略)今のところハリルホジッチは若い選手を着実にチームへ組み込んでいる。経験豊富な選手たちはW杯本番でも間違いなく必要だが、彼らへの依存は徐々に薄くなっている。

ブラジルどころか8年前の南アフリカから同じメンバーが名を連ねる日本代表。本来は、ブラジルで負けたときに新陳代謝するべきだったのがそれが出来ずに苦しんでいるというのが現状ですが、その点について、ハリルホジッチは若手を着実に採用し続けていたという指摘です。

■2.短期決戦で結果を残す緻密な「守備戦術の使い分け」(抜粋)
親善試合では積極的に前からのプレスを試しているが、必要な状況ではリトリートすることによって相手の狙いを外してくるはずだ。出来る限り切り札になり得るカードを隠しておこうとする指揮官のタイプを考慮すれば、親善試合のパフォーマンスを過度に評価に直結させることは避けるべきだろう。

この項目は若干専門的なので詳しい人向けではありますが、大まかに言うと、親善試合では1種類の守備戦術しか使っていないが、本番では複数の戦術を柔軟に使い分けることが期待できたということです。

この指摘が正しければ、「ハリルホジッチの戦術では勝てない」の根拠が薄れることになります。

また同時に、ハリルホジッチは切り札となる手段について、サッカー協会にも伝えていなかった可能性も指摘しておく必要があります。切り札があるとは想像も付かなかったため、解任されてしまった可能性です。解任理由はコミュニケーション不足ですからね。

■3.育成に起因する偏り(抜粋)「ポゼッションサッカー」という幻想に踊らされ続けてきた日本代表に、欧州基準の守備を知る監督が就任したことはポジティブな事実だが、染み付いてしまったFCバルセロナのようなスタイルへの憧れが簡単に消えることはないだろう。「小さな身体でも、パスサッカーなら戦える」というフィジカル面でのコンプレックスと絡まりあっていることも、問題の根を深くする原因だ。

抜粋部分は趣旨ではないのですが、日本人は身体が小さいというコンプレックスがあり、バルサのパスサッカーへの憧れを持っているという指摘は正鵠を得ていると思います。

この項目も専門的なので、ぼくも100%は理解できません。ただ、サッカーの最先端ではどのくらい細やかに物事を見ようとしているかというのはよくわかるはずです。ご覧頂ければ、スポーツ新聞の「攻撃的じゃない」とか「本田がいないと駄目」みたいな意見がいかに大ざっぱであるかが瞭然となるはずです。

また、「発狂記事」の前提となった「サッカーはチェスのような知的な競技」と書いたのに対して、サッカーはチェスではないという主張も少数ながらあったので、「責任転嫁」しようと思います。

サッカーを革新したチェスの概念 ポジショナルプレーという配置論 結城康平

抽象的だが、チェスのような配置ゲームとしてサッカーを考える概念「ポジショナルプレー」について解説している。



将棋でサッカーが面白くなる本—3日で理解できる将棋戦法入門

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ハリルホジッチ前監督来日会見で爆弾発言か 協会が恐れる負のイメージ定着 書き人知らず

少し専門的な話から始まったので、次は正真正銘の低劣記事を紹介します。

大手広告代理店関係者は「協会もスポンサーも何もやましいことはないが、ハリルホジッチさんがあることないこと、むちゃくちゃなことを言い出さないか心配。解任された腹いせに、日本サッカー界に傷がつくことを言ってやろう…となってもおかしくないからね」と不安をのぞかせる。

その関係者を連れてこいって話ですよ……。こういう記事がどうして出てくるのかのメカニズムはわかりませんが、最初に紹介した結城さんの記事と比べると、まったく性質が違うことがわかることでしょう。

ハリルホジッチ監督は、不器用なところはあれど、サッカーを愛し、真摯に向き合っている一人の老賢者であったと考えているぼくとしては、こういう野蛮な人格批判は許せません。

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低劣記事で終わるのもよろしくないので、もう一つだけ。

ハリル解任に元日本代表監督のザックも驚き「何かが起こったに違いない」

「私は日本が監督を解任したことに驚かざるを得ない。W杯の2か月前に監督が変わることは普通じゃない。何かが起こったに違いない。日本では決してこのような本能的な決断はしないから。だから、しばらく考えてとの解任だったと思う」とJFAの想いをくみ取った。

ハリルホジッチ監督にはこういう配慮した発言が上手ではありませんが、ザッケローニ監督は日本的情緒を理解している方でした。日本サッカー協会については痛いほど内情を知っているはずなのに、サッカー協会をかばうところは流石ですね。

このあたりについては、書籍『通訳日記 ザックジャパン1397日の記録』(矢野大輔著 文春文庫)に詳しく書いてあります。

W杯敗退後、DF長友佑都が「勝たせてあげられなかった。そこが本当に悔しくて悔しくて」と涙ながらにザッケローニ氏への想いを語り

ブラジルワールドカップ第三戦の相手はコロンビア。決戦の地はクイアバです。ぼくは前の試合があったナタールから、飛行機で13時間くらいかけてようやく辿り着きました。何もない街でした。

岡崎の得点で1−0で敗れた後、為す術もなく4失点する日本を見つめながら、必死に声を出しました。しかし、圧倒的な数のコロンビアサポーターの前でぼくの声はかき消されました。

悪夢のように響き渡る歌声
「ale ale ale ola che mi colombia a ganar(俺たちのコロンビアが勝つぞ)」

スタジアムを包むコロンビアの歌声。為す術もない日本人サポーター。そして、圧倒的な強さを誇るコロンビア。泣きながら必死に応援していたので細かいことは覚えていませんが、選手は最後まで頑張ってくれたと思っています。

ぼくのすぐ目の前で、ハメス・ロドリゲスが華麗なステップを踏んで、華麗なループシュートを撃つ。ボールがゴールに吸い込まれていく。あのシーンは一生忘れらないことでしょう。

試合が終わった後、長友佑都は、座り込み立ち上がれなくなりました。長友が……。立てない……。長友……。あんなに頑張ったのに、あれだけ一生懸命走ったのに……。

いつも明るく、バイタリティに溢れている長友が……。

あの長友が……。前進のエネルギーを失ってピッチに座り込むのを見て、涙が止まらなくなりました。

ブラジルでの日本は、相手チームに合わせて柔軟に作戦を変えることが出来ませんでした。初戦の緊張があったコートジボワール戦はともかく、2戦目のギリシャ戦で特に顕著に感じました。中央を固める相手に対して、ロングクロスを上げ続ける日本。それでは駄目だと危険を覚悟でゴール前まで迫る内田篤人。

それでも最後まで攻撃は跳ね返され続け、引き分け。わずかな望みにかけてコロンビア戦に望みました。しかし……。

いつまでも立ちあがれなくなった長友に、インテルのチームメイトであったグアリンが近寄って健闘をたたえました。ぼくの記憶では日本の選手は誰も近寄ってきませんでした。もしかしたら、チームは既に壊れていたのかもしれません。

あの時の敗戦を受けて、日本が勝つにはどうしたらいいのか、考え続け、議論してきました。その一つの果実が、ワールドカップは相手の戦術を壊せるような経験豊富な戦術家が率いるべきというものでした。

順当に行けば敗退すると言われているロシアW杯の予選リーグですが、ハリルホジッチ監督が率いていたらどんな戦いを見せてくれるのだろうか。もしかしたら負けたかもしれませんが、ブラジルでの敗戦への一つの回答にはなります。

あの悔しさを晴らし、ワールドカップで勝って、最高の笑顔になろう!みんな、そういう気持ちだろうと思っていたので、今回の解任劇には怒り、呆れ、悲しみ、絶望し、混沌とした発狂へと陥ったわけです。

ブラジルの悔しさを晴らせる可能性が少しでもあるならとロシアワールドカップの現地参戦を決めたサポーター仲間もみんな気持ちが萎えています。オールジャパンとは何なのか。俺たちの思いはなんだったんだ。

試合前のスタジアムの雑感ですが、現地観戦派にとっては思うことが多い映像です。

ブラジルW杯については、電子書籍『Jornada』にまとめるつもりなのですが、未完のままロシアW杯に突入してしまいそうです……。幸か不幸か、ロシアで日本サッカーの歴史は進展しない可能性が高いので、終わった後でもいいのかもしれませんね。

現地観戦派にしか伝わらないことを書いてしまいましたが、キュレーションを続けましょう。

もう日本サッカー協会には何も期待できません。サッカーの知識をつけ、世界へと羽ばたくための努力は、我々自身がやっていく必要があります。

ここからは100円の有料記事です。キュレーションした記事はあと12本です。ここまで約6000字、全体で約14000字です。

是非是非、ご購読下さい。

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タクシードライバー、文筆家、会社経営者。 東京23区を中心にタクシー営業中(休業中)。愛する東京が職場です。 旅とサッカーのウェブ雑誌OWL magazine代表。サポーターを主役にした紀行文を書き連ねています。 株式会社西葛西出版代表取締役社長。本を作ってます。