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老人と喧嘩:主義主張ではなく政策を

"He has no plan" "He don't know"" He is totally irresponsible"(彼には何のプランもない。彼は何も知らないんだ。彼は全く無責任だ)

"Well so far we have no problems whatsoever" "I've done one of the great great things in history"(今のところ何であろうと我々に何の問題もない。歴史上我々はすごいすごいことをしてきた)*訳 Hatoka Nezumi

米大統領討論会を聞いた。トランプさんは声が良く通って、早口だからか、 討論というより老人の喧嘩にしか聞こえなかった。モデレーターのウォレスさんだけが、「政策」について必死に引き出そうとしていた。困って(プチ切れして)いるのが良くわかっていた。

老人の喧嘩が大々的に放映されている。これが政治なんだ、と思うと国とか関係なく、アメリカの若者も大変だな、と思う。だからこそ、主義主張に走りたくなる人達と「選挙」は相性が良いのだな、とも感じた。

少なくとも、私は見ていてロジカルな議論を見たとは微塵も感じなかった。すごく精神的に心地悪い思いをした。

私たちが本当に必要なのは主義なのか政策なのか

Hillary Clinton(ヒラリークリントン)とか、1994年のCrime Billに関連した、Super predetor発言。2016年、2017年のトランプ大統領の納税額とか。しまいには、「This guy is liar」(この男は嘘つき)とか。

立候補イメージ潰しに必死なのは、良く分かるが、困っている一人一人に必要なのは、主義でも主張でもなくて、具体的で、中長期的に有効な「政策」ではないか。

これはアメリカだけではなくて、日本もそうだと思う。「悪夢のような〇〇政権」とか、「汚職だらけの〇〇党」とか。確かに税金をたんまり使って、自分の心棒する「主義・主張」と違うことをやられると「イラっ」と来るかもしれない。右・左に関わらず。

だが、日本でいえば雇用の問題や、少子高齢化、過疎化の問題に、「右も左」もあるのだろうか。

日本・米国問わず、「右」が言ったことを「左」が叩く、のは見たことがある。時には、何故か、「左」が言ったから(「右」が言ったから)、この政策はダメだ、という意見さえある。

2020年現在、もうメディアも情報公開もここまで多角化している。何より、交通機関が発達し、辛うじて「地方を支えるために」に機能していた、ムラ社会やコミュニティも過疎化でどんどん少なくなっている。

少数精鋭で、XX党の○○さんと○○さんが、主義・主張をベースに、「全国民」の政策を作っていくことはもう非現実的だと思う。

例えば;

〇〇県出身、東京に出稼ぎに出て、派遣社員、年収200万、独身独り暮らし、家賃6万円を払うのにも困っているAさんと、東京生まれ・東京育ちで年収800万、家族四人を養い、家のローンを月13万払い続けているBさん。

二人とも「日本国民」で、「東京都民」で、「同い年」で、「同じ性別」と仮定する。経済状況も、必要な「公的サービス」も、「政策」も明らかに異なるだろう。この二人に、「悪夢のようなXX政権」とか、「汚職ばかりの◇◇党」と言われても、乗ってこないかもしれない。

だが、「明日から年収300万以下の人の所得税をなしにして、年収700万の人の所得税を倍にします」と、世間的に人気の高い△△党が言ったら、Aさんはきっとこの△△党に選挙で投票し、Bさんは、絶対投票しないだろう。

だが、事実、Aさんは所得の少なさに苦しんでいて、Bさんも高い所得税に苦しんでいることに変わりはない。上記の△△党の意見一つだけが政策になることが解なのか?こうした、主義主張に基づいた政党政治は、多様な、意味のある政策を考える上で、むしろ、今後益々多様になっていく社会の分断しか招かない気がする。

私は、主義主張や党を超えて、多様な事情を持つ人々が、中長期的に「日本」という国を構成していける、「実践的な政策」を現実的に考えてほしいと思う。

AIという手段:40代低所得独身男性への公的補助?

数年前にNHKで、AIに政策を考えさせるという番組をやっていた。関係者の不祥事でその後、見なくなってしまったが、非常に興味深かった。

中でも、少子化対策として、「40代の独身男性」に公的扶助を行う、というものがあった。

傍から見ると、「40代」、「独身」、「男性」というこの三つのキーワードだけで、妊娠や結婚や出産というイメージから一番遠いだろう。だが、AIはこの解を導き出していた。

この40代は戦後ベビーブーマー・団塊の世代の子供たちで、人口ピラミッドとしても多い世代だ。そして、就職氷河期を経験していて、非正規という分野のパイオニアの世代でもあると思う。

私が働いた大企業と呼ばれる会社でも、この世代の人達のパイは驚く程少なかった。そして、この世代の「転職組」はとても多かった印象だ。少し前の「古き良き高度成長を謳歌している日本」では、40代男性は、きっと「結婚」していて、「家を買い」、「子供を2、3人」養って、「社会人」として働いているのが「普通」なのだろう。

総務省統計局の労働力統計人口推計と、厚生労働省の国民生活基礎調査を見てみる。人口としてこの40代男性は、全日本人男性人口の15%を占める。30代が11.6%、20代が10.1%、10代が9.4%であることを鑑みれば、人口の多い世代と言える。ちなみに、40代後半世代は、全男性人口の中で最も多い(4,906千人)。

厚労省のデータからこの年代(40代)「男性の非正規」の割合だけ抜粋して、人口推計に当てはめる。更に労働力推計のこの年代の完全失業者の人数を足し合わせると、160万人(*1)となり、この年代の18%(*2)程度が非正規か完全失業者ということが言える。

160万人はという数字は、20代の男性人口の26.5%、10代男性人口の28.6%に該当する。仮に、この160万人を「自己責任」扱いして、「公助ではなく自助」を迫り放っておいた場合どうなるか。

今20代、10代の若者が、今後この160万人の「貧困」のために、高齢者の介護費用と併せて、馬鹿高い「税金」を背負うことになる。「お祖父ちゃんたちの主義主張」のために、「子供や孫の将来を犠牲」にしてもよいのか、と思ってしまう。

もうここに、右も左も、行き当たりばったりも、主義も主張もない。必要なのは、党利党略や右・左、主義主張を離れた、客観的で、効用のある現実的な政策だと思う。

そういう意味で、あのAIが出した「40代の低所得男性に向けた補助」というのは、面白いだけではなく、実際のデータを鑑みて「なるほど」と思わせるものがあった。

そして、このデータも「厚生労働省」、「総務省」とで縦割りに分けずに、AIで一括管理すれば、もっと見やすい、政策に生かせる形(見えやすいデータ)になるのではないか、とも思う。

主義主張と政策を今後明確に分けてほしいと思う。

「スピーディ」にと言っても、人があれだけ大勢いればどんなに頑張ってもスピーディは無理だと思う。それは日本人だから、アメリカ人だから関係ない。選挙は勝敗だ。だが、人の生活に関わる政策が勝敗に左右されたり、遅れてはならないと思う。

特に、日本について、少子高齢化・労働力不足の根本的で具体的な対策を私は、右・左問わず聞いたことが一度もない。

感情をぶつけることよりも、国民全員の利害が関係ないAIに政策の検証や提案をしていってほしいと強く思う。

(*1)労働力調査の就業者総数(男性)に、人口推計の各世代(男性・日本人)比率を掛け、厚労省の非正規比率を掛け合わせて、各世代の「非正規人数」を推計。この人数に労働力統計の完全失業率から推計した完全失業者数を足し合わせた数字。なお、労働力統計の完全失業率が世代ごとに公表されていなかったため、35歳~44歳、45歳~54歳の失業率を用いて各々の世代の完全失業者(男)を算出。160万人は、この二つのレンジ世代の中央値の概数。

(*2)上記の非正規と完全失業者数を足し合わせた人数を、各々の世代の人口で割って算出した比率の中央値。



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