見出し画像

憧れの友達と絵本を作ったはなし 【前編】

この度、前回の記事でも触れた神田瑞季さんとのコラボ作品
絵本「すてきな おとどけもの」が完成しました!
予約注文してくださったみなさま、本当にありがとうございます。
11月1日からわたしの通販でも取り扱いを開始したのでぜひご覧ください。
https://yorunotobari.stores.jp/items/617e87893303785a57c4a6bf

絵本発売を記念して、今回の絵本の制作についてのエッセイを書いていこうと思います。
色んな話をしたいので、前編・中編・後編で配信していこうと思います。
ぜひお付き合いいただけると幸いです。



 絵本。おそらく、人が生まれて一番さいしょに読む本。
 テンポよくあらわれる色とりどりの絵に、声に出したくなるような小気味の良い言葉で彩られた物語。
 それは時に、明るく、時に悲しく、そしてやさしく、包み込んでくれるような存在だ。
 幼い頃、わたしの母は毎日かかさず寝る前に絵本の読み聞かせをしてくれた。
 母の声を通して語られる物語はいつだってわたしにワクワクを運んでくれる。
 うとうとと微睡みながら聞く、誰かの物語はわたしにとって1日の中で1番の楽しみだった。
 わたしは、絵本が大好きな子どもだった。


「あなたと絵本が作れたらいいなあ」

 3月の終わり頃、一通のダイレクトメッセージが届いた。
 相手は、大学時代の友人である神田瑞季さん。彼女は画家であり、絵本作家であった。
 同じ芸術大学に通い、同じ講義を受け、共に笑い、共に悩み、青春時代を謳歌した仲だ。
 在学中はフランスに旅をしたり、わたしが勝手に救われたり、卒業後も渋谷駅で約束をするような、そんな大切な友達。
 彼女の纏う空気はいつも優しく、美しい。彼女はわたしにとって憧れの存在なのだ。

 友達であると同時に、作家仲間でもあるわたしたちは、これまでお互いの活動を応援こそすれ、共同で制作をすることは一度もなかった。
 それは、わたしと彼女の作品の表現方法が違っていたからかもしれないし、またはお互いの背負うものが違っていたからかもしれないし、友達だからこそ避けていたのかもしれないし、あるいはその全てかもしれない。

 わたしと彼女は、お互いの作品に己が干渉することを躊躇していたのだ。
 卒業後もそれぞれの活動を見守ることで、お互いを励まし合っていたのかもしれない。
 だからこそ、彼女からの誘いはとても大きな覚悟のようなものを感じたし、同時に作家としてのわたしを認めてくれたようでとても嬉しかった。

 彼女はわたしにとって憧れの存在なのだ。


 絵本とは、幼児向けの本である。
 しかし幼児向けとはいえ、絵本を作るにあたって求められる要素は意外にも複雑で、レベルが高い。
 まずは絵本の顔とも言える絵。絵は全ページに入っているのが好ましいので、相当描ける人じゃないと難しい。
 そして文章。文章は物語なのか、はたまた詩なのか。物語であれば、ストーリーを限られたページ内にまとめる構成力。
 そして、1ページ1ページのレイアウト、デザイン力。
 これら全てを要するのが、絵本なのだ。
 絵本作家である彼女の言葉を借りると、「絵本は総合芸術」。絵本はその言葉にふさわしい代物なのだ。

 彼女は絵を、わたしは文章(と、DTP)を担当することになった。

 流れとしては、まずはじめにどんな絵本にするかを話し合い、テーマや絵本の方向性を決める。
 その後、ストーリーの大枠を決め、ページ割りを頭に入れつつ細かく詰めていき、文章を完成させる。
 原稿が完成した後に、絵の制作に取り掛かる。絵はパネルに一枚一枚絵の具で描いていく。キャラクターデザインやレイアウトをあらかじめ話し合いながら決めておく。
 都度チェックをしつつ、絵が揃うと、それをすべてPCに取り込み、色味など細かい調整を行う。
 そこまで行けば、あとは誌面のデザインだ。文字の大きさやフォント、余白などの細かい調整を行い、印刷所に入稿する。

 11月に販売することを目標としたので、データ上の完成は実質10月が締め切りである。この工程を4月から数えて、約6ヶ月で行うこととなった。
 世間一般的に見てこの期間が短いのか長いのかはわからないが、これまでのわたしの作品と比べるといささか長めの期間のように感じた。(こうして、11月になったいまのわたしから考えると、決して長い期間ではなかったように思うが)

 11月の自分は一体何をしているのだろう。何を見て、何を思って生きているのだろう。4月のわたしには皆目見当もつかなかった。
 けれど確かに、その胸は人一倍強く高鳴っていたのを覚えている。




 4月。彼女ととあるカフェで落ち合った。
 手にはそれぞれノートとボールペン。

 わたしはいつになく緊張していた。

 記念すべき第一回目の打ち合わせだった。


(中編に続く)

この記事が参加している募集

振り返りnote

とても励みになります。たくさんたくさん文章を書き続けます。