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私の聖地、鎌倉①

一人で訪れたのは、おそらく九年ぶりだと思う。
本当にたまたま、色んな条件が重なって、一人で自由に動ける時間が出来た。
そうなったら行きたい場所はひとつ。
私の聖地、鎌倉である。
日帰りで行くには少し遠いけれど、どうしても行きたい。

行こうと思えば今日行ける…

そう気付いたら、もう行くしかなかった。私は遠距離恋愛中の恋人に会うような気持ちで電車に乗った。
電車の窓から見える景色は、新緑の木々が眩しかった。

思えば、初めて鎌倉を訪れたのもこの時期だったと思う。
十二年ほど前、新卒で入った会社で関東某所に配属された私は、その土地にあまり馴染めずにいた。
そして、仕事を始めて一年程経ったある日、ふと思った。

「関東の観光名所でも行ってみるか…」

せっかく観光に行くなら晴れている場所がいい。そう思って天気予報をチェックした。
神奈川の天気、晴れ。
神奈川の観光名所…鎌倉…、そういえば行ったことがない。行ってみるか!
そんな適当な決め方で、春真っ盛りのこの時期に、初めて鎌倉を訪れたのだった。

鎌倉との出会いは素晴らしいものだった。
街中に溢れる緑、四季折々の花々、遠くに聞こえるトンビの鳴き声、少し歩けばぶわっとそこに広がる海。
私の大好きなものしかなかった。
鎌倉に惹かれたのは、地元と似た空気を感じたから、というのもあると思う。
でも鎌倉はそれだけじゃない。
たくさんの寺社仏閣、お洒落な雑貨屋、美味しい料理が食べられるお店…様々な文化も楽しめる場所だった。

それ以来、私は月一で鎌倉に通うようになった。
私は個人的にこの時期を、大鎌倉狂時代と呼んでいる。
それこそ本当に狂ったように、鎌倉に行くことだけを励みに生きていた。
仕事で疲れても、嫌なことがあっても、また鎌倉に行けると思うと頑張ることが出来た。
愛する友人たちにも、鎌倉がいかに素晴らしい場所かを鬱陶しい程に語った。
それで「私も鎌倉行きたい!案内して!」と言われれば喜んで一緒に鎌倉に行き、その友人ごとの好みに合いそうなおすすめの場所を案内をした。

しかし…
子どもを妊娠したことで、そんな日々は私の生活から遠ざかった。片道二時間、往復四時間の距離は、子育て中の母にとっては海外旅行並みに遠い場所に感じられた。

夫はそんな私の寂しさを感じ取り、二度ほど家族での鎌倉旅行を計画してくれた。
家族で来る鎌倉も、それはそれで悪くなかった。

でも。
やはり一人で来る鎌倉にはかなわない。
私は一人で、素敵な小道で立ち止まり、美味しいごはんをしみじみ味わい、お洒落な雑貨に足を止めて、愛する鎌倉の空気を思い切り吸い込むのが好きなのだ。

でもきっと、子育て中は無理だろう…
一人で鎌倉に来られるのは、子どもがある程度大きくなってからだろう…

そう諦めていた。

しかし、時は急に訪れた。
それが今日である。(壮大な前置きを読んでくださっている方、本当にありがとう)

久しぶりの、電車で訪れる鎌倉。
横浜、戸塚、大船…
鎌倉が近づいて来る。興奮が止まらない。
北鎌倉で突然もさもさし出す車窓からの景色。迫り来る、木々の緑。北鎌倉でも降りたいが、今日はそんな時間はない。とても限られた時間の中で、一秒も無駄にすることなく鎌倉を味わいたい。

無念だけれども、北鎌倉は見送ることにした。

そして…
ついに!!!!!
鎌倉駅、到着である!!!!!!!!!!

思わず小声で「久しぶり…!!!!!!!」と呟いていた。
小声だけれども、気分的にはびっくりマーク連打のテンションだった。
嬉しい嬉しい嬉しい。嬉しい嬉しい嬉しい!!!!!!鎌倉に来られた!!!!!!しかも一人で!!!!!!なんて日だ!!!!!!!!!!!!!!

しかし、駅のホームだけで浮かれてばかりも居られない。
私はもっとしみじみ鎌倉駅を味わいたい気持ちを抑えて、鎌倉駅西口を出た。
購入したいのは、のりおりくんである。

江ノ電の乗り放題チケット 大人一人800円

券売機でそそくさと購入。
買った後にふと、あれ、もしかしたら時間的に乗り放題を買った意味がなくなる可能性もあるのでは…?と思ったけれど、まあそれならそれで構わない。元を取れなかった分は江ノ電への寄付…と思えば少なすぎるレベルである。
そんなことを考えていたら、藤沢行きの電車が発車するアナウンスが流れている。
「これを逃したらまた次の電車を待たないといけない!」
気付いたら、日常生活ではまずしないダッシュをしていた。(駆け込み乗車は危険です、本当にすみませんでした…)

そして、向かうは七里ヶ浜。

江ノ電の中は程々の人だった。
これが紫陽花の季節などになると、電車内はむせかえる程の鮨詰め状態になる。
だからこそ、特別「今!この花が見頃!」というのがない、鎌倉全体が空いているこの新緑の時期が、個人的には一番好きな時期である。ガラガラ空き空きの鎌倉が好きなのだ。

稲村ヶ崎駅を出て、電車は七里ヶ浜駅を目指す。
そのタイミングで、江ノ電から海が見える。あまり天気は良くないけれど、もうすぐ海が見える…!と思うとどうしてもわくわくしてしまう。

そして、

江ノ電車内より

見えたーーーーーー!!!!!!!
海ーーーーーーー!!!!!!!!
江ノ島ーーーーーーー!!!!!!!

叫んでいいものなら叫びたかった。
でもさすがに我慢した。
江ノ島って、なんであんなに素敵な形をしてるんだろう。
名前もなんかいい。
江ノ島。最高じゃん。

そうこう考えているうちに七里ヶ浜に着いた。

うほーーーー!!!!!!!!!
海ーーーーーーー!!!!!!!!!

とはしゃいでいたのも束の間。
雨がパラパラと降って来た。
やばい。鎌倉が私との再会に嬉し涙を流している(この考え方自体がイカれてる)。
海のそばを歩く。
髪をバサつかせる潮風。最高。

踏切を渡ろうとしたら、カンカンカンと警報音が鳴り始めた。
今日は「急いでるのに…」などとは一ミリも思わない。
江ノ電来るじゃん!!写真撮れるじゃん!!!ラッキーーーー!!!!!!!

七里ヶ浜周辺を走る江ノ電

この時期だけ
「🌸鎌倉🌸」
と表示される江ノ電が撮れた。
最高すぎる。何このタイミング。
全てがポジティブに変換されていく。

パラつく雨など全く気にせず、スキップしそうな気分で歩いた。

鎌倉!!!!!一人で鎌倉にいる!!!!!
うおおおおおおおお!!!!!!!!

いつもなら「うわ…結構急だな…しんど…」と思いそうな坂も、駆け上がる勢いで登った。この景色も大好きな景色のひとつである。

鎌倉プリンス前

坂をおりたら、そこは海。(今登って来たんだけど)
はぁ。なんて素敵な場所なんだろう。

雨が少し強くなって来た。
鎌倉よ、そんなに私に会えて嬉しいの?そんなに泣かなくて大丈夫よ。←

そして最初の目的地に辿り着いた。

「さらい」 七里ヶ浜

坂をどんどん登った先にある「さらい」。
何を食べても最高に美味しい、和食のお店である。
私はここのばらちらしがどうしても食べたかった。

久しぶりの入店。
相変わらず店内がピカピカに掃除されていて、これ以上ない清潔感である。
一人なので、カウンター席に座らせて頂いた。もう頼むものはばらちらし一択なので早速注文…と思ったけれど、本日のおすすめの「小アジの唐揚げ」が気になったので、一緒に頼むことにした。

小アジの唐揚げ

先に小アジの唐揚げが到着。
早速いただく。
何これ…何これ!!!!!!!!
美味しい…美味しすぎる!!!!!!!
サクッと揚がった小アジは、骨までバリバリと軽快に食べられる。塩加減も絶妙で、噛めば噛むほど旨みがすごい。

「めちゃくちゃ美味しいです…!!!!!」とお店の方にお伝えしたところ、小アジは一年の中でも食べられる時期が本当に限られていて、本当に今の時期だけ愉しめる貴重なものなのだとか。
本当に本当に美味しかった。

そして念願のばらちらし。

ばらちらし

海鮮のーーーーーー!!!!!
宝石箱やーーーーーー!!!!!!
(使い古された表現で失礼いたします)

これがね。
本当に美味しいんですよ。
もう味はついててね。
そのまますくってお口に運べばいいだけのお仕事。簡単でしょう…?(誰)

私は海育ちのわりにそこまで魚に詳しくなく、この白身魚が鯛だったのか…?という部分は少し自信がないのだけれど、とにかく美味しい。
まぐろは赤身と中トロかな。
あといくら。そして食感のポイントになるきゅうり。
どこをすくっても必ず美味しい。
いろんな食感、いろんな味わいが愉しめて、程よい酸味の酢飯と絶妙に合う。

やっぱりここのばらちらしが、この世にあるちらし寿司の中で一番好きだわ…

と毎回思う。
本当に美味しいので、鎌倉に遊びに行った際はぜひ食べてみて欲しい。
七里ヶ浜の駅からまあまあ歩くけれど、歩くだけの価値はある。
このお店は出来る限りずっと続いて欲しい。
また絶対に行く。

…とここまで夢中で書いて、もうそろそろ最寄駅に着く時間を迎えてしまった。
特急に乗ってから1時間20分、シャッシャッ!!!と指を動かして無心で書いていた。

「私の聖地、鎌倉②」が書けるかどうかはわからないけれど、ここまで、このような乱文を読んでくださった方本当にありがとうございます。

続きも書きたいけど、今日はとりあえずここまで。

でも!!久々の鎌倉、本当に本当に最高の時間だった。
ザッとお話すると、昼食の後はまた江ノ電に乗り、江ノ電グッズを物色した後、一番好きなお寺で鎌倉の空気を吸い込んで、大好きなお店でジャムを買い、愛する鳩サブレーをお土産に購入して、帰路に着きました。

とにかく今言いたいのは、鎌倉ありがとう!!!!!!!!!!!!!!!

続く…かも?

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