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おじさん交換日記 グルメ風雲録編 その8

【オトウバシ・タツキ】
名古屋のお好み焼きは半分に折って銀紙で包むって知ってました?


自分にとってのソウルフードって何だろうと、改めて考えました。

鉄板ナポリタンだけじゃなくて、スガキヤラーメンも味噌煮込みうどんも、そう。それは間違いない。

だけど、僕にとっての原点。子どもの頃から日常的に食べていたもの。
それって、お好み焼なんじゃないか、と思い至ったんです。

お好み焼って、関西、広島その他色々流儀があると思うんだけど、僕のはそういう感じじゃなくて(分類すれば関西ですけど)。

子どもの頃、近所にあった個人経営のスーパーマーケットの入り口に併設されていた店で売られていた、お好み焼です。

平らで丸いのを半分に折ったものが、銀紙にくるまれているやつ。

一緒に売っていたみたらし団子は、セロハンと緑色の薄い紙に包んであったけど、お好み焼きは銀紙。
それを家に帰る途中の広場のベンチとかで食べるのがイカしていたんです。

おいしいかどうか、と言われると、まあ、おいしい。
でも、味だけで言ったら、中学生くらいの時にできた「るんるん」の醤油味のたこ焼き(明石焼きじゃないんです!)の方に間違いなく軍配があがる。

るんるんは今も健在。これを書いていたら食べたくなって行ってみましたが、美味しかったです。ちなみに緑色の包み紙はうぐいす紙と言うそう

なのに、あの頃食べてたもの、どれがいちばん食べたい? と言われたら小さい時からあった、スーパーの「お好み焼き」なんだよね。
お店はもうとっくになくなっているから、叶わぬ夢ですけれど。

そういえば、知らなかったんだけど、二つ折りにして銀紙(と薄紙)に包むのって、名古屋独自の文化なんですってね。
テイクアウトして、食べ歩きできるように考えられたって、新聞記事がありました。

人生における大事なことの半分くらいを教えてくれた『じゃりン子チエ』でも、お好み焼き屋の百合根さんは、テイクアウトの時には半分に折ったのを渡していたように思うけど、銀紙に包んでいなかったかもな。

そんなことを思い出しました。

そうそう、この前、稲永っていう港の方にある街に遊びにいったんです。
昭和の雰囲気があちこちに残った街。

歩いていたら、いい感じのお好み焼き屋があって。

猛烈に懐かしくなって、買ったんです。

愛想のいいお母さんが渡してくれたのは、由緒正しく半分折りの銀紙包み。

そこで食べてもよかったんだけど、下之一色っていう街まで足を伸ばすことにしました。

ここにはかつて魚市場があったんです。

何年か前に行った時は、ぎりぎり稼働中だったんだけど、すぐに廃止になっていたので、どうなっているのか確かめてみたかったんです。

まだ、ありました。

中には入れなくなっているけど、外からだけでも全盛期の賑やかさはちゃんと想像できました。

下之一色魚市場の遺構。周りの街並みも風情があります

ひと通り見て回ってから、食べました。

川からの風に吹かれながら食べるお好み焼き。

小麦粉のもっさりに混じるキャベツや豚肉や紅生姜のはごたえが心地よく、さまざまな風味をソースがやさしく包み込む。

あの頃と同じでした。

スーパーに営業に来た名前も知らない演歌歌手からサインをもらったこととか、小遣いの残りで大判焼きを買うかみたらし団子を買うか悩みすぎて気分が悪くなったこととか、思い出が蘇ってきました。

本当に美味しいお好み焼きを食べたいんだったら、鉄板で焼いてもらったのを食べるのが一番のはず。

でも、郷愁がそのまんま形になったような、このちょっとしなったお好み焼き。
これこそがオレのソウルフードなんだな。

そう、実感したんです。

今回は長くなっちゃいました。
お二人のソウルフードも、教えてください。

オトウバシ・タツキ

稲永の町中華で食べた台湾ラーメン。店の気取らない雰囲気も併せて最高でした

*登場したお店


この連載は、いい年こいたおじさんたちが、うまいもんについてやり取りするだけのおはなしです。
登場人物:
オトウバシ・タツキ 名古屋在住。おじさん。売れないもの書き。
ハラダ・アキヒロ 東京在住。おじさん。売れないカメラマン。
サカイ・ヒカリ(ゲスト参加) 関西在住。一児の母。元雑誌編集者。

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