プール(200文字SF)

これまで8人の恋人がいた。だけど、名前を聞いたのは今回が初めてだ。彼氏の名前はプールという。名前を聞いて良かったな、と思ったことはまだない。むしろ、名前なんか聞かなければ良かったと思うことの方が多い。名前がある彼氏は、これまでの8人とは別に分類せねばならず、著しく脳のリソースを食う。全ての思い出に「プールの」「プールと」という枕詞が必要になり、それが無限に増えていく。目眩がするほど時間が分岐されていく。

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