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2021/08/02 『古畑任三郎』登場の新聞記事

遅ればせながら、録画しておいた『古畑任三郎 傑作選』を見ている。ドラマを見ると、仕事柄、どうしても気になるのが新聞記事。登場人物の状況や出来事のあらましを端的に表現できるので、ドラマの演出では欠かせない小道具である。

視聴している最中、新聞記事が登場すると、一時停止をしてチェックしてしまう。一緒に見ている家人にとってはいい迷惑なのだが、やめられない。「う~ん、銘柄の名前はまたしても毎朝新聞か」「これは送り仮名が違っている」「誤植だな」などと突っ込みを入れるのが楽しい。重箱の隅をつつくような、悪趣味である。

上記の写真は、「忙しすぎる殺人者」(第3シリーズ2話)の再放送で登場した新聞。ゲスト出演者の真田広之演じるメディア・プランナーが、忙しそうにホテルで朝食をとりながら、新聞を広げている。見出しに躍る「岩田都議」とは、この回の被害者となる人物である。

いつも通り、チェックをしてみた。実際の新聞の作り方とは違う点を2つ見つけた。お分かりになるだろうか?

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ヒントは上の写真。こちらはホンモノの新聞記事だ。

①2段見出し「愛人は海外へ脱出」の前で、記事が終わっていない

記事の中にある2段の小見出しは、別の関連記事のもの。従って、前の記事が終了しないまま、小見出しにまたがってレイアウトされているのは、おかしい。「ハコ(箱)」といって四角形にレイアウトされているものならば、変則的に記事途中に見出しを置くのもアリだが、この場合は、段間にラインが引かれているので、通常のレイアウト。本職がやったら、怒られてしまう。

ホンモノを見てみると、同じ2段見出し「ベトナム   全方位外交変えない」の前で、きちんと一つの記事が完結している。

②記事中に「きょう」と書かれている

見にくいが、最上段左側に「きょうの釈明会見では」と書いている。見出しでは「きょう」と打つが、記事では必ず日付を書くのがルール。ホンモノでの新聞記事では「23日」となっている。

ちなみに、見出しとなるのは「きょう」「あした」までで、「あさって」や「きのう」はほぼない。「昨夕」などはあった気がするけれど。こうして考えてみると、新聞の関心の射程は、今日と明日なのだと思う。

気になったのは2点だけで、一見、ホンモノと遜色のない新聞記事。他の映像作品と比べても、「古畑」小道具スタッフのクオリティーは高い。「神は細部に宿る」ではないけれど、「新聞の紙も細部に宿る」。小道具一つにも気を配る作品は完成度も高くなる傾向がある。

ついでに言うと、「都議きょう釈明」という大きな見出しには、うっすら波紋(業界では「地紋(じもん)」という)が浮かび上がっている。この回が放送された1999年当時は一般的だったが、今はほとんど使わない。ベタ黒に白字が主流だ。新聞のレイアウトにも流行廃りがある。

新聞中毒があれこれと好きなことを書いてしまった。新聞は複雑怪奇なルールがあり、深い森のようだが、面白い。テレビドラマを見ながら、こんな楽しみ方もある。

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