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2021/05/09 親を捨ててもいいですか?

「母の日」に似つかわしくないタイトルではある。しかし、6日放送のNHK番組「クローズアップ現代+」で取り上げられていたテーマ「親を捨ててもいいですか? 虐待・束縛をこえて」が衝撃的だったので、書いておこうと思う。

過去に親から虐待や束縛を受けて育った40~50代が、高齢になった親との接触を避けたいと、介護や葬送の代行サービスを依頼するケースが増えてきているという。まず、その事実に衝撃を受けた。

番組には、3人の子ども世代が登場する。1人目は代行サービスを依頼した人。2人目は、長年距離を保っていたのに、親が要介護状態となり、葛藤を抱え、「親孝行すべきだ」という世間からの圧力を感じて実家に通う女性。漫画で発信していて、「車いすが玉座にみえる」との書き込みがリアルだった。3人目は、認知症の母親を介護するため仕事を辞めた男性。煩っているうつ病が悪化しているが、施設に入れた母親のフォローを続けている。「本当は親を捨てたい。ひどいこと言うけど、でも、ゴミだって、分別しないとダメじゃないですか」と吐露する。

人生相談を読んだり聞いたりするのが趣味の一つだが、だいたい毒親の介護で困っているという悩みに対しては、「逃げてー」「絶縁しちゃいなよ」との回答が寄せられる。

しかし、逃げ場がなく、キッパリと関係を断ちがたいのが、親子の宿世だと思う。「好々爺」という言葉があるが、そうなるケースはまれだ。大抵の高齢者は、より頑固になって、身体の不自由さから募るイライラをぶつけたがる。それでいて、依存心は強くなる。

娘にとっての母親は、特にやっかいだ。同姓だというだけで自己同一視されやすい。大多数の女性が「結婚退職→専業主婦」コースを強いられていた時代が変わり、選択の幅が広がって自由に生きる娘を誇らしく思うと同時に、妬ましく思う。相反する感情をぶつけてくる。異議を申し立てれば「子どもに気をつかう必要はない」とのたまう。過去のことを持ち出すと、「そんな昔のことは忘れた。今更蒸し返すな」。挙げ句の果て、「おまえはわがままだ」。

わがままなのは、一体どっちだろう? 娘が自分の思う通りにならないから、「わがままだ」と決めつけるではないのか。

「母親の介護は、当然、娘がやるもの」と、男きょうだいから押しつけられることも多いが、娘だって事情はいろいろ。仕方なく動いてみると、感謝はおろか「勝手に仕切っている」と非難される始末。

…以上のことは、半分ノンフィクション。見聞したことも盛り込んで書いてみた。

どんなに良好だと思われている親子でも、計り知れない内実を抱えていることもある。家族問題で難しいのは、たとえ親友であっても、なかなか打ち明けられないこと。世間体もあるし、だれにも言い出せなくて、一人で抱えてしまう。こういう番組が放送されることで、問題をオープンに話せる状況が少しずつ醸成されればいいと思う。

濃い線

*写真は、雨が降り出す寸前の雲。人の感情と同じで、ふつふつとわき出している。

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